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吾輩はねこである。えっ、マジで!?  作者: ぬこぬっくぬこ
第四部 いい感じにまとまったんではないでしょうか?
28/41

最終章 吾輩はねこである。えっ、マジで!?

 くっくっく…まさかこうも簡単に事が運ぶとは。

 私は水晶に入っている猫を見やる。

 どうやって攫おうと思ってたところに、丁度良く一匹だけになった上に身動きできない状態だとはな。


 さあ問題はこれをどのように扱うかだ。

 さすがに世界と猫を天秤にかけよと言っても無理だろう。

 落しどころは手を出さないと約束させるくらいか?


 いや、どうだか…それだといざというときに寝返るかもしれん。

 しょせんは猫だしな。

 追い詰められれば簡単に捨て去ることも考えられる。


 そうだな…この猫と共に眠っておいてもらうのがいいか、ざっと千年ほど。

 なあに神にとってはそれくらい瞬きをしてる間ぐらいだろう。

 女神のみという条件であれば人間どもも納得するだろう。

 元々は女神などいないのが普通だからな。


 さてと、それでは脅迫文でも送りつけてやるか。


 ―――ピシッ


 む、なんだ、邪神様の水晶に亀裂が?


◇◆◇◆◇◆◇◆


「遠からんものは音に聞け!近くば寄って目にも見よ!我こそは、この世に最も尊き愛の女神!アフローティアなりぃ!にゃ」


 これはまた…


「セバスチャン、これはまたどうしたことかね?なぜ私の娘があのようなところへ?」


 公爵様が半ば諦めた表情で帝都の上空を見上げる。

 そこには、フィーネに化けた女神様が映っており、その左右にはお嬢様とティアラース様が佇んでいる。

 しかしフィーネに化けてあのようことを…ジョフィの奴、もう人間の姿ではまともに表を歩けないのではないか?


「今度は何をしでかす気かね?あまり娘達が有名になるのも困りものなのだが」

「なんでも世界戦争を勃発させるとか言っておりましたな」

「は?」


 なんでも邪神との最終決戦を行うとか。モンスターと人類との存続を掛けた争いとなるとか。

 ほら、そのように演説しておりますぞ。


「じょ、ジョフィはおらぬのか!すぐさま彼に言ってやめさせるように・」

「公爵様、落ち着いてください」

「う、うぬ、いや、これが落ち着いておれるか!しかし、セバスチャンは落ち着いておるの?」

「何事も良く言うでしょう。ほら『人生諦めが肝心』と」


 なんせそのジョフィが居ませんからな。今の彼女らを止められる者はおりますまい。

 なんだかんだで彼には彼の役割というものがあったということですかな。彼女らの暴走を止めるという…


◇◆◇◆◇◆◇◆


「め、女神様、ちょっと吸いすぎではありませぬか?ほら、マリア嬢がどんどんしぼんでいくような…」

「にゃ?痩せていいじゃないかにゃ?」

「そうでしょうか?」


「アフローティア様、帝国の国軍、集合してにございます!皇帝自ら陣を率いるとのことです!」

「王国より伝令ですぞ。フォンヘルケン様が決起して軍を編成しておるもよう。国王様も全面バックアップを約束されました」

「共和国の元首より言伝だ!神の御許に総力を挙げて駆けつけるとのこと。あとビッツを婿に貰うって言ってたぞ」

「ええっ、ちょっとまって、待ってよ!えっ、それ確定?えっ、マジで!?」


「よし!ハルマゲドンの発動なのニャ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 …あ、あのバカ女神、この猫の為に世界を終わらすつもりか?

 ハルマゲドン…終末戦争など、どちらかが滅びるまで終わることはないぞ!?

 いやまて、今のこちらの戦力…こないだ全滅したんだが…まずいぞ、世界中の瘴気を掻き集めたところで奴等に対抗できるうるものではない!

 まさか!この状況を見据えて!?


 ―――バキッ!


 おおお…まずい、まずいぞ!水晶が割れてしまう!

 くっ、今居るモンスターどもを掻き集めて…いや、そもそも奴らはこちらに着くのか?

 向こうには悪魔族ですら手なずける、モンスターテイマーがいるのだぞ!?


 人間にも邪神教徒がいるが…完全に負けると分かっている勝負に出てくる奴は居るのか?

 なんせ奴らの大半は自分第一主義ばかりだからな。

 くそっ、とにかくこの水晶を強化せねば!


 ―――ビシッ


 あわわわ…ムリムリムリ!神々の理を抑えれるわけがない!

 そ、そうだ、神の理といえば…私は水晶に入っている猫を見やる。

 こうなったら一か八か…


◇◆◇◆◇◆◇◆


「えっ、ハルマゲドンを止めて欲しい?」


 なにやらかしたのあのアホ猫?

 通りすがりの親切な魔人さんに助けられたオレはどうやら眠ってしまっていたらしい。

 目が覚めたオレに魔人さんが言うには、あのアホ猫、オレが邪神に攫われたと思って正面戦争を吹っ掛けてきたとのこと。

 オレが寝てる間に何が起こったのぉ?


「ち、違うのだ!決して、攫って猫質にしようだなどとはこれっぽちも思ってなく!そ、そう、OHANASHI、そう、ちょっとだけお話をしようと思ってだな!」


 OHANASHIねえ…それは聞きに行くとマグロ漁船とかに乗せられちゃうタイプじゃないよね?

 いや、どっちにしろハルマゲドンは不味いだろ。モンスターと人類の最終決戦とかー、一番やっちゃ駄目なヤツダロー。

 あいつ確か、ハルマゲドンをしなくても女神空間を繋げて一騎打ちとかできるって言ってなかったか?

 あっ、もしかしてノリでやってんじゃ…あいつならやりかねん!


「とにかくオレを戻してくれ、そうすれば収まるだろ」

「少々そこの水鏡を覗いてくれんか?」


 ん?オレは地面にある池のようなものを覗く。


「大将、ちょっと張り切りすぎとちゃいまっか」

「神世の戦いだぞ、ここで張り切らんとなんとする!全軍を終結し邪神を迎え撃つ!世界に帝国の威信をとくと見せ付けるときぞ!」

「そうじゃそうじゃ、敵を倒すだけが戦ではない。どう勝つか、どれだけ手柄を立てるか、勝った後の事も考えるのが一流の戦略家というものじゃぞ」


 帝都の城壁の外には地平線を埋め尽くさんがばかりの兵隊さんが。

 さらに続々と地方から帝都に向かうありの行列のようなものも。


「うむ、フォンヘルケンの奴、帝都から帰って人が変わったかのようだな」

「そうですわね、神聖魔法を会得した際に色々あったのでしょう」

「神に感謝せねばな。この戦、見事勝利を迎えたならば代替わりも良いかもしれん」


 あんなこと言っちゃってるよ。

 もしこの戦、中止になるとどうなるのだろうか。


「じゅるり、この戦いに勝利した暁にはワタクシもハネムーン!なんとしてでも参戦せねばならぬザンス!」

「なんか元首が張り切っておられるなぁ」

「あれほど帝国ぎらいだったというのに…あれか?恋は人を変えるというやつかねえ」


 なんで戦いに参戦したらハネムーンなの?

 オレはこれからビッツの顔を見られないのではなかろうか。いろんな意味で。


「どうだ、収められそうか?」

「………………」


 これはダメだなあ…この状況「冗談でした、てへっ☆」って言ったらオレが殺されそうだなぁ。


「そちらはどれくらい抑えていれそうで?」

「三日、いや一週間は持たせよう!」

「そうですか、ならば…」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 擬似ハルマゲドン、だとぉ!?


 藁にもすがる思いで、散々こちらの意表をついてきたこの猫に知恵をださそうと思ったのだが、ついて出た言葉が擬似ハルマゲドン。


「そう、とにかくモンスターを各拠点に大量発生させるんだ。弱くていい、むしろ弱いほうがいい、数だけを大量に用意して」


 ふむ、ほぼ立ってるだけのモンスターなら大量に作り出すことも可能だが?

 いったいそんなことをしてどうするというのだ。


「まずは各国を戦った気分にさせましょう!」

「なるほど!だが一方的な戦いになるぞ?それで満足するのか?」

「そこはあれで、ほら人間側にイリュージョンの魔法でも掛けて、女神の加護を演出、みたいな?」


 ほうほう、モンスターが弱いのではない、人間側が女神の加護で強くなったように見せ掛ける訳か。なんたる策士!


「後は…邪神さんには一度負けてもらいます」

「なんだと!?」


 この猫の話では各国で戦を演出し、大勝利を見せ掛けたとしても、見て分かる決着を見せない限りこれは終わらないと。

 万一これで一旦終結できたとしても、こんな余裕な戦だと思われたら今後ハルマゲドンを催促してきかねない。

 偉い人は権謀策略なんでもありだから、あんなちょろい女神猫はすぐにのせられるだろうと。


「なのでちょっと封印という形をとろうと思います、ざっと千年ほど。ほら、神様にとっちゃそんぐらい瞬きしてるようなもんじゃない?」

「いやいや千年は眠りすぎだろう、せめて100年とかに」

「仕方ないなあ、じゃあ999年で」

「それこそ大してかわらんだろう!いやまて、負けること自体ありえぬぞ!」


 全面戦争して負けたとあっては、目を覚まされたときどれほどお怒りになることか。


「とはいえこのままじゃ敗北必至な訳だしここは折れてくれないと。優秀な指揮官は敗北を悟ったとき、勝ちにこだわって悪戯に犠牲を増やすよりも、どれだけ有利に負けることができるかを考えるものですよ」

「む、負けるのに有利になるのか?」

「世の中には『負けるが勝ち』という言葉がありましてね、その場は負けることで次の勝利に繋げる、あるいは、負けたほうが得するように持っていくなどという手もあるのです」


 負けるが勝ち…か、ハルマゲドンで敗北した神は消滅してしまう、ならば、一旦この場は奴らに勝ちを譲り、次の戦いに備えるということか。

 千年…はいきすぎだが、数百年もあれば瘴気もまた世界に充満しよう。

 なあに、私が罰を受ければ済む事だ。それで邪神様が助かるというのなら喜んで受け入れよう。

 となれば私のすることは…


「せめて300年!これ以上はまかりならん!」


 封印期間の交渉だ!


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ファーハッハッハァ!良く来たな勇者ども、待ちわびたぞ!」

「何やってんのニャ、ダーリン」

「あれ、何でバレたの!?」

「それはアレなのニャ!愛のなせる業?」


 嘘付け!それ絶対女神パワーだろが!


 あれから各国へ世界中の瘴気を集めてモンスターを作り侵攻させた。

 その数、兵士の数十倍にもなるほど。

 しかし、ほぼ棒立ち、近寄ればようやく腕を上げる程度のモンスター。

 最初はその数にびびっていた兵隊さん達も、終盤には嬉々として抹殺マシーンと化していた。

 強くなったと勘違いして他国に侵略戦争とか仕掛けないといいが…


 そして戦も終盤となり、最終決戦の地として例のダンジョンの上空へ悪魔城を出現させた。

 なんと邪心さん、ダンジョンの地下ではなく、上空に光学迷彩風のお城を作っていたようなのだ。

 帝国の兵士達は遠くの戦場で戦闘中、帝都に残るは女神猫を守る親衛隊いつものメンバーのみ。


 ということで、今のうちとご招待さしあげた訳で。


「ジョフィ無事だったのか!良かった!本当に良かった!」

「まったく、あなたは心配ばかりさせて」


 ごふっ!ネイリスさんとクロエが飛び込んできた。


「とのぉお!申し訳ありません!俺が目を離した所為で!今度からは死ぬまで離れません!」


 いや離れてよ?クロエさん首しまってますんで。


「殿、このクルーカ、いかような罰も受ける所存です」


 クルーカがうな垂れて地面に膝をついてくる。


「いやいや、今回は仕方ないよ。むしろオレがクルーカに告げずに動いたのが駄目な訳だろ?」

「殿…ありがたきお言葉。少しご相談が…今回の反省を踏まえ忍びを増強致しませぬか?」


 えっ、クロエみたいなのが増えるの?ダメダメ絶対!


「それにしてもこれは一体どういうことですか?そちらにおられるのは私の以前の主、悪魔族のヘッドのお方でしょう?」

「えっ、お前あんなひょろそうな奴にやられたのか?アッコも対した事ねえ・あががが」


 フェン介はいい加減見た目で強さを判断するのはやめような。

 アッコさんもそれくらいで。それ喉まで手が入ってないっスか?


「ほんとだにゃ、なんでそんにゃ邪神みたいなかっこしてるのにゃ?」

「ああ、実はな…つーかお前!なにハルマゲドンなんておこそうとしてんだよ!」

「にゃ?あちきはダーリンを取り戻そうと思って…」

「別に女神空間を繋げればいいんじゃなかったのか?」

「あっ…」


 お前…忘れてたな?忘れてたんだろ?忘れてたですまねえぞ!


「とりあえずハルマゲドンは中止だ。とはいえこの事態、収めるためには演出が必要だろ」


 なのでちょっくら全世界に向けて邪神と女神の最終決戦を放映しようと。

 放映の提供はこの魔人さんが行ってくれるそうで。


「にゃ、本物の邪神はどうするのにゃ?」

「ああ、それなんだが、交渉の結果、500年ほど眠ってもらうことになった」

「なんの交渉なのニャ?」


 オレは猫耳娘に魔人さんとの交渉の過程を説明する。


「ふむふむ、命を見逃す代わりに封印させてもらうということかにゃ?」

「まあ、端的に言えばそうだな」

「人の弱みに付け込んだなかなかの作戦だニャ!」

「人聞きの悪い事言うなよ」


 しかしまあ、これで邪神とのいざこざも終わるんじゃないか。

 500年という期限つきだが、後の事は後の人達にお任せしよう。

 ゲームよりいい終わり方だとは思うぞ。


「だがしかし!一つだけ問題があるにゃ!」

「なにがだよ?」

「今のあちきには…邪神を封印できる程の力がないのにゃ!」


 猫耳娘は無い胸を張ってそう言いやがる。


「…お前、女神に戻れよ」

「にゃ!ダーリンはあちきに死ねと言うのかにゃ!」


 じゃあどうすんだよ。仮死とかなんとかで、なんとかならんのか?

 そうだ、もう一回猫に生まれ変われば…


「そういう問題じゃないのにゃ!命とは尊いものなのニャ!」


 オレ、その命、お前の所為で何回か亡くしそうになったんだが。


「ふむ…そうだにゃ!あちきにいい考えがあるにゃ!」

「お前のいい考えは当てにならないが、一応聞くだけ聞こう」


「邪神もあちきと同じように猫に転生させればいいのニャ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 えっ、邪神を猫にしちゃうの?


 いやでも、そんなのすぐに邪神にもどらね?

 えっ、簡単に死ねない呪いを掛けるって?お前、女神の癖に呪いとかー。

 えっ、間違った?呪いじゃなくて祝福?…それ言い方変えただけじゃね?


 いやでも、邪神なんてどこの猫に産ますんだよ。

 えっ、産むの?えっ、お前が生むのぉ!?

 えっ、それってもしかして…


「さあダーリン!これで卒業までと悠長なことを言ってる暇はなくなったのニャ!」


 オレの子かよ!


 えっ、何?邪神がオレの子になるの!?えっ、マジで!?オレそんな子育てられるかな?

 落ち着けオレ。確か育児シーンはゲームじゃ…もうこれはいいか。


「っていうか、女神が邪神産むとか、お前それでいいのかよ?」

「さあダーリン!今宵は新たな門出の始まりなのニャ!」

「話を聞けよ!」


 猫耳娘はフンスと鼻息を荒くして興奮しておられる。

 そういやそろそろ春がくるんだったか…こいつ発情期に入ってるんじゃ…最近ずっと猫の姿してたし…


◇◆◇◆◇◆◇◆


 吾輩はねこである。………………えっ、マジで!?

 えっ、なんで吾輩、ねこになっているのぉ!?なぜ?なんで!?

 落ち着け吾輩。確か女神が作ったゲームを見てそれに対抗するために全魔力を使い…


「おお、邪神様、ねこになってもなんと美しい」


 そう、この魔人を作り…眠りに着いたはず。


「にゃにゃ?」(なんでお前イヤリングなんかになってるのじゃ?)


 吾輩が作り出した魔人は人型であったはず。

 だが、吾輩の隣にあるイヤリングからその魔人の波動を感じる。


「それが、話せば長い事になるのですが…」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ハグウィック!またあやつらが吾輩をいじめるのじゃ!」

「またなの?ダメだよ二人ともお姉ちゃんいじめちゃ。めっ」


 3歳ぐらいの男の子が一人の女の子を庇って、追いかけていた二人の女の子のおでこをつつく。


「まあ、まあ、わたくし怒られちゃいましたわ」

「愛いぞこやつめハハハ」


 おでこをつつかれた女の子達は、男の子のしぐさになぜか喜んでいる。

 男の子以外はまだ子供だというのに話し方がババくさ・いでっ。


 しかしまあ、一時はどうなるかと思ったが以外と丸く収まったほうかねえ。

 生まれてきた邪心ちゃん、もう暴れるのなんのって。ほんと2歳ぐらいになるまで手が付けられなかった。毎日引っ掻き傷がたえない日々でした。

 魔人さんは魔人さんで、お仕置きがいやだとか言って、肉体を放棄してイヤリングに宿るし。

 しかもそれをオレ達の所為にして大げさに言うものだから。


 転換期が訪れたのはオレと猫耳娘の二人目の子供、そう邪神ちゃんにとって弟が生まれたとき。


「ほう、これが人の赤子か。ほんに弱々しい者よのう」

「加減しろよ、一応お前の弟なんだから大事にしてくれよ」

「分かっとるわ。仮にも吾輩の弟なのじゃからな、立派な邪神に育ててくれよう」


 邪神に育てちゃダメだぞ。


「お、なんだこやつ、吾輩の指を握り締めおって」


 赤子がきゃっきゃっとはしゃぎながら邪心ちゃんの指を握り締める。

 邪神ちゃんもまんざらではなさそうで嬉しげにしながら赤子をなでる。


「お、なんだこやつ、急に泣き出したぞ!?」

「にゃ?どうやらお腹がすいてるらしいのニャ」

「そうかようし、吾輩がお乳を」


 出ないからな、2歳の子供じゃどうやっても無理だから。


「にゃ、お乳はこっちなのニャ」


 猫耳娘が赤子を抱き上げお乳を飲ませる。

 今回の子、邪神ちゃんが手がかかるので猫の姿で出産はせずに、人間の状態で産んだんだが…

 みごとな猫耳としっぽだなあ。


 邪神ちゃんはつい最近、やっと人間の姿に化けれるようになった。

 やはりみごとな猫耳としっぽである。

 なんでこいつらは猫耳としっぽは残すのだろうか。


「羨ましいですわ…ねえ、女神様。わたくし達は子供を授かる事は出来ないのでしょうか?」

「にゃ?がんばればいつかは?」

「それでは、私達にもうすこし順番を回してくれませんか?」

「にゃ!それはダメなのニャ!」


 そのときポンという音と共に空中に一枚の紙切れが現れた。

 なんだこれ?ん、白紙?

 ひらひらと地面に落ちた紙を拾って見たが、その紙には何も書かれていなかった。


「ちょっと吾輩に見せるのじゃ」


 オレは邪神ちゃんに紙切れを渡す。


「なになに『拝啓、お元気ですか。ずいぶん楽しそうな事をしてらっしゃいますね。しかしハルマゲドンは頂けません、私の目も覚めてしまったではありませんか。しかも中途半端にやめてしまって…私の仕事ご存知ですか?ハルマゲドン後の再創設ですよ?私が目覚めるときは世界が終わったとき、なのにこんな中途半端な状況にしてしまって…なので、責任を取ってもらいます。ネイリスという女性の種子に私の魂を宿らせます。早急にぱこぱこするように』」


 オレはネイリスさんを見やる。

 あっ、なんか今目が光ったような…

 さらにもう一枚空中に紙切れが。


「なになに『よう、俺を差し置いて人間界を蹂躙とはやってくれるな。こうなったら俺も3度目の転生だ。そこのティアラース、よろしく頼むぜ!』」


 …神様って暇なのだろうか?


「女神様これはもしかして、今ならわたくし達もジョフィの子供を…」

「まあ、本物の神様がそう言ってるんにゃから、たぶん大丈夫?」


 あっ、なんか今背筋に悪寒が。


「どこ行こうとしてるんだジョフィ」


 部屋を抜け出そうとしたオレの肩をネイリスさんがガシッと掴む。

 そして親指をぐっと立てて、


「今日は寝かさないゾ!」


 とてもいい笑顔でそう言った。

 そしてその隣でティア様が思案深そうな顔で何かを考えてブツブツ言ってらっしゃる。


「確かお父様の寝室に精力剤が…弟のルースが生まれるまでいろんな物を試してましたわね。多少古いでしょうが…わたくしの魔法を付与すれば、さらに強力に…」


 なにか恐ろしい事を言っておられる。

 オレは明日、朝日を拝むことはできるのだろうか…?

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