出会い、それから...
その日、コンビニに行ったことがすべての始まりだった。
カチカチというクリック音が響く。
窓にはカーテンがかかっていて、時計がないと太陽が登っているのかもわからない。
そんな暗い部屋に1人の青年がパソコンに向かっている。
ぐぅぅぅぅぅぅ...
「今、何時だろう...お腹空いた」
青年の空腹が「このままでは餓死してしまうぞ」と訴えかけた時、外からサイレンの音が響き、今が午後6時だと言う事を知らせてくる。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ...
どうやら鳴き止むつもりはないようだ。
「仕方ない...」
今着ている服の上にパーカーを羽織り、キャップを深く被る。必要な分の金を持ってコンビニへ向かう。
この後、何が起きるかも知らずに
ーーーーー
人と人との間を縫うようにコンビニまで脚を進める。
できるだけ早歩きで、顔を見られないように。
昨日はラーメンだったし...今日は久しぶりに弁当にするか。あっ、洗剤も買っておかないと...
そう考えているうちに目的地に到着...ではなくその近くの路地に目がいった。
別に何があるわけでもないただの路地だ。
こんなところあったっけ?
前に来た時はなかった気が...
気のせいかと思いながら止まった脚を再び動かそうとする。
...が何か惹きつけられ、好奇心が僕の脚を路地へ向ける。
逆らう理由もないのでそのまま薄暗い路地へ進む。
薄暗い路地を抜けると人気の少ない道にでた。
ここは都会でもなければ田舎でもない。だが、こんなに寂しい道は初めてだ。
軽車両がぎりぎり通れそうな細い道にはコンクリートの隙間から草を生やし、もう誰も住んでいないような古い建物が並ぶ。
寂しい道を少しずつ進んでいく。
何故この時僕はこの道に来たのだろう。
何故引き返さなかったのだろう。
後悔するのは物事が終わってから。
数メートル先には自分とは正反対の真っ黒な髪をもつ小さな子
ーーーーー
路地を抜けると出会った小さな子。
ボロボロで汚れた服、裸足、ボサボサで顔が見えないくらい長い髪。
極めつけには傷だらけの両手脚。
きっと顔にも傷があるのだろう。
「...」
何故か言葉がでなかった。きっと驚愕しているのだろう。
僕が言葉を失っていると、あの子が何かキラリと光るものを手にしこちらへ向かってきた。
長年引き篭もって、まともに運動していなかった体は、咄嗟の判断に動くはずなく、あの子の体当たりをもろに受ける。
丁度僕の鳩尾あたりにあの子の頭があたり、僕はさらにダメージを受けた。
こんなことなら、腹筋でもしておけばよかった。
重力に身を任せ、尻餅をつく。その時にはあの子は僕から距離を開けていた。
立ち上がろうとすると腹部に痛みがはしる。
ピリピリする痛みに耐えながらあの子を見るとその手には大きな硝子の破片、先は鋭くとんがっていて血がついている。
自分の腹部を見ると左脇腹あたりから血が滲んでいる。
ドサッ
顔を上げるとさっきまで立っていた子が倒れていた。
ゆっくりと立ち上がり、警戒しながらも近づいていく、どうやら気絶しているらしい。
うつ伏せに倒れていてあの子の背中から血が滲んでいることがわかる。
「よい...しょっとっ」
男の子に自分の着ていたパーカーをかぶせ背おった。
びっくりするくらい軽く、細く、折れてしまいそうなくらいやせ細っていた
自分も腹部を怪我しているが、そのことを忘れるくらい動揺しているのか、はたまたこの子を助けなければと思ったのだろうか。
体は考えなくても行動を起こした。
この時、この男の子に出会わなかったら、平凡な日常が続いていたのだろう。
出会いは殺されかけたことから始まりました。