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第8話 対決◆獣神フェンリル!

 獣神フェンリル、それが今回の敵らしい。

 無色透明な巨大な狼で、雷と風の魔法を使ってくる。

 透明な上に気配を隠すのが非常に巧妙で、こちらの攻撃を当てるのすら一苦労だったとのこと。


 それでも最初の頃は押していたのだが、防御の一番薄い所を突破されて、一瞬の隙にこちらの攻撃の要であるネイ母さんを失ってからは防戦一方となってしまった。

 その体は魔法を吸収するようで、ちょっとやそっとの魔法じゃ逆にエネルギーを与えるだけ。

 物理攻撃か、吸収がおいつかないほどの高威力の魔法のみがその狼を傷つけることができる。


 ティア母さんを中心として攻撃体制を仕切りなおしたのだが、ネイ母さんを失った動揺でうまく機能せず。

 一人、また一人と…

 ただひとつだけ朗報が。


「それじゃ、誰も死んでいねえのか?」

「はい。向こうはどうやら私達を封印して回っているようなのです」


 アッコさんの話では、全員、水晶のような物に取り込まれフェンリルの体に吸い込まれていったとか。


「お嬢様達の力を吸収しているのか?」

「それはどうか分かりません。フェンリルといえばあなた方の親玉なのでしょう?そちらの方が詳しいのではないですか」

「いや、ただ伝説上の狼ってだけで詳しいことはまったくしらねえ」


 アッコさんは呆れたような目をフェンおじちゃんに向ける。


「いやほら、誰も会ったことねえし」

「そんなのでよく、眷属と言えましたわねえ」

「言うだけならタダだろ?」


 しかし、アッコさんの話なら、まだ挽回できる可能性があるってことだ。

 母さん達は封印されただけ、ならば、その封印を解く事が出来れば…


「今は情報が少なすぎます。一旦時間を空け、改めて仕切りなおしたほうがよろしいでしょう」

「そうか、ならばそれはアッコに任した。どちらにしろ、足止めは必要だろ?」


 そう言ってフェンおじちゃんは出て行こうとする。


「お待ちくだされ、封印の解除には、そなたの力が必要なのだ」


 そのとき、アッコさんからアッコさんじゃない人?の声がする。


「その声は…イヤリングの魔人か?」

「そうでございます」


 えっ、イヤリングの魔人?あ、アッコさんが手に持っているイヤリング、アルフィーラ姉さんが、魔人が宿っていると言ってたイヤリングだ。

 えっ、ほんとにそのイヤリングがしゃべってるの?腹話術じゃなかったの?


 その魔人さんのお話では、封印の解除には一定時間自分を水晶に触れさしておく必要があるとのこと。

 封印については、昔、色々と研究してその構造は熟知していると。

 なにせ、割れたらハルマゲドンだったからなあと震えた声で言っている。


 しかし、それを行うには、フェンリルに張り付けるだけの技能のある人物が居なくてはならない。

 フェンリルの素早さについていけて、フェンリルの攻撃をかわせる者。


「フェン介殿が取り付いて、アッコが守る。それしか手はありませぬ」


 なので今はバラバラに逃げて、後で合流しようと。


「それは、今じゃダメなのか?」

「…………あえて申し上げましょう。やるなら『今』です」


 えっ、じゃあなんで逃げようって言ってるの?


「魔人様、それ以上言うと…握りつぶしますよ?」

「………………」


 もしかしてボクの所為?

 ボクを逃がすために?

 万が一失敗すると、フェンおじちゃんもアッコさんも居なくなる。

 それは…ボクを守る者が居なくなるってこと。 


「カリス」

「はい」

「カリスは言ったよね、ボクが戦うというなら、全身全霊を持って戦ってくれると」


 カリスがボクをじっと見つめてくる。それはなにか悲しげな、それでいて嬉しげな顔であった。


「確かにカリスはボクより先に死ぬかもれない。だけど、その時はボクも死ぬときだ!」

「ぼっちゃん!」

「アッコさん前に言ったよね、ボクには剣があると、フェンおじちゃん、カリス、アッコさん、ボクの剣となって欲しい!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「やはり親子ですなあ」

「そうですね」


 アッコさんがぼっちゃんを眩しげに見つめている。

 そのぼっちゃんは今、対フェンリル用に対策を練っていた。


「フェンおじちゃん、ルーンウルフ達は戦ってくれるの?」

「おうよ。皆、眷属がどうこうよりもお嬢様のご飯がなくなる方が心配だからな」


 さすが獣だけあるな。

 そんなあるかどうかも分からない絆よりも目の前の食事が大切だと。


「山からフェンリルを出さないようにします。丘の上を囲んでひたすら魔法を撃ち続けてください」

「そんなだとあまり持たないぞ」

「もともと戦いは短期決戦です。長引けば勝ち目はありません」


 ぼっちゃんはずっと自分に力がないのを嘆いていた。

 そしてただ嘆いていただけじゃない。

 書物を読み、大旦那に色々相談し、ずっとあがいてきた。


「セバスチャン達は避雷針を作ってもらいます」

「しかし、今から作るとなると…」

「避雷針の材料ならすでにあります」


 そういってぼっちゃんはロープウェイを指差す。


「山頂のロープは切れた状態、その先端を尖らせます。そこに雷を誘導してください」


 なるほど、ロープはミスリルで出来ている。

 そのミスリルのロープに雷の魔力を流す事により雷を誘導すると。

 そしてその誘導した雷は麓から帝都まで続く長い長いロープや支柱により拡散されてしまう。


「セバスチャンは魔力を流す人間とそれを守るだけの人間の選別をお願いします」

「そうですな、ゴンドラの運転手は魔力を流すだけには長けております。そちらを魔力を流す側に、残りの者は守ることに専念いたしましょう」


 ぼっちゃんは皆に指示した後、最後に俺の元へやってくる。


「カリス、ボクは戦うよ、それはカリスを死においやる事になるかもしれない」

「いいんですよぼっちゃん、それこそ俺の本望ってやつです」

「だけど、カリスが居なくなればボクだって…死ぬ時は一緒だよ」


 ぼっちゃん…うっ、ぼっちゃーん!

 俺は思わずぼっちゃんに抱きつく。

 死ぬ時は一緒だなんて、そんな嬉しいセリフ。俺、俺…ぼっちゃんのこと一生大切にしますから!


「ちょっ、ちょっとカリス苦しいよ?」


「あの二人ほんとに仲がいいですね」

「ほんとにな。まるで恋人どうしみたいだな」

「男同士は不毛だと思うのですがなあ」


 ぼっちゃんの指示により皆それぞれの場所へ散っていく。

 それと同時に丘の上の光線の乱射も徐々に弱まっていく。


「もはや一刻の猶予もならない!さあ、反撃といこうじゃないか!」

「「おおっー!!」」

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