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吾輩はねこである。えっ、マジで!?  作者: ぬこぬっくぬこ
第二部 えっ、マジで!?はねこになった事に対してとは言っていない(人それを屁理屈と言う)
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第四章 チカン、ダメ、ゼッタイ

「姫、お着替えお持ちしました」

「…なんで居るのお前?」


 翌朝、目が覚めると部屋の中にクルーカが居た。もう一度言おう、クルーカが、部屋の『中』に居た。


「公爵閣下より、姫の身の回りの世話をする役目をありがたく頂戴いたした次第」


 あのくそ親父、なんでそんなこと勝手に決めてんのぉ?

 いやでもお前、それでもレディの部屋に無断で入るのはどうか?


「そのレディ、いい加減前隠すのにゃ」


 おお、そういや素っ裸だったか。

 どうりで跪いて俯いたまま服を差し出してくると。

 寝てるときは服は着ない、なんとなく猫に戻れた気がしてぐっすり眠れるのだ。


 とりあえずオレはクルーカの用意した服に着替え、


「それじゃあ、近くの交番にでも行こか?」


 そう言うのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「よう、あんちゃんやるねえ。あんなべっぴんさんの部屋に忍び込んで観音さん拝んだんだってねぇ」


 なぜだ?某は今、衛兵の尋問を受けている。なにか落ち度でもあったのだろうか?


 某は見つけたのだ、生涯を掛けてお使えするべき人物を。

 このような所で時間を無駄にする訳にいかない。

 すぐにでも姫のお元へ赴かねば。


「ちょっ、ちょっとあんちゃん!まだお話は終わってねえべよ」


 某は公爵家の家紋を見せる。


「これは!ハッ、本官は何も聞いておりません!どうぞお行き下さい!」

「うむ、邪魔したな…」


 ―――ゴスッ


「何お前、権力振りかざして逃げようとしてるの?」

「おおっ、姫、今お元へ向かおうとしてるとこでした」

「話が通じねえ」


 姫はお美しく在らせられる。某はその足元に跪くのだった。


 昨日、頭に血が上った某は無謀にも敵に突っ込んでしまった。

 ジョフィと言ったか、短い間だったか、ネイリスと仲睦まじく見ていて幸せになる奴だった。

 それが某の力及ばずかの者に…


 降り立った悪魔族の女は無防備だった。

 首さえ刎ねれれば…そう思い一気に勝負をつけるつもりだった。

 だが、あと少しの所で間に合わず、反撃を受けてしまう。


 ―致命傷だと思った。


 傷の深さ、吹き出る血しぶき、これは助からない。こんな所で、騎士にもなれず…そんな後悔の念に囚われつつ薄れいく意識の中、某にしがみ付く人物が見えた。


 ―奇跡が起きた。某の傷が徐々に塞がる。よく見やるとそこには淡く輝く美しき姫君が居た。


 その姫は敵の再度の攻撃を身を挺して某をかばう。己の体を貫かれながらも某に覆いかぶさる。

 なんという献身的なお方だ!某の胸は姫への思いでいっぱいになった。


 ―そしてまた奇跡が!


 姫の体から光が波状となり発せられる。その光はたちまち姫と某の傷を癒し…なんと!敵の悪魔族の女まで癒してしまった。

 聞けばかの女は兄の仇であると。それにも関わらず、傷を癒し、仲間になろうと問いかける。

 なんと慈悲深いお方だ。某は思った、わが生涯はこのお方に差し上げるべきだと。


「ちょっとお巡りさん。さっさとこいつブタ箱にぶち込まないの?」

「まあまあ、減るもんじゃあるめえし。良いじゃねえべか」

「良くねえよ!」


「いけんども、公爵家の関係者じゃ、わてらじゃどないもなりませんべ」

「すまねぇお嬢ちゃん。ここは堪えてくれんか、下手したらお嬢ちゃんの身もあぶねえ」


◇◆◇◆◇◆◇◆



 どうしたものか。

 結局お巡りさんじゃどうにもならなかった。


 隣を見る、クルーカが直立不動で突っ立っている。

 こいつこれからずっと憑いて来るツモリカナ?


 そういやあのゲーム、メニューのコマンドにクルーカってボタンがあったんだよなあ。


 例えば待機中、クルーカコマンドを選択すると、すぐクルーカが出て来て、冒険に誘う・鍛錬を行う・攻略対象の位置を調べるとかのコマンドが出る。

 これって、常にそばに居て指示待ちしてるってことだったのか。


 例えば冒険中、クルーカコマンドを選択すると、突然クルーカが出て来て、敵を無双して去って行く。

 これって、常に冒険中追尾してるってことだったのか。


 例えばデート中、クルーカコマンドを選択すると、すぐクルーカが出て来て…


 やべえこれどう見てもストーカーだ!

 ゲーム中じゃ便利だなあとしか思ってなかったが。

 ちなみに、クルーカコマンド選択しまわってるとクルーカエンド確定である。なるべく頼らないようにしましょう。


「ん、なんにゃ?あちきのこと熱く見つめて。やっとあちきの魅力に気付いたにゃか?」

「クルーカ」

「ハッ!」

「あなたに一つ秘密を教えましょう。実はこの黒猫、女神の化身なのです!」


 クルーカが驚いた顔で女神猫を見つめる。


「あなたに仕事を与えます。今後この女神猫の世話をするように!」

「あっ!あちきになすりつけたにゃ!いらないにゃ!ストーカーは犯罪にゃ!」


 だってお前の設定のたまものじゃない?


「あちきは悪くないにゃ!あの設定はそうなる予想を元に作っただけにゃ!なるべくしてこうなったのにゃ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆


「フィーネ、ちょっとここを怪我してしまった。回復してくれないだろうか?」


 そう言って腕を突き出してくるネイリスさん。

 そこには、これ汚れじゃね?ってくらいのちょびっとだけついた傷が。

 相変わらず回復ジャンキーなネイリスさんである。


『ヒールエクステント!』


「なっ、一瞬だと…」


 昨日やっとうちのヒールがバージョンアップしたんですよ。長かった。


「もっとあちきを敬うにゃ。神聖魔法は信仰次第で能力が上がるにゃ」

「じゃあオレのヒールは頭打ちだな」

「にゃ!それはどういう意味にゃ!」


 ネイリスさんがオレの手を取ってくる。


「なあ、フィーネ、もっとゆっくりでいいのだぞ。べべべ、別にもっと触れていたいなどでないぞ。そうだもっと傷つけば…」


 ジャンキー度合いが上昇中である。


「ネイリスに傷をつけるのも一苦労だな」

「セイジョウ、そのうちお前のお株を奪われるかもな」

「ハハハ、それこそ願ってもないことでござるな」


 公爵様の剣帝さん達は和気藹々とそう言っている。

 まわりに散らばる屍を後にして…


「フィ、フィーネ。ほんとにこれは必要なのかね」


 その屍となっていた王子が問いかけてくる。


「さっさと強くなって頂かないと困りますわ。世界が瘴気で覆われても良いと思いますの?あなたも見たでしょうあのダンジョンの奥を」


 皆夏休みに入ったので、時間を合わせてダンジョンに向かったのだが、2階層のバフォメットをたおした後、なんと!3階層へ続く階段が現れた。

 悪魔族のお姉さんの言うことには、今は瘴気をダンジョンの改良に充て、あそこを要塞化する予定だとか。

 そして徐々に広げ、町の下までダンジョン化し、いずれ町へ向けて瘴気を放出となる。


「確かに…瘴気か…まさか瘴気によってモンスターが誕生していたとはな」

「もし町に瘴気が溢れれば…例えば、家族団らんの一場面、突然背後にモンスターが!とかなってしまいますわよ」

「そ、そんなことが?」

「今でも、町の裏路地ではモンスターが発生することがあるでしょう?」


 王子は考え込み、


「そうだな、今まではどうやってモンスターが入り込んだのかと不思議がっていたが、その場所に発生したとなると頷ける」


 そう言う。


 そう、ダンジョンの3階層ではわんさかモンスターが誕生していたのだ。

 それを目の当たりにした王子達は大層驚いていた。


「王子、国は動かないので?」


 同じく屍となっていた剣の天才君が王子に問いかける。


「…下手に公開できないね。一応父上にはお伝えしたが、あまり相手にしていないようだ」

「どこにでもモンスターが生まれる可能性があるなんて言えないですしね。特にこれから、瘴気が身近なものとなる可能性があるならばなおのこと」

「君は女神の使いだろう、なんとかできないのか?」


 瘴気は一旦押さえることができる予定だ。ただし、あくまで一旦だ。

 ゲームでもクリア条件は瘴気の穴をすべて塞ぐだったが、その瘴気の発生原因である邪神とは一戦やらかして追い払う程度、その後の瘴気の発生には触れていない。


「その後は、あちきが適当なとこに穴あけてちょっとずつ世界にばら撒く予定だったにゃ」

「それは世界的に瘴気が増えるってことだろ?」

「それは仕方ないにゃあ。人間には住みにくい世の中になるかもにゃが、元々がその予定だったにゃから。瘴気を溜め込んでいる今が平和なだけにゃ」


 とりあえずオレは王子に、女神猫が言ったことを伝える。


「そうか、女神はそうおっしゃっていたのか。そうだな、ならば力をつけねばな」

「おっ、やる気ですね。剣心さん達、もう一周お願いします」

「いや!明日からがんばる!」


 そうは問屋が卸しませんよ王子。


 オレは無理やり回復魔法で立たせた王子達を剣心さん達に預けた後、魔法組の様子を見に向かった。

 公爵家には鍛錬場とは別に魔法封鎖エリアがある。

 その中心でなら魔法がぶっぱなし放題なのだ。


 オレの家族を全滅させたときの教訓でそれを作ったらしい。いい人達じゃないか。


「ん、何やってんだフェン介」

「ああ、皆魔力が尽きたから掃除してんだよ」


 掃除してんのは悪魔族のお姉さんだけに見受けられるが。そこにはフェン介とお姉さんの二人しかいなかった。

 と、フェン介が机の裏を指でなぞり、


「まあ、なんざますかこれは!なってない、なってないでざま・」


 ―――ゴスッ


「何みみっちいことやってんだお前?」

「いでぇえ、だってよぉ、アッコのヤロウ俺の仕事全部取っていくんだぜぇ?」


 ちなみに悪魔族のお姉さんだが、名前はアッコに決まった。もちろん名付けはネイリス嬢。

 そのアッコさんとても優秀だ。なんせ空も飛べるしな。

 素早さでも、力でも、フェン介はおされ気味だ。


「フェン介、お前はこのお姉さんの兄であるんだ。妹に嫉妬するとは何事か?」

「え?俺達兄妹なのか?」


 同じ瘴気で生まれた存在、それは兄妹と言って差し支えない。


「そうだ、良く見てみろ、ほら、なんとなく愛情が沸いて来ないか?」

「そ、そういえば、なんとなくかわいく見えるような気も?」


 単純な奴である。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「姫、ティアラース様がお召し物をお持ちになられました」


 クルーカの件だが、結局の所、女神猫に押し付けようとしても、その女神猫が基本オレと一緒に居るので何も変わらなかった。


「フィーネ起きてます?ちょっとこれを着て合わせて頂きたいのですが」

「これは?」

「学生服ですわ。2学期よりあなたも学園に通って頂きたいのです。貴族は私服でもいいのですが、平民は所定の服装が決まってますの」


 ふむ、学生服着てたのは平民の方達だったのか。


「とりあえずいくつか持って来たので合う物を選んで下さい。シュルク、ミーシア」

「はい、ティアねえ」


 フェン介の子供達だが、小学生くらいの大きさになったら成長が緩やかになって来た。

 今は小学3年生ぐらいか?

 オレは二人から制服を受け取る。


「良くできたわね」


 そう言って二人をなでるティア嬢。ちょっと甘やかしすぎではないですかね。

 二人の尻尾がブンブン丸である。

 しかし学生服か。ゲームでは王家から通うことになっていたが、まあ些細な違いだ。


「実は公爵家のペンダントの自動回復が知れ渡ってしまいましてね」


 ティア嬢の言うことには、オレが神徒だと回りに知れ渡り、王家がちゃちゃを入れて来たとのこと。

 最初はオレを王家に差し出せって話が来ていたのだが、公爵様がオレがそれを望まない限りうちで面倒見るって言ってくれたらしい。


 しかし、神徒とパイプを繋ぎたい王家は納得せず、それならせめて学院に通わせ、少しでも公爵家から遠ざけようとな。

 皇立学院に籍を置くことにより、他国への引き抜きへの牽制にもなるとか。


「あなたにも色々ありますでしょうが、公爵家では不満でしょうか?」

「いえとんでもない!ティア様やネイリス様とご一緒できて眼福…いや、大変嬉しく思いますわ!」

「それではとりあえず寸法を合わせませんとね」


 オレはクルーカを見る。

 クルーカは直立不動でこっちを見ている。


「今から着替えるんだけど?」

「おかまいなく」

「おかまいなく、じゃねーよ!さっさと出てけ!」


 オレはクルーカを蹴り飛ばす。

 しかしコイツ、ほんと堂々と痴漢するよな。ある意味感服するわ。


「いえ、クルーカにも話を聞いておいてもらいたいのでここに居て構いませんわよ」

「えっ?私裸になるんだけど?」

「使用人なら別に…気になるようでしたら、切ってしまいますか?」


 なにヲだよ!こえーよ!


「まあいいや、とりあえず後ろ向いといて」


 とりあえずクルーカにこっち見ないようにだけ指示する。


「クルーカ、今後、フィーネに邪な方達がちょっかいをかけてくると思います。あなたのすることは分かっていますよね」

「ハッ、姫には指一本触れさせません!」

「よろしい、片時も目を離すことないように」


 ちょっとティア様、そんなこと言ったらコイツ、トイレの中にまで入って来ますよ?


「フィーネ、今大丈夫だろうか。いつもの奴を頼みたいのだが」


 部屋の外からネイリスさんの声がする。


「いいですよ、どうぞ」

「うむ、失礼する。ブハッ!すまない!着替え中だったか!」


 部屋に入って来たネイリスさんが着替え中のオレを見て慌て出す。


「別に女どうしだし、そんな慌てなくてもいいのでは?」

「そ、そうだったな。フィーネは女…うん、女だったな」


 えっ!オレ女だと思われてなかったの?

 そんなバカな、オレの淑女道に隙はなかったはず?


「そう思えるダーリンの頭は節穴だらけだにゃ」


 頭が節穴ってなんだよ?


「きっとあちこちから大事何かがコボレまわ・ぎにゃー!頭がつぶれるにゃあ!」

「これフィーネ、動物をいじめちゃ駄目でしょ。ほらこっち来なさい」


 女神猫はティア嬢の腕の中に飛び込む。

 くっ、うまいとこに逃げ込みやがって。


「ネイリスさん、いつもの奴って何ですの?」

「フィーネにマッサージをしてもらっておるのです。なんでも回復魔法を併用してマッサージを行うと、筋肉質にならずにすむとか」


 回復魔法を使いながらマッサージすると、力・素早さなどはそのままに、ムキムキマンにならずに女性らしいプロポーションと柔らかさを保ったままでいられるとか。

 原理については女神猫が詳しい説明をしてくれたが、理解はできなかった。


 そういやついでに、フェン介やその子供達が普通に言葉がしゃべれてることについて聞いたのだが、どうやらモンスターは最初から多種族の言語を理解できる機能を備えているらしい。

 戦闘で敵がしゃべってる内容を理解できないと戦闘に不利になるとか。例の邪神さんが設定されたようだ。


「それはいいですわね。わたくしもお願いしましょうかしら」


 えっ、いいのですか?色んなとこ触りまくりなのですが…


 ―――幸福なひとときであった。


 いやーネイリスさんはすらっとしてても出てるとこは出てる。柔軟な筋肉がおつきです。

 ティア様はそりゃもう深層の令嬢がごとく、どこもやあらかいのですよぉ。


「…で、なんでお前までそこに居るの?」


 ネイリスさんとティア嬢のマッサージが終わった後に、クルーカもベッドに横になって順番を待って居た。

 まあ、別にいいけどさあ。

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