第6話 瘴気探索装置◆動力は女神君
「よしっ、出来たぞ、これが瘴気探索装置・動力は女神君だ!」
「動力はのくだりになんとなく納得がいかないにゃが、そのふかふかベットに免じて許してやるニャ」
邪神転生によって瘴気はなくなった―――なんてことはなく、今尚、瘴気は世界に絶賛ばら撒き中だ。
むしろ、コントロールできなくなってる分、危険度は増している。
最初に設定された瘴気システムってのは、生命力、所謂生物があまり存在しない場所に、空気中に含まれる瘴気が集まりモンスターを形成させるって物だった。
それを利用して邪心さんは生命力のまったくない空間を作り出し、瘴気を集めてたそうな。
そして今はその空間が存在しない状態、即ち、元の通り生命力の少ない地域に瘴気が集まりモンスターが発生している。
なるべく人の立ち寄らない場所を作らないようにして対策を講じてはいるが、それでも偶にモンスターが発生する。
町以外となるとソレこそモンスタースポットかよってぐらいに大量に発生する場所もある。
とはいえ、事前にその場所を特定するのはとても困難な訳で。
そこでその瘴気を探知できる女神にご登場願おうということになった。
ミスリルで作ったペットキャリーを用意し、中に超高級、ふかふかお布団を敷き、女神に入ってもらう。
ペットキャリーの上に方位磁針のようなものを取り付け、中の女神に魔力を流してもらうとあら不思議、瘴気の発生しそうな場所を指し示すではないか。
「ということで、とりあえず行ってきます」
「本当に私がついて行かなくて大丈夫か?」
ネイリスさんが心配そうに聞いてくる。
今回、とあるお国から救援要請が入った。なんでもモンスターが大量発生して町や村々が大打撃を受けてるとか。
たぶんどこかに瘴気が溜まり易い所があるのだろうが、色々調べてみたが分からない。
仮に見つけたとしても我が軍では対応のしようもないとな。
そこで、金一封で引き受けることにした。
なんせ今のオレは借金まみれだ。度々、皇帝陛下の妹様に借金の返済をせまられている。
ここんとこ毎日屋敷に訪れてるっす。そんなに毎日来てもお金は急にはできないっすよ?
「クルーカとクロエが居るし、問題ないだろう」
ネイリスさんはティア嬢の護衛をしないといけないし。
この二人が居れば、一国の軍隊にだって勝てると思う。
「はっ、某がついている限り、殿には傷一つつけさせませぬ」
「そうか、ならば頼んだぞ!」
「御意!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「もうそろそろ帰って来てもいいとは思うのだが」
「クロエからの連絡もありませんね」
ジョフィが遠方の国の瘴気問題を解決する為に出かけてから一週間が経った。
やはり私もついて行った方が良かったか…
「エイテイシア、あなたジョフィが今どの辺りに居るか分かりませんか?」
「父上ですか?むう…フィリス、お前分からないか?」
「私が感知できる範囲には居ませんわね」
嫌な予感がするな。
「ティア様、私もジョフィを追って彼の国へ出向こうと思うのですが」
「そうですわね…」
「ちょっと待てフィリス、お前、深淵の神であろう、お前の感知できる範囲に居ないとは…まずいのではないのか」
エイテイシアが慌ててそう言い出す。
どういうことだ?
「深淵にとって距離は関係ない、どこにもないものでもあり、すぐ隣にあるものでもある。お前に感知できぬ場所などこの世界に存在せぬであろう」
「それは神であったときの話ですわ。今の私はただの人、というより猫人。神の力も米粒以下…猫一匹探すのはとてもとても、ん?」
そこでフィリスが考え込む。
「しかし、お父様は兎も角、アフローティアまで探知出来ないのはおかしいですわね」
ままま、まさか!ジョフィ達の身になにか!
「おおお、お母様、落ち着いてください。あわわわ、頭が回るうぅ。大丈夫です!お父様は無事ですから!さすがに命に関わる事があれば分かります!」
「そ、そうか」
「と、なると…」
「封印されたか、どこか亜空間にとばされたか…じゃな」
そこにアルフィーラが入ってくる。
そして、アルフィーラがつけているイヤリングがしゃべり出す。
「その可能性がありますな。私もかつてはジョフィ殿を封印したことがあります。油断なされている場合、それほどの苦もなく封印が可能でありましょう」
「あの女神とあの父上ではなぁ」
「クルーカとクロエがついているのだぞ?」
「それは、相手が人間であれば、でしょう」
と、ティア様が険しそうな顔をしてそう言ってくる。
「残りの2柱が動いた…か」
◇◆◇◆◇◆◇◆
どうしたんだろう急に集合なんて。
学校から帰ったとたん、ティア母さんからメインホールに来るように言われた。
そこでは、屋敷の皆は勿論のこと、山を警護しているルーンウルフ達まで集まっていた。
「緊急事態が発生しました、暫くこの館から一部の人を残し、退去して頂くことになります」
皆、真剣にティア母さんの話を聞いている。
その話ではどうやら父ちゃんが何者かに捕らえられた可能性があると。
命に別状はないことは確認しているが、連絡はつかない。
しかも、その何者かが、神である可能性もあるとか。
ボクは手に汗を握ってその話を聞いていた。
あの父ちゃんが誰かに捕まるなんて想像も出来ない。
だって逃げ足だけなら世界一じゃないか。
「ぼっちゃん…」
カリスが震えてるボクの手を握ってくる。
「何があってもぼっちゃんは俺が守りますから」
「カリス…」
カリスだって両親が行方不明なのに、ボクのことを考えてくれて…
そうだよね!ボクだって、もう十分に戦える!
それにあの父ちゃんが只で捕らえられてる訳がない。きっと捕らえてる人は後悔しているはず!
「ハグウィック、あなたはフェン介達と共にオーム公爵家に行きなさい」
「えっ!?」
ティア母さんからフェンおじちゃんやルーンウルフ達と共に実家のオーム公爵家に行くように言われる。
「カリス、ハグウィックを頼みますわ」
「御意!」
「ちょっ、ちょっとティア母さん!ボクだって!」
ボクの抗議を無視してティア母さんが続ける。
「セバスチャン、館の使用人は全員退去させなさい」
「私達も戦えますが?」
「足手まといです」
ティア母さんはそうきって捨てる。
その言葉にボクも動けなくなる。
「フェン介、皆を頼むぞ」
「お嬢様、しかし…」
「万が一の時はお前が最後の砦だ!信頼しているからな!」
「お嬢様!」
フェンおじちゃんはネイ母さんのその言葉に涙を流している。
「母上、もし残りの2柱が相手だとすると…我々3名が残ればそれで解決いたします」
「エイテイシア、あなたに前世の記憶があろうとなかろうと、あなたはわたくしが腹を痛めて生んだ子なのです。子を守らぬ親などいますか」
「ははうぇ…」
「若、心配なさらずともこのアッコがおります。万が一の場合は皆を抱えて脱出いたしましょう」
心配そうに皆を見つめているボクにアッコさんが妖艶な笑顔を向けてくる。
「ほんとうに?」
「このアッコは対女神用に生み出された戦闘用悪魔族なのです。たとえ相手が神であろうとも引けを取る気はありません」
そう言ってボクの頭を愛おしそうになでてくる。
「ご命令を、若のご命令ならばこのアッコ、神さえも仕留めて見せましょう」
「分かった、ならば命じる!アッコよ、無事に帰って来てください」
そう言ったボクを、アッコさんはギュッと抱きしめてくるのだった。




