表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/41

第7話

「お姉ちゃんほんとに大丈夫?」

「まかしておけ!吾輩はあやつらと違って才能にあぐらをかいておらん。たとえ猫であろうと、努力を積めば神をも優る」


 ほんと心配だなあ。

 いつまでもそんな厨二病っぽいこと言ってないで、ちゃんと母さん達のサポートしてよ

 アルフィーラ姉さんと妹達は館に残るそうだ。

 3人ともそこらの魔術師を超える能力を持ってるから。

 ボクだって…でも、残っても足手まといになるビジョンしか描けない。


 補助魔法を掛けてもらっても、ミーシア姉さんやシュルク兄さんには敵わない。

 攻撃魔法はまったく使えない。

 回復魔法は…皆使えるし。


「俯くでないハグウィック。お主はいずれ世界を破滅させる邪神となるのだぞ。常に堂々としておるがよい!」


 邪神になんてならないよ…どういう理由で世界を破滅させなきゃなんないのよ?

 これだから厨二病は…


「そろそろ行くか」


 そう言ってフェンおじちゃんがボクの頭に手を乗せてくる。


「ミーシア、シュルク、なにかあれば俺を呼べ。すぐさま駆けつける」

「パパの出番はないのー」

「そうです!僕達は必ず勝利いたします!」


 そう言われたフェンおじちゃんはちょっと苦笑している。


「ハグウィックを頼んだぞフェン介」

「はっ!」

「カリスもよろしくお願いしますわ」

「はいっ!」


 ボクはフェンおじちゃんとカリスに挟まれてゴンドラに乗って山を降りる。

 あそこに居るのは、世界最高峰の剣士、世界最高峰の魔術師。

 アッコさんにおいては、父ちゃん曰く、一人でも国を滅ぼせるほどの力があると。現存する生物の頂点に立つ存在なんではないだろうか。

 皆、人の域を超えた者達ばかりだ。

 たとえどのような敵であろうとも遅れをとることはない…はずだ!


「クルーカとクロエも居たら良かったんだが…あの二人がそうそうやられることはないと思うんだがなあ」

「あの二人とフェンおじちゃんならどっちが強いの?」

「ああ?どうかな、クルーカとは五分五分だと思うが…クロエはなあ、あいつとはやりあいたくない」


 まあ、確かに。

 クロエさんの攻撃えげつないのが多いからなあ。

 あの二人を退け、父ちゃんを捕らえた奴…一体どれほどの存在なのか。

 母ちゃん?ああ、母ちゃんはなあ…おいしそうなお菓子でも仕掛ければ簡単に捕まりそうな気がする。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 ボクがオーム公爵家についた夜、突如帝都を暴風雨が襲ってきた。

 激しい雷と突風により一歩も外に出れないほどだった。

 ふと見ると、フェンおじちゃんが険しい表情をして丘の上にあるボクの屋敷を睨みつけている。


 ボクもつられて丘の上の館へ視線を動かす。

 そこでは…激しい雷が丘の上に無数に降り注いでいた。

 と、一瞬光ったかと思うと、一筋の光が夜空を劈く。


 あれは…!ティア母さんの攻撃魔法!?


「フェンおじちゃん!」

「何かと戦っているな…大丈夫だ、まだ誰もやられちゃいねえ」


 フェンおじちゃんは持って生まれた探知の力で生命力の気配を探れるとか。それで母さん達の無事が分かるらしい。

 今度は木々がまるでドミノ倒しのように倒れていく。

 あれは、ネイ母さんの必殺技か?ネイ母さんの必殺技に斬れないものはない。

 そして―――その技はめったにはずさない。勝負は…ついたのか!?


 だが、その予想に反してまだ戦闘は継続中のようで、館からは幾筋もの光線が夜空に立ち昇る。


 その後も激しい雷が何本も降り注ぎ、木々は薙ぎ倒され、夜空には無数の魔法の軌跡が描かれる。

 それはまるで神話に出てくる、神々の戦いのように幻想的な一場面であった。

 そんな戦いが一体何時間続いただろうか?


「どうやらてこずっているようだな」


 ふと、フェンおじちゃんがそう呟く。

 フェンおじちゃんはずっと握りこぶしをギリギリ言わせながらその風景を見ていた。

 今すぐにでも飛んでいきそうな雰囲気だ。


「フェンおじちゃん、ボクにはカリスが居ます、だから…」


 そう言ったボクをフェンおじちゃんはグリグリと撫でてくる。


「子供がいらぬ心配をすんな。大丈夫だ、まだ誰も・」


 と、その瞬間、丘の上にある屋敷の一部が吹き飛んだように見えた!


「くっ、誰だ!消えた気配は……まさかっ、お嬢様!?」


 え…ネイ母さん?


「ネイ母さんがどうかしたの!?」

「くっ、続けてフィリスもか…………カリス、すぐに脱出の支度をしろ。セバスチャン、奴はあそこを落とせばここに来ると思うか」


 えっ、どっ、ど、どういうこと!?

 セバスチャンがボクを見つめてくる。


「ここで篭城よりも王宮で匿ってもらうほうがよろしいでしょうな」

「無駄な血が流れるだけだ。俺がカリスとハグウィックを担いで出来る限り遠くへ逃げる」

「足止めは任してもらってよろしいですかな」

「…頼む」


 えっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!カリス離してよ!


「ハグウィックには、暫く眠っていてもらった方がいいか」


 フェンおじちゃんの拳が動く。だけど、


「ボクだって戦えるっ!」


 その拳を避ける。

 ボクだって伊達にソルさんに武術を教わっていない。

 力と素早さで劣ったとしても、事前に来る攻撃を予見すればいい。

 相手が動く前に動く、相手が行動する前に抑えるんだ。


「確かに上達しているな。だがな」


 そう言うとあっという間に間合いを詰められる。

 予想してても、


「避けられない速度で攻撃を加えればいい」


 くっ、やはり今のボクじゃ…

 目の前にフェンおじちゃんの拳が。


「なんのマネだカリス?」


 だが、その拳をカリスが受け止める。


「たとえフェン介さんであっても俺のぼっちゃんを傷つけることは許しません!」

「しかしだな」

「ぼっちゃん、ぼっちゃんが戦うというのならこのカリス、全身全霊を持って敵と戦う所存でございます」


 カリス…ありが・


「そして、ぼっちゃんより先に死んで見せましょう」


 えっ、


「そういうことでございます」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「嫌な役をやらせてしまったようだな」

「フェン介さん程じゃないですよ」


 そうか、ボクが戦うということは…ここにいる皆も戦うということになるのか。

 勝てる敵ならいい…だけど、あのメンバーで勝てないのにボク達で勝てる訳がない。

 ボクが戦うと決意すること…それは即ち、皆に死ねと言うことと同じことなのか。


「分かった…逃げよう」

「ぼっちゃん…」


 カリスがボクを暖かく抱きしめてくる。


「シュルク…ミーシア…つったくあいつら、ちっとは俺に頼りやがれよ。後は…エイテイシアも消えたか。アッコとティア様、アルフィーラの3人だけか…ん?」


 丘の上の館からこれまでにない無数の光線が迸り始めた。

 と、一筋こちらに向かってくる?


「アッコか!?」


 こちらに向かってきた一筋の光は…アッコさんだった。


「若!今すぐ、逃げる準備を!今は…ティア様が最後の力を振り絞って敵を縫いとめております」


 そのアッコさんは全身傷だらけでボロボロの風体をしていた。


「アッコさん、今すぐ回復します!」『ヒールエクステント!』

「ありがとうございます。申し訳ありません、大きな口を叩いておきながらこの有様」

「ううん!アッコさんはちゃんと約束を守ってくれたじゃないか!こうやって無事に帰ってきてくれた…」

「若…」


 アッコさんはボクをギュッと抱きしてめる、そしてそのまま宙に浮く。


「頼めるか」

「魔力が心もとないです、連れて行けるのは…若のみです」

「お願いします」


 えっ、ちょっとアッコさん何を!?


「敵は…」

「フェンリル、あなた達の親玉ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ