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第3話 登場人物紹介◆公爵家編

「えっ、ハグウィックが剣術を習いたいだって?」

「うむ、そうなのだ。教える事自体はやぶさかではないのだが…」


 ネイリスさんから相談があると言われ話の内容を聞いてみると、どうやらハグウィックが年下の女の子に勝負を挑まれて負けて帰ってきたらしい。

 しかもその女の子、小学部に入ったばかりの6歳児だとか。

 いくらなんでもと自分の至らなさを痛感したハグウィックは、尊敬する剣士であるネイリスさんに弟子入りしたいと申し込んできたようだ。


「いいんじゃないかな。自分から言い出すとはいい傾向じゃないの、何か問題でもあるの?」

「それがだな、ハグウィックはお前と同じで魔力がないだろう」


 ネイリスさんのお話では、大半の剣士は体に魔力を帯びることにより筋力を強化している。

 ミスリルの剣など特殊な装備を持っているものは、武器にも魔力を帯びさせ、切れ味や防備の強化を行うことができるそうな。

 しかしながらハグウィックは魔力がない、よって、魔力による身体強化、魔道具の使用、ミスリルなどの魔法武器が役に立たない。

 ようは、端的に言うと剣士としての才能が無いと。


「まあ、やるだけでもやらしてみたら?挫折も一つの経験じゃね?」

「そうは言うが、魔法もダメだっただろ?そんなに何回も続けて挫折を味あわせる事もなかろう」


 ネイリスさんもなんだかんだ言って過保護だよなあ。

 うちの家族、皆ハグウィックには甘すぎですよ?


「魔力を用いない戦闘方法とかはないの?」

「ふうむ、そうだな…」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ぼっちゃん、危ないからよしましょうよぉ」

「カリスだってボクが強くなれば仕事が減るでしょ?」


 俺のことを思ってくれるなら尚更やめてくださいよぉ。

 ぼっちゃんに傷一つでもついたら俺の首が飛ぶんですから。物理的に。

 今回だってちょっと目を離した隙に…ほんとあの後死ぬ思いしたんですから。


「なんでしょうか母上」

「若殿に衣服の乱れがあったんだが…」


 ―――ダッ!


「ちちえうぇー!父上!やられちゃう!俺やれれちゃうぅうう!」


 いやー、あの時の母上の目は怖かった、マジ命の危険を感じたもんだ。

 これ家庭内DVじゃね?ってぐらいヤバかった。

 たまたま通りかかった大旦那に助けられ事なきは得たが…


 その後の訓練メニューを見たら倍近く増えてた。コロスキカ…


「いつまでもカリスもボクにつきっきりってのもイヤでしょ」


 まあ、そりゃ少しは思うけどサー。

 ぼっちゃんどんくさいしなー。目を離すのも危ぶまれる訳デー。


「どんくさくないよ!」


 そう言ってるうちは信用ならないっすよ?


「ハグウィック、ジョフィの許可が下りたぞ」


 と、そこへネイリス様が現れる。


「えっ、大丈夫なんで?鍛錬ってーとやはり怪我とか心配じゃないですか?」

「カリスは心配性だな。鍛錬に怪我は付き物、それに少々の怪我は自分で癒せるだろう」


 いや、そうなんですけど…うちの母上がですねー。


「クロエには私から言っておこう。いつまでも過保護ではダメだしな」

「ご姉妹の方達には?」

「それも任しとけ」


 ネイリス様はほんと頼りになるよなー。俺もこんな女性になりたいものだ。


「ネイリス!ハグウィックに鍛錬はまだ早すぎですわ!」


 と、そこへティアラース様が駆けて来る。


「ハグウィックぐらいの年齢から鍛錬を始めるものは大勢おりますが」

「うう、でも怪我とかしたら心配じゃない!それにハグウィックは将来ジョフィのあとを継いで公爵当主となるのですから、剣の訓練など必要ありませんわ!」

「それでも自衛の手段を覚えておくに越した事はないでしょう…とりあえず、ハグウィックの意見を聞いてみてはどうでしょうか」


 ティア様が心配そうな目でぼっちゃんを見つめる。


「ティア母さん、ボク、頑張ってみたいんだ。その子に言われたんだけど、弱いのは悪い事じゃない、努力しない事が悪いんだって」

「どこの子でしょう…調べて追い込みを…」

「また物騒な事を、ティア、ハグウィックも男の子なんだ、男の意地って奴がある、もう少し自由にやらせてみようじゃないか」

「とおちゃん!」


 大旦那が歩いてきてティア様を諭すように言ってくる。


「しかしながら、ネイリスやクルーカとは…」

「大丈夫、それも考えているから」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「おお、よう来たなハグウィック、ほら甘いお菓子を用意しておるぞ」

「おやおや、また一段と大きくなって。また、服装も新着いたしませんとね」


 初老のおじいさんと、おばあさんが話しかけてくる。

 おじいさんはこの国で2番目にえらい人で、宰相をしているんだって。

 おばあさんはその奥方である。

 ティア母さんのご両親にあたるお人達なのだ。


「ご無沙汰しております。それでセイジョウ殿達は?」

「まあ、相変わらずネイリスはせっかちよねー」

「そうじゃそうじゃ、もっとゆっくりしていけばよい」


 ボクはネイ母さんに剣術を教えてもらおうと思ってたんだけど、どうも、ボクとネイ母さんの剣術は相性が悪いらしい。

 ネイ母さんは魔法を主体とした戦術を用いる事が多いので、魔力のないボクだと使いこなす事はできないそうな。

 ただ、ネイ母さんのお師匠様であるオーム公爵家の剣心さんに、魔力を用いない戦いを知ってる人がいるとのことなので、本日はその人にお話を聞きに来た所なのである。


「もうそろそろ…」

「まだ来て1時間も経っとらんじゃろ」

「そうよそうよ」


 ボクはおじいちゃんのお膝の上に座らされてお菓子を頂いている。

 あれ?今日は鍛錬のはずなのにこれでいいんだろうか?

 あの時の子が言った事を思い出す。


「あんたは何も努力もせずに回りに甘えてばかりのボンボンじゃない!」


 うん、その通りだ。

 ボクは今までずっと甘えてきた。このままだと、父ちゃんみたいなダメ人間になっちゃう!


「おじいちゃん!ボク、強くなりたいんだ!」

「おお…そうか…もうハグウィックもそんな年なのか…」


 いや感動してないでおろして?


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほう、剣術を学びたいとな」

「ふうむ、魔力を用いない方法か…」

「お、つってーと俺の出番かね」


 ネイ母さんが3人の男の人を紹介してくれる。

 中型の剣を腰にさした剣士風の人がゼイガンさん。ネイ母さんやクルーカさんとはまた違ったタイプの剣士で、自分からはあまり攻めずに、守る事に重点をおくタイプなんだって。

 仕込錫杖を持った人がセイジョウさん。この人がネイ母さんのお師匠様で、鉄壁のセイジョウといわれるほど硬い防御力を誇るとか。

 最後のちょっと軽そうな人がソルヒタネさん。目に見える武器は持ってないけど、いろいろ暗器などを仕込んでいるとか。


「最初に言っておく、魔力を持たないお前がどれだけ頑張ろうとも、魔力をもった3歳児にすら敵わない」

「それでもお前は剣士を志すのか?」


 ボクは少し考え込む。


「確かにボクは剣士になれないかもしれない。だけど、剣術を知るということは剣士を相手にした時に役に立つんじゃないかと思う」

「なるほど、確かにそうだ。まずは己を知り次に敵を知る。剣士にとって最もやっかいなのは剣術を知っているこっちが知らない攻撃をしてくる敵だからな」


 そう言ってソルヒタネさんが頭を撫でてくる。


「ぼうず、剣術を学ぶのはいい、それとは別に俺の知る技術を学んでみないか?」

「えっ?」

「魔力に頼らない戦い方ってのは実は結構ある。ただし、決してお綺麗とは言えない勝ち方になるがな」


 ソルさんの言う事には、諜報活動をする際には魔力を用いない戦闘方法が重要になるとか。

 なにせ魔力を使うということは魔力を察知できる相手には自分の居場所を教えることにもなるから。

 隠れて行動する場合は極力魔力を用いない動きをしなければならない。


 ただ、その戦い方は、相手の裏をかく、意表をつく、主に相手からは卑怯と思われる勝ち方となる

 それでもいいなら教えてやろうと。


「よろしくお願いします!」

「おっ、逡巡の迷いもなしか?いいのか?」

「知ることに、無駄は無い、と思っています」

「いい心がけだ」


 ボクはその日、ボクの生き方を決定付ける、二人目の師匠を迎えるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「お、やってるな、いい汗かいてるじゃないか」


 ハグウィックがオーム公爵家に通いだして一週間が経った。

 ちょっと様子見に立ち寄ったのだが、随分手厳しい訓練を受けているようだった。


「大旦那、ちょっとばかり厳しすぎやしませんか?」

「ああ、まだまだ大丈夫だろ?」

「ああ…また怪我を!ひっ、血が出てます!ちょっと血がでてるっすよ!俺止めてきます!」

「カリス…ちょっと落ち着けって。お前、クルーカたちにアレ以上やられてるだろ?」

「ぼっちゃんは他所の子とは違いますので!」


 ほんとうちの連中は過保護過ぎて困る。

 お前も、そんなにハラハラするなら見なきゃいいのにな。


「あ!ジョフィお兄様!」


 そう言って館の方から駆けて来る人がいる。


「お、久しぶりだなメイクルース、学校から帰ってきたばかりか?」


 駆けて来たのはティア嬢の弟君、メイクルースだった。

 

「いえ、もうすぐ中等部なので新しい学生服の試着をしていたのです!」


 このメイクルースさん、ティア嬢と譲りのキリッとしたマスクで学校でも大層の人気者なんだと。

 ここ最近身長も伸びてきて、そりゃもうモテモテだとか。

 ただ一つ問題があるとすれば…


「まあなんだ、それ、女性用だからな?ちゃんと学校行くときは男性用着ような」


 女装趣味があることか。

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