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灰色の町  作者: 緑茶
2/5

「ほら、この車だよ。乗って」


そう言って男は微笑む。

私は言われるがままに車に乗り込んだ。

ワインレッドのミニバン車。

ナンバーは品川。

このあたりじゃ滅多に見ないナンバーだ。

母はどうやってこの男と知り合ったのだろうか。


「シートベルト、締めてね」


彼にそう言われて、時間が迫っていることに気付く。

ああ、もうすぐこの町から出るんだ。


ここは、町だ。

「まち」は「街」じゃなくて「町」。

小さい町だから、人口なんて5万人もいない。

なのに、関わった人だって少ないのに、濃くて。


「出発するよー」


車が動き出す。

よくありがちな、車用の芳香剤。臭い。


「窓、開けていいですか」


「ああ、暑かった?エアコン入れようか」


「いえ、窓開けるだけでいいんです」


「そう」


窓を開けると、いつものあの匂い。

土の匂いがする。湿ってて、たまにかすめる花の香り。


「この辺り、本当に山だねえ」


見れば分かる。

それほど田舎だったのだ、この町は。


「車がないと、不便だろうに」


辺り一面が木だ。

緑、緑、緑。

そして土。茶色い。木の幹。


風が髪を掻き乱す。


「道悪いなぁ、ここらは」


ガタガタと揺れながら走る車。

窓の外から顔を出し、走ってきた道を見る。

ぼこぼこの地面。


「危ないよー」


「あ、ごめんなさい」


私は座りなおした。

車は止まらない。

でも景色は変わらない。


「いつまで山なんだろう」


男の言葉に頷くように、私は顔を伏せた。

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