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吾輩はねこである。えっ、マジで!?  作者: ぬこぬっくぬこ
第四部 いい感じにまとまったんではないでしょうか?
27/41

第六章 邪神サイドも頑張っておいでです

「アッコさんあそこです!」

「はい、それでは降下します」


 オレが学院の学生寮から戻ってのんびりしていたところ、今度は孤児院の子供が公爵邸に駆け込んできた。

 なんでも子供の一人が大怪我しているらしい。

 オレはアッコさんに頼んで大急ぎで孤児院に駆けつけているところだ。

 そうして辿り着いた孤児院で、


「神よ!清き心はここにあったのだ!」


 どうしちゃったのコイツ?随分興奮されている王子様がそこにいた。大怪我してた子供は?


「あれが神の兄ちゃん?そういえばお空に映っていた人とそっくりだね」


 急いできたのでジョフィの姿のままだったのが不味かったのかな?

 そういやこの姿で街を歩くと「神よ!」って言われて縋り付かれていたこともあったか。


「それより大怪我したって子供は?」

「そ、そうだ、こちらへ、とりあえず俺が回復魔法でなんとか…でも本当に大丈夫か見ていただきたい!」


 怪我をした子供の所へ案内される。

 その子供の衣服は随分血で汚れていた。

 これは結構深い傷だったんじゃ…ヒール、いやヒールエクステントでもないと…

 子供の状態を見やる。傷は十分塞がっているようだ。念のためヒールエクステントを掛けておくか。


「やはり、まだ…」

「いや、念のために掛けなおしただけだから。あなたの魔法で十分回復していたみたいだよ」


 王子様は「そうか、良かった」と呟いて安堵の表情を見せる。

 ダンジョンでひたすら回復魔法を使わせといた甲斐があったか。


「どうやら試練は無事に達成できたようですね」

「それでは…!?」

「あんちゃんすげーな、神様と知り合いだなんて、さすが王子様だけあるや!」

「こ、こら、王子様に向かってなんて口を…」

「よいよい、今の俺は王子ではない。ただの従者だ、だから今までどおりで構わない」


 王子様は子供達に囲まれて幸せそうにしている。

 もうこっちは大丈夫そうだな、あとはあっちの姫様だけか。

 リバウンドで元に戻らなければいいが…


◇◆◇◆◇◆◇◆


 その姫様だが、一時はほっそりしたとこまでいったのだが、やはりリバウンドでちょっと戻ってしまった。

 とはいえ、以前のように立ち上がって歩けないほどではなく、ちょとぽっちゃりって感じで十分頑張っている。

 しかし、なんというか、今まで立ち上がって歩かなかったせいか、そのー、足がー…ちょっと短くなっちゃってて、なんていうか、ドワーフ?みたいな?


 まあ、これはこれで愛嬌がある気もする。


「マリアージュ様のほっぺはふにふにでもちもちですねー」

「こそばゆいぇ」


 そんなマリア嬢にシノさんはぞっこんになられたようで、


「フィーネ様」

「なにですか?」

「つけてください」


 なにヲだよ?シノさんは自分の股を指差してそんなことを言ってくる。


「ふにふにでもちもちなマリアアージュ様をはらま「ピッー!」たい」


 何言ってんのこのお方?どこまで欲望に忠実なの?この人の清い心はどこにあるのだろうか?


「そういえば兄様より手紙が届いたぞえ。なんでも王国の診療所を再開するとか書いてるぞよ」


 王国の診療所とは神聖魔法の使える王家がその魔法を使って人々を癒す場所らしい。

 まあ、全部が全部癒せる訳じゃないのでいろいろ制限はあるらしいが。


「私もやった方がいいのかな?」

「わらちはどちらかといえば反対ぞよ。超常的力は日常的世界に持ち込むべきではないと思うのじゃ」


 その力に翻弄された姫様の言葉は重いよね。

 まあ、回復魔法を当てにされても困るしなあ。


「それと、そなたにはぜひに王国に来てもらいたいと書いてあったぞよ」


 王国に?まあ、邪神の件が片付いたらあちこち回ってみるのもいいかなぁ。

 しかし、邪神さんいったいどこで何をしていらっしゃるのやら。

 もしかして長期計画とやらで、ネイリスさんやティア嬢のいる今世紀は諦めているのかな?


◇◆◇◆◇◆◇◆


 オノレ!オノレ!オノレェエエ!

 ありったけのモンスターをつぎ込んだというのにたった二人に殲滅されるだと!?

 どういうことなのだ!


 彼奴らがそろっていては手も出ないと思い、各個撃破に切り替えたのだが…

 放った黒龍は出会いがしらに首を落とされ、ケルベロスは戦いと呼べるほどのこともなく吹き飛ばされ、ならばと迷宮にすべての悪魔族モンスターを集結させたというのにそれすら殲滅された。

 これが女神の能力なのか!?

 だが、私とて邪神様の一の配下、能力だけでいえば同じはずだ!


 私と彼奴らと何が違う!


 ―――ふぅふぅフゥ…


 全てはあの男の所為か…

 女神が異性界から救世主を召喚することを察知した邪神様は、それに対抗する為に今持てる全ての力を持って私を生み出した。

 女神が予想したどのルートを辿ろうとも、最終的には私が救世主を抹殺し世界は終局に向かうはずだったのだ。


 だが、蓋を開けてみれば、女神の自爆により救世主は召喚されず。

 瘴気は溜まりに溜まり、私が出るまでもなく目的は達成されると思えた。

 唯一気がかりなのは、女神が救世主召喚のイケニエの為に呼ばれた者だったが、女神も餌としか思ってなかったらしく、碌な力も与えられず、転生先も下等生物である猫。

 そやつがどれほど頑張ろうとも救世主の代わりになり得ようがなかった。


 なので私は溜まりに溜まった瘴気で、邪神様を真似て生命を作り出してみたのだが…まさか、OMOTENASHIなどというもので寝返られるとは!


 確かに、猫に転生したその者自体は大したことのない存在であった。

 だが、その存在が周囲に与えた影響が計り知れない。

 誰だよネイリスって!?そんな人物、女神が考えていたシナリオに居なかったぞぉ!

 何だよルーンウルフの人間化とか!なんでモンスターが人間側についてるのぉ!

 おい、そいつ悪役令嬢だったろぉ!なんでヒロイン役してんだよ!


 ―――ふぅふぅフゥ…


 まずい、まずいぞ!

 邪神様が眠っておられるうちにさっさと世界を掌握して、目が覚めたら邪神様の思い描く理想の世界を構築してました。という計画がパアだ!

 しかも現状、この状況を目を覚まされた邪神様が見られたら…ブルブルブル


 私は黒き水晶の中で眠っている邪神様を見やる。

 ……もう少し眠っていてもらえるよう水晶を強化しておこうかなぁ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ねえネイリス、あなた最近だらけすぎですわよ」

「そうでしょうか?」


 ネイリスがむくりとベットから起き上がります。

 そうジョフィのベットから。

 結婚式以降、ネイリスは館に帰ってくるとすぐにジョフィのベットに飛び込んで、布団を抱きしめもふもふするようになりました。

 それはまるで、大きな犬がマーキングをしているかのようで…


「とりあえず本日のマーキングはこれくらいにしときましょうか」


 この子、自分でマーキングっていいやがりましたわよ。

 まあ、わたくしも夜中にこっそりと、間違った振りしてジョフィの布団に潜り込んで…こほん。


「クルーカ、いや、クルーカさん」

「なんだ?」

「そろそろ夜中の見張りは俺だけでいいと思うんだ!」

「…殿から、お前を殿の布団に入れるなとお達しがだな」

「そんな…」


 それにしても部屋が狭くなってきましたわね。一つの部屋に6人は詰めすぎですわね。


「夜の見張りはクルーカだけもいいかもしれないなぁ」

「えっ、ちょっと待って、こいつ男ですよ?普通逆じゃね?」

「最近、クロエの方が身の危険を感じるような気がするからなあ」


 ちょっと目を離すとジョフィに引っ付いていますからねこの子。

 わたくしもネイリスやクロエのようにもっとアピールしないとダメでしょうか?

 第3夫人のこの身としては、なんとか子供は真っ先に授かりたいのですが。

 何か策を弄さねば…


「うっ、ぶるぶるぶる、なんか寒気が?」

「まあそれは兎も角、話を最初に戻しますが、ネイリス、あなた鍛錬もさぼっているようですわね」

「ジョフィが一緒に来てくれたら行く!」


 散歩を強請っている犬じゃないのですから…まあ、そいうことでしたら、早速策を練らせて頂きますわ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ネイリス、身が入ってないぞ」

「い、いやしかし!あれはやりすぎではないですか!」

「鍛錬中に余所見とはたるんどるぞ!」


 ティア様より本日の鍛錬は特別な訓練を行うと言われた。

 その内容は…


「どうこの猫耳?わたくしも変身魔法覚えましたのよ」

「だからといって猫耳娘にならなくとも」

「そんなこといって、女神様からお聞きしましたよ、なんでもジョフィは猫耳属性とか。ほら、にゃん、すりすり」

「グハッ!破壊力は抜群だ」


 ティア様がジョフィの膝の上にのって腕を首にからませている。

 あっぁっ、そんなに顔を近づけて!

 あっ、頬にキスを!


 なんでも私が戦闘中にジョフィに気をとられないようにする訓練だとか。

 以前の共和国の神剣殿との戦闘で、優位に進めていたのにジョフィが狙われたとたんがたがたに崩れてしまった。

 今後ともジョフィは私達のアキレス腱となりうる。

 なのでジョフィに気を囚われず戦闘を継続できる訓練を行うだとか。


 くっ、なんと過酷な訓練なのだ!

 私もジョフィにすりすりしたい!はぐはぐしたい!いっそがぶりと!


「うっ、ぶるぶるぶる、なんか寒気が?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほんとに今日はどうしたのですか?」


 やけにティア嬢が体を密着させてくる。


「ちょっとした実験ですのよ?」


 そう言って悪戯っぽい笑顔を湛えてしがみついてくる。

 そんなオレ達にネイリスさんは気が気でないもよう。

 ティア嬢はしがみ付きながらそっと耳打ちしてくる。


「ほら、ちょっとネイリスはあなたに執着しすぎでしょ?もう少し心を鍛えませんとね」


 さすがにやりすぎだとは思うんですが。

 こんなので心が鍛えられるのだろうか?

 ティア嬢は「ふふふ、役得ですわね」とか言ってるし。


 それにそんなに密着されると…理性が持ちません!しかたないフィーネの姿に…ん?変身できないぞ。猫にも戻れない?


「ふふふ、上位変身魔法は自分だけではなく他の人も変身させることができますのよ」


 なるほど、ティア嬢の魔法によってオレの姿が固定されていると。

 そういやもともとはアホ猫の変身魔法により人間にされたんだっけ。

 しかし、さすがティア嬢、こんな短期間で…いつかあのアホ猫の地位が奪われなければいいが。

 つーかコレヤバクネ?夜中にジョフィに固定されたら理性が持たないかも…


「ネイリス、最近のお前は天狗になっておるぞ」

「ど、どういうことですか?」

「力に溺れ、技を磨く事を忘れておる。そうだな、ネイリスよ全ての必殺技を許可する、このセイジョウに一太刀でも浴びせてみよ!」


 えっ、何言ってるの、危ないですよ!


「案ずることはない、ここにはティアお嬢もジョフィも居る、回復要員は充実しておろう」

「いや、しかし…」

「拙僧に一太刀でも浴びせることができれば、そこのジョフィに、すりすりもはぐはぐも許してやろう」

「それは誠ですか!?」


 ちょっ、はぐはぐとかなに?オレ食べられるの?

 つーか何勝手に決めてるのぉ!?

 ネイリスさんもそんなことで本気だしちゃダメですよ!


「セイジョウ殿…お覚悟!」


 本気だ…どうしようさすがに真っ二つになるとどうしようもないと思うのだが。

 だが、オレの予想に反して、


「あたらない…だとぉ!?」


 ネイリスさんの必殺技はことごとく剣心さんにかわされていた。


「ネイリスよ、世の中には名言があってな、どんな必殺技であろうとも『当たらなければどうということはない』のだ」


 その名言、こっちの世界にもあるのね。


「お前の攻撃は見切りやすい。初見の奴ならばそれでも問題はなかろうが、一度対戦した相手に二度は通用しない戦いだ」


 ネイリスさんの攻撃は直線的なものが多い。

 銃ですら射線上にいなければ当たることはない。

 この世界の住人はその銃を超える魔法をかいくぐる達人だっている。

 直線的な戦いだけでは勝てないということか。


「くっ、ならば私もクルーカと同じように全方位攻撃できる必殺技を!」


 えっ、やめてよそんな危険なもの!


「バカモノ!必殺技に頼りすぎだと言ってることが分からぬか。それにお前の持ち味はその直線的な攻撃であろう」

「えっ、でも直線的な攻撃では当たらないのでは?」

「当たらなければ当たるようになるまで努力をすればよい。当たらなければ当たるような状況を作り出せばよい。お前の直線的な攻撃は力だ、ならばそれを当てれる技を磨け」

「なるほど『当たらないのなら当たるようにするまでだ』そういうことですね!」


 脳筋連中の言葉は意味が分からない。当たらないから当たらない訳であって…まあでも脳筋なお方はそれで実現できたりするからなあ。


「よし、もう一本行くぞ!」

「ハッ!」


「えいっ!」

「うわっ、ティア様!?」


 その瞬間ティア嬢がオレの正面から抱きついてハグしてきた。


「あっ」

「ネイリス、一本だぞ…当てるのと同じように、ジョフィに気をとられるというのなら、気をとられないようになるまで努力せねばな」

「そんなぁ…」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 まずい!まずいぞぉお!

 力だけでなく技術まで磨いておる!

 このままでは女神サイドとの差がひらく一方だ!

 なんとか、なんとかせねば!


 とりあえず水晶の強化でも…いやちがう!そんなことをしても時間稼ぎにしかならぬ!

 なんとか一発逆転の…そうだ!あるぞ、ひとつだけ!

 きゃつらの中心はあの猫人間。あやつをこちらへ取り込めば…あの戦力がすべて我が物とならぬか?


 これは…良いな!今日の私は冴えておる!

 しかし、どうやって攫えばよいか…なんとか一人にならぬものかのう。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「なあ、良かったのか?ビッツやリンまで」

「にゃ?」


 以前行った合コンなんだが、共和国のトップのお方がはまってしまったようで、もう毎日次の催促がきて困っていた。

 仕方がないので再度セッティングを行う事になったのだが、ご指名のビッツが猛反対。

 そこで神聖魔法をだしにして、受けてくれれば使えるようにすると。

 ビッツだけじゃ不公平なのでリンにも授けることに。

 王国の王子様に続き神聖魔法のバーゲンセールでござる。


「気にすることないのにゃ!なんせあちきの女神パワーは今じゃほとんどが宙にういた状態。いくら授けても痛くも痒くもないのニャ」


 なるほど、猫になって使えない分の女神パワーを回してる訳か。

 でもそれ、女神に戻ったとき困らないか?


「生きてるって素晴らしいのニャ!」


 女神に戻る気はないと?まあ、お前がいいならいいけどさあ。


「クルーカ、ついでにお前も貰っておくか?」

「はっ、是非にお願い致します!」

「殿、俺にもお願い致します!」


 クロエ、お前はもう持ってるだろ?


「殿と一緒がいいです!殿と同じ物がいいです!とのぉお!」

「分かったからしがみ付いてくんな!」


 ネイリスさんも対抗して抱きついてこないで下さい。

 そんな豊満なもので抱きつかれるとオレの理性が持ちません。


「ネイリス…」

「ハッ!」


 ティア嬢の凍えるような声にネイリスさんがずさっと後ずさる。

 やべぇ、オレがネイリスさんの胸みてたのバレたかも。

 ティア嬢はオレが誰かの胸に目が行くと凍気を迸らせてくる。

 どうしてもそれだけは許せないらしい。


「くっ、わたくしだって、こうよせて上げれば、よせて…よせるものがない…」


 やめてください、こっちまで切なくなってきます。


「気にすることないのニャ!胸なんて脂肪の塊ニャ!子供が出来れば自然と大きくなるものニャ!」


 まあ、猫は普段胸があんまふくらんでないからなあ。子供が出来たときだけか?


「子供…子供ですか…」


 あっ、なんかやな予感。

 子作りは卒業してからですよ?まだ1年以上ありますよ?


「たしか飛び級の制度が…」

「そんな裏技は認めません!」


 学院は勉強するだけのところじゃないんですよ?ちゃんと3年間通いましょう。


「まあ、飛び級は兎も角、出産後のことも考えるとそろそろ準備しなくていけませんね」


 なんの準備?


「マイホームを作りましょう!」

「えっ!?」


 作るってどうやって?オレそんな大金持ってないっすよ?


「お金のことなら心配ありませんわ、わたくしに妙案がありますの。少しこれを見てください」


 そう言ってペンダントを見せてくる。

 その図柄は…猫?


「かわいいでしょ?これを我がアフローティア公爵家の家紋としようと思いますの」

「うむ、にゃかにゃかのできなのニャ!」

「これに魔法を付与させて売りにだそうと思いますの。ただ、単にリジェネイトだけだとインパクトに掛けるから…」


 ティア嬢の話では、ペンダントを2層形式にし、一つにリジェネイトで自動回復、もう一つにリカバーを付与して病気予防にも使えるようにするとか。

 それを特別な王侯貴族に高値で売りつけようと。

 すでに皇帝閣下、王国の王様、共和国の元首から予約を取り付けてるとか。イツノマニー。


「誰も彼もフィーネの名前をだすと一発ですわ」


 フィーネの名前ってそんなに広まっているの?

 皇帝閣下は…目治したか。王国の王様は…王子様とお姫様の件かな?共和国の元首は…合コンだろうなあ。

 フィーネって以外と交友関係が広いなー。そろそろフィーネに化けるのもやばくなってきたか?

 いつぞやのイケメン顔、どんなだったかなぁ。


「イケメンに変身はさせないのニャ!」


 オノレ。


「ブサメンも禁止ですよ。ルーンウルフどもが盛りますから」


 はい。


「場所は…どうしましょうか。最低でもこの公爵邸の3倍は欲しいですわね」


 どうすんのよその広さ。管理できる広さにしましょうよ。


「高いところがいいニャ!お花畑でいっぱにするにゃ!」


 高いところってなんだよ?帝都の地面に高いも低いもないぞ。


「高いところですか…以前ピクニックに出かけた丘とか…しかし帝都から離れてしまいますわね」

「にゃ!?そこがいいにゃ!」

「無茶言うなや、毎日山登りなんてまっぴらごめんだぞ」


 あんたらは補助魔法でも掛ければ問題ないかもしれないが、オレは碌な補助魔法が使えないんだぞ。


「そこはあれなのニャ、えーと、なんだっけ、ろーぷうぇーとか?」

「ロープウェイか?いやでも、そんなものこの世界にあるのか?」


「作ればいいのにゃ!ミスリルで編んだ鋼糸でロープを張って、ゴンドラから魔力を流せば動くようにするのにゃ!」

「なるほど、今日のお前は冴えてるな!」

「にゃ!あちきはいつも冴えてるのニャ!」


 いや待てよ、魔力がないオレじゃ動かせないんじゃ…


「運転手を雇えばいいのニャ!」

「なるほど、今日のお前は神懸かってるな!」

「にゃ!あちきはそもそも神様だニャ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ろーぷうぇーとはなんですか?」


 オレはティア嬢にロープウェイの原理を説明する。

 ロープウェイとはあれだ、山の天辺から下までロープを張って、そのロープから吊るしたゴンドラを上下に引く。

 ぐるっと回して、上り下りの2つのゴンドラをつければつるべの要領であまり力も要らないはず。


「なるほど…ミスリルのロープですか…費用はかかるでしょうが、いや、それを事業として…」


 なんかティア嬢が考え込みだした。


「それは平地では動かないのですか?」

「うーん、まあそれなりの動力があれば?」


 確かどっかの国で電車の代わりにロープウェイを張ってるとこがあったっけか?


「試してみる価値はありそうですわね」


 ティア嬢はそう言って部屋を出て行った。

 大丈夫かあれ?もしかして余計な事を説明してしまったのではなかろうか?


◇◆◇◆◇◆◇◆


「本邦初公開!いよいよ本日、謎のロープの使用用途があきらに!?」


 ほんと口は災いの元だな。

 あれから3ヶ月、ロープウェイの作成につぎ込まれた。

 オレに聞かれても詳しい構成は知らないっすよ。

 とはいえ、ロープウェイを知ってるのはオレだけなので設計やら何やらと四六時中質問攻めで、どこのブラック企業かと思うぐらいの重労働であった。

 しかも時期は冬場、猫のこの身には寒さが応えるのですよぉ。


 言いだしっぺのアホ猫は暖炉の前で動かないし。

 まあ、あいつが動かないほうがいいかもしれないが。

 とりあえずお試しで学院と公爵邸をロープウェイで繋いでみた。


「それでは動かしますよ!」

「ワクワクだなジョフィ!」

「そうですね」


 ティア嬢が運転席から魔力を流す。

 すると黒いベールから徐々にゴンドラが姿を現す。


「おおっ、動いたなコレ!なかなかの景色じゃねえか!」

「おいフェン介、そこは乗るところじゃないそ」


 フェン介がゴンドラの屋根に乗ってあたりを見回している。

 そんなとこに乗ってると危ないぞ。

 まあ奴なら落ちても死ぬことはないだろうが。


「自分で飛ばないっていうのも楽でいいですねー」


 アッコさんがひょいっとゴンドラの屋根に腰掛ける。

 今回は試験運転の為に乗車してる人はティア嬢のみ。

 フェン介とアッコさんが万が一に備えてゴンドラに張り付いている。


「にゃにゃ!あちきも乗ってみたいのニャ!早く乗せるのにゃ!」

「とりあえず学院に着いてからな」


 と、学院に向かおうとしたのだが、


「すげー!なんだアレ、宙に浮いてるぞ!」

「帝都の魔法はあそこまで進んだんだ!」

「おおおっ、こりゃたまげたべー」


 街中の人が溢れかえって前に進めません。

 こりゃここで戻って来るのを待ってた方がいいな。


「あれにゃ!あのロープの上を歩いていけばいいのニャ!」

「いやだって危ないだろ?」

「あちきとダーリンだけなら猫になって行けば問題ないのにゃ!」


 そういうと猫耳娘は猫に戻った。

 仕方がないなあ、オレも猫に戻るか。


 ―――ヒョォォオオ


 怖えぇええ。これ怖いよ!落ちたら死ぬよね?

 ロープウェイ、屋根の上を越える高さにしてるもんでけっこう高い。

 最初はアホ猫がひょいひょい歩いて行くんでそれについて行ってたのだが、ふと下を見ると…


 恐怖で足がすくんで動けなくなりました☆

 ひえー、マジこえぇえ、おい、置いてくなよ!

 アホ猫はすたすたと一人で歩いていく。待てってばよ!


 いかん、これはもう戻るしか!

 オレは後ずさりしようとしたところ後ろ足を踏み外してしまう。

 うぉぉおおお!おちるぅ!


 なんとかかじろうて復帰したが、ガクガク震えて動けません☆

 いかん!誰か助けてぇ!クルーカー!クロエー!

 さすがの二人もロープウェイに気をとられているらしくオレに気づいてくれない。


 うぉっ!カラスが飛んできた!やめろ!突っつくな!

 ひぃ、いでえぇ、ヒール、ヒール。


「お困りのようですな、この親切な通りすがりの魔人がお助けいたしましょうか」

「ありがてえ!ぜひにお願いします!親切な通りすがりの…魔人?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 ふう、これは少々こつがいりますわね。

 魔力を流す量によってスピードが変わります。

 駅近辺はミスリルの伝導率を減らし強制的にスピードを落とす必要がありますわね。


 魔力を増幅する魔道具とかで補強すれば道中のスピードももっと上げれますか。

 それにこれは魔力さえあれば動かせれるので、今まで日の目を見ることのなかった人たちを雇えば人件費も安上がりになりそうですわ。

 魔法の才能はなくとも、魔力だけはありあまってるお方とか。

 さっそく捜しませんとね。


「ティア様お疲れですね」

「ええ、魔力を流すだけってのが結構気を使うのですわ。これだけの距離で結構消耗しましたわ」

「ふむ、このゴンドラの底をミスリルで覆い、フライの魔法を付与すればどうでしょうか?」

「なるほど、そうすればゴンドラが軽くなって動かしやすくなりますわね」


 しかし、そうなるとまた費用が…最初は運転手を多めに雇って人海戦術でもいいかもしれません。

 これから都市型ロープウェイが流行ると、運転手も大量に必要になるから最初にいっきにかき集めておきましょう。

 ゴンドラのミスリル化は事業が波にのってくれば考える方が宜しいですわね。


「あちきも!あちきも運転したいニャ!」

「ティアねえ、みーもしたいー」

「おれも、おれも!」

「はいはい、順番ですわ」


 わたくしは子供達を順番に運転席に座らせます。

 ん、そういえばジョフィが居ませんわね?


「アフローティア様、ジョフィはこちらへ来ませんでしたの?」

「にゃ?そういえば居ないニャ。むむ…?あれ?ダーリンの反応がどこにもないニャ?」

「えっ?」

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