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吾輩はねこである。えっ、マジで!?  作者: ぬこぬっくぬこ
第三部 なんだかカオスな感じになってきました。あ、最初からか。
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第六章 まあ、どっちにしろ碌な事にならないんだけどね

 とりあえず共和国に行く案は却下だな。


「その要請、無視し続けるとどうなるの?」

「さてどうかね。最悪戦争に発展するかもね」

「どっちにしろ戦争かよ!」


 つーか共和国に集まっている他の国の神徒達は狙われないのか?


「すでに知名度があるからね、襲えば逆に悪い噂が立つ。それに引き換え帝国の神徒は真偽も定かで無いからね」


 なるほど。


「よし、共和国に集まってる神徒を呼ぼう」

「えっ、それは無理だよ。神徒はみな特定の宗派に属している、宗教を認めない帝国では原則受け入れないことになっているんだよ」

「少しぐらい例外があってもいいんじゃない?」


 おおっぴらでなく、こっそり連れて来るとか。一時的に還俗して宗教を抜けてもらうとか。ふむ、


「留学って宗教に属してる人はどういう扱いになるのか」


 そう、たとえばこの学院に留学生として来てもらったり。


「そうか学生か…どうだろ、身分上は問題がなくなる気がする。実際、他国の宗派に属している者でも留学生は少なからず受け入れている。ここの寄宿舎に軟禁のような状況になるかも知れないが…」


 一週間程の短期留学とかにすればサッと来てサッと帰れるのではないか。

 問題はサッとオレ達を見たときの反応だが、猫耳娘が女神ってバレるのかな。いやどうだろ、これだしな…

 まあ、少なくともオレを女神だと思うことはないだろう。…コイツがいらんことしない限りは。


「おいお前、そいつらが来たら大人しくしてろよ」

「にゃ!?あちきはいつも大人しいのニャ!」


 ああ、今回も駄目な気がする。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「大将、邪神の件は伝えなくても良かったので?」

「女神がいいと言うのだから良いのだろう。いいか、やぶへびって諺があるだろう、あれはやぶをつつくから蛇が出てくるのだ。よってつつかない限り蛇は出てこん」

「それは暴論と言うんとちゃいまっか」


「無論、備えはするがな。ちょうど王子が良さそうな提案を持って来たのだ」

「あっ、また悪そうな顔しておりまんなあ…」


◇◆◇◆◇◆◇◆



「先頭を切って歩いている背の高いのがあちきの神徒みたいだにゃ」


 あれから暫く経って、例の神徒達がこの学院にやって来た。ぞろぞろとお供を連れて。

 オレ達は2階の教室の窓からこっちに歩いて来てる神徒達を見やる。


「あとは…最後尾の…あのデ「オブラートに包めよ」が多分、祖先が神様って奴みたいニャ」


 と言うことは王国の王族か。自分では歩けないのか御輿に乗っている。いや、きっと御輿に乗ってるからふとましく見えてるのだ。立ち上がれば…立ち上がれんのかアレ?

 行列の最後尾には御輿にかつがれたジオ○グのようなお方が。


「あの一番左の黒いのもそうニャ」

「えっ、今日来る神徒は2名のはずだけど」


 王子が猫耳娘に問いかける。


「うーん、あれじゃないかな。留学がイヤで別の神徒の従者のフリをしてるとか?ほら見た目もいかにもなかっこだし」


 魔術の天才君はそう答える。

 猫耳娘が指差した一番左の子は真っ黒なドレス風。他の神徒の様に儀式的な服装ではない。


「さすがに2年も神徒が国を空けるのはきついだろうしね」

「えっ、2年?」


 なんでも今回の留学話、皇帝が2年間こっちの学院に在籍させるって条件を突きつけたらしい。

 一国に神徒が集中するこの状況、生かさない訳にはいかないらしい。


「むむ、あの黒いの、誓約の術式が刻まれているにゃ」

「…そうか、なら共和国のかもしれない。あそこもなんだかんだ言って信仰が薄いからね」


 誓約の術式?


「2者による互いの行動を制限する契約の魔法だよ。…主に奴隷契約に使われる」


 王子が説明してくれるには、2者間で互いの行動を制限できる誓約の魔法なのだが、使いようによっては一方的な誓約になるとか。

 誓約には双方が納得し契約を結ぶことになるが…片方が奴隷でいいと納得、片方が主となると納得。ようは、強制的に納得させてもおk。

 これにより、主の言うことを聞かないと君死ぬよ。みたいな契約でも、双方が納得して結べば成立する。その為、奴隷契約などに用いられることが多いとか。


「あそこは以前、多数決で神徒の人権を無視して働かせるべきって決定が出たからねえ。過労でその神徒が亡くなった後は多少はマシになったようだけど」

「神徒って神様の遣いだろ?そんなバチ当たりなこと…つーか、加護を授けた神様に怒られ…」


 そこまで言ってふと隣の猫耳娘を見やる。…そういや、神様ってこんな感じだったな。きっと加護与えた後は放置に違いない。


「にゃ!?あちきはちゃんと見守ってたニャ!…百年に一回くらいは」


 100年も生きてる奴は珍しいと思うのだが。


「つーか共和国、奴隷オッケーなの?」

「無論禁止されているよ。だが良く言うだろ『バレなきゃおk』と」

「ひどいな!」


 しかし、迂闊にこっちから出向かなくて良かったよ。下手すりゃ明日のわが身だったカモシレナイ。


「まあ、誓約の内容が必ずしも奴隷契約のような内容とは限らない。仮に奴隷契約のような内容でもぴんからきりまであるしね。たとえば許可無く国外に出ないとか」


 そんなことをやらかす連中が、そんなゆるい内容にするとは思えないけどなあ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「おお、君達3人が帝国の神徒なのか!これはこれは…なかなかの取り揃えで…ジュル・アダダダ」

「シノ様、お分かりですよね?」

「う、うむ、分かっているとも!」


 3人の神徒の内の一人、背の高い美貌の女性は、愛の女神アフローティアを奉る教会の聖本殿から来たとか。

 名前はシノリス・エン・アフローティア。教会の人たちは名・姓・主奉する神の名をつけるらしい。

 しかし、なんかオレ達を見る目がギラついているのだが。嫌な予感がひしひしとする。


「あっ、わらちのお菓子を返してたもれ」

「姫様、今は挨拶の場でございます。少しの間ご辛抱をお願いします」

「どうせわらちのことなんか気にする者はおりゃせんの。紹介はそちにまかすのじゃ」


 気になるよ!なんていうか、すげーお方だ。主に横の幅が…

 今までずっと何かを口に入れてバリボリ言わしている。休むまもなく食い続けるとかどんな特技だよ。呪われてないか?

 このお方はやはり、祖先が神様って言う国のお姫様だった。

 名はマリアージュ。今回の留学にあたり、王家として扱うことをしないという意味で姓は名乗らないんだと。


 従者の人はだいぶオブラートに包んで言ってるが、ようは、体のいい厄介払いみたいだ。

 せっかく回復魔法の力を持って生まれて来たのに、それを使おうとせず、ただひたすら怠惰に日々を過ごしているとか。

 今までの神徒はその力を持って人々を癒していたのに、今回のお方はまったく我々を見ようとしないと、国民にも不満が溜まっていたところにこの話。

 2年でも3年でもどうぞどうぞみたいなことを言っている。


 肝心の姫様はそれを聞いてもどこ吹く風よとお菓子をバリバリ食べておられる。

 従者の人はそれを見てため息をつく。

 だけど…たしか過食症ってストレスからくるんだよな。なんとなく気になるな。


 そして最後の真っ黒ずめの神徒のお方だが、


「私はお二人の護衛です。特に名乗るほどの者ではありません」


 ひたすらオレをガン見してくるので、名前を聞いたのだが袖にされました。

 なんでだろう、部屋に入るなりずっとこっちを凝視してくる。オレなんかやったっけ?


 やっぱり神徒というのは隠しておくつもりらしい。何を聞いても存じませんの一点張りだ。


「さて、互いに名乗りを上げましたが、まだ実力の程は分かりますまい。我々としても帰る前に帝国の神徒様たちの力を見ておきたいのですが」


 あちらを取り纏めている男性がそう言って来た。


「とはいえ回復魔法、誰も傷を負っていない現状では使うすべもありますまい。どうですか、我らの護衛とそちらの護衛で戦闘訓練などは」

「ほう、それは良いな。天剣対神剣か、これは見ものだ」


 皇帝がそう言う。どうやら向こうの護衛の方もかなり有名な人がいるらしい。なんでも世界一の実力だと自称しているとか。


「そう言うことでしたら、団体戦とかどうでおますか。神徒を含めたチームどうして模擬戦してみましょ。いやー回復魔法があればまた違う戦いもできまっせ」


 皇帝の護衛の人がオレを見ながらそう言う。未だに根に持っているのだろうか。

 この人前に一人で公爵家に乗り込んで来たんだよね。そんでチカンと間違って皆で袋叩きに。

 でも無断で部屋に入って来て連れ去ろうとした方が悪いよね?おかげでオレの部屋ぼろぼろになったんだし。


「一対一でどちららが強いか分かる絶好の場だと思うが?」

「そういうのは答えがないからいいんでおまっしょ。それにこんな場で決めることでもないでっしゃ」

「まあ、お前がそう言うなら仕方ないか。そちらはどうだ」


 そして話し合いの結果、3対3での団体戦をすることになった。


「む、なぜ天剣が下がっておる」


 学院の闘技場へついて互いに選手が前に出て来たときあちらさんの代表がそう言ってきた。

 向こうは神剣と呼ばれる、世界最高クラスの剣士、それに聖教会の神徒でありこれまた世界最高と言われる回復魔法の使い手。最後に例の真っ黒介な神徒の子。

 対してこちらは、ネイリスさん、ティア嬢、オレの3名。


「いやーわてが相手するまでもないでっしょ」

「なんだと!」


 ちょっと、挑発はよして下さい。


「その3名で十分でっしゃ」そう言ってボソッと「ワテでも危ないし」と向こうに聞こえないように付け加えていた。


「ふっ、よほど手の内を知られたくないと見える。まあいい、3人同時に実力を見れるしな。少しばかり揉んでやるか」


 そう言って剣を構える神剣さん。


「ネイリス、どうやら向こうは手を抜いてくれるそうですね」


 うぉっ、ティア嬢の氷の殺気がハンパない。


「あなたの実力を見せて差し上げなさい」

「しかし…女神様から頂いた必殺技、どれもこれも人に向けて撃っちゃダメみたな物ばかりなのですが」

「それは困りましたね…仕方有りません、程ほどに実力を見せてあげなさい」


 二人ともだから挑発は止めて下さい。ほら向こうのお方、こめかみがピクピクシテマスヨ。

 あとちゃんとオレを守ってください。あっちの黒いの絶対オレ狙ってきますから。

 ずっとこっちを見ている。多分開始と同時に魔法を撃つつもりだ。オレ、何をそんなに憎まれるようなことをしたのだろうか。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 戦闘が始まった、やはり黒いのはオレに向かって真っ先に魔法を撃ってきた。炎の槍がオレを貫く。

 しかし、その槍はオレを突き抜けて遥か後方へ過ぎ去って行った。

 ふっふっふ、驚いている、驚いているな!

 そう変身魔法は幻影魔法の上位版、イリュージョン・コネクト。で、こっからコネクトを除けると、ただのイリュージョンになる訳で。


 オレは猫の姿のまま、フィーネを立体投影させているのだった。


 そして驚いている黒いのに向かって、前にアッコさんがやってた多重ヒートレイルを御見舞いするティア嬢。

 一斉に熱戦が黒いのに向かう。


『セイントバリア!』


 後方の聖教会の神徒がバリアを張る。さてこれで二人は足止めだ。間断なく降り注ぐ熱戦に二人は身動きできずに居る。

 オレはネイリスさんに自動回復の魔法を付与する。

 さすがに必殺技無しだといいようにやられている。なんとか攻撃を受け止めてはいるが、あちこち傷だらけだ。


「回復にまかせて力押しとは…そんなものでは上達はせんぞ!」


 おっしゃるとおりだ。ネイリスさんは髪飾り・ペンダント・オレのリジェネイトと3つの自動回復でごり押しの戦法を取っている。

 たしかに訓練でこんな方法を取れば上達はしないよね。でもね、これ訓練じゃないんだよ。

 どちらが強いかを見せ付ける場で、全ての技術を持って当たるのは当然のことじゃないか。

 回復の魔法があるなら、その回復魔法を扱いきって戦うべき。


「今の私では小手先の技術ではあなた様には傷一つ付けれますまい。ならば、こうするのが最良の手段。それに私は仲間を信じておりますから!」


 そう言いさらに前に出るネイリスさん。男前です!


「くっ、前途ある若者を傷つけるのは忍びないが…こうでもせんと止まらぬな」


 その瞬間、ネイリスさんの剣が跳ね上げられる、そして袈裟懸けに一閃。


『ヒールエクステント!』


 だが、その傷は一瞬にして元通り、逆に攻撃の硬直の隙にネイリスさんが一閃を決める。


「くっ、なんだと!」


 今までならそれで終わっていたのだろう。だが、この戦いでは回復要員が居る、命尽きぬ限り止まることはない。

 そして相手の回復要員は足止め中。

 さらに驚愕中にここぞとばかりに切り込むネイリスさん。


 徐々に傷を増やし精細を欠いていく神剣さん。それに対し、傷一つ無いネイリスさん。

 ヒットポイントが1000の相手に対し、こっちが100しかなくても、プラス100のえむぺーで、100回回復できれば総合10000だ。勝てない訳が無い。


「大将、あれでっせ。わてがやられたのも理解できっしょ」

「ひゃはっは、これは楽しいのぉ、天下の神剣が小娘にいいようにやられとるわ!…お前、あーなるのがイヤで出なかったな?」

「な、なんのことでっしゃろ?」


 さて、向こうはどうするのか。あっちの黒いのなら手が空いているから回復魔法を掛けれるだろうが。

 そうすると神徒ってバレるしな。

 と、突然ティア嬢のヒートレイルを突っ切ってこっちに駆けて来た!


 数を増やすため、威力を落としていたのがバレたようだ。

 そのままオレに向かって来て掴みかかってくる。


「フィーネ!」


 慌ててティア嬢が動き出すが間に合わない。

 そのままオレの体を素通りして…やべえ、幻影魔法ってばれたか?

 素通りした黒いのはよほど驚いたのかそのまま硬直している。


「キャッ!」


 ティア嬢の悲鳴!見ると、ティア嬢が神剣さんに取り押さえられている。

 ネイリスさんは…向こうで気絶している。押していたんじゃ?

 オレはゆっくりと両手を挙げ、


「降参します…」


 そう答えるのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「それでどうなのだ。帝国の神徒は」

「…あきらかに人間でないものが一人」

「ほう」


 ああ、あれは人間じゃねえ。ましてやモンスターでもありえない。

 なにせ、生きとし全ての者が纏う、魔力が一切感じられない。

 あえて例えるならば死人だ。生きてるもんじゃない。


「ということは本当に女神か?確かにあの回復魔法、凄まじかった。そして魔法や物が素通りする体…あんな魔法聞いたことない」


 女神…女神だと!?なんだよそれ!そんなもんがいる訳無いだろが!

 女神がいるんだったなぜ、どうして俺がこんな目にあってんだよ!

 俺は神様の神徒なんだろ?だったら本当に神様って奴がいるなら、こんな状況ほおっておくはずがない!


 俺は物心ついたときには孤児院に居た。

 神徒を捨てるなんてどんな親だよ、と、周りの奴は言うが、当時は回復魔法なんて使い方を知らなかったから当然だ。

 俺は女の癖に男より素早く力も強かった。今思えば、知らずと魔法を使っていたのかもしれない。


 そんな俺は知らず院で孤児達を束ねる立場になっていった。

 ある日、孤児の一人がぼろぼろになって担ぎ込まれた。

 どうやら街の有力者の一人に泥を引っ掛けてしまったらしい。


 奴らは人前ではにこにこしている善人だ。そのまま逃げてしまえば何事も無かったのだが、食事を奢ってくれるとの甘言にのこのこと付いて行ったらしい。

 そうしたら…あいつらは知っている、俺達がどんだけ声を上げようが周りの連中は聞いてくれやしないと。

 むしろ、あまり言いふらすとこっちが危ない。


 俺はぼろぼろになったそいつの手をしっかりと握る。そいつは俺の言いつけを守らなかったことをしきりに謝っていた。

 そのとき俺は初めて神に祈った。そしたら奇跡が起きた、そいつの体の傷が徐々に癒え始めたんだ。

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