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02 機能把握

「…………」


 鏡を見て一頻(ひとしき)り呆けた後、今更に認識する。

 どうやら現在の私は、衣類に分類されるものを何一つ身に付けていないようだった。


 特に羞恥心を感じる訳でも無いわけだけれど、最低限の認識として、裸体を晒し続ける事を放置するわけにも行かない。

 周りの財宝を探ると、金糸で作られているらしい、やたらと輝くローブのような布きれがあったので、一先ずはそれを身に付けた。

 肌触りはさらさらとしていて、案外、意外に着心地は良いらしい。

 着心地など感じないので、特に重要でも無かったけれど。


 これでもかと言う程に派手で、重量も黄金故にそこそこの重さがあったものの、それも大した問題でもない。

 重いとすら感じない程に、この身体には膂力が備わっているようだった。


 それからざらざらと金貨の山を掻き分け、金属質な床が見える場所まで移動する内に、知識として自身の性能(スペック)が読み込まれていった。

 感覚的には脳裏に浮かぶように、パソコンのディスプレイが表示されている様な感覚。

 妙な違和感はあるものの、不自由なくそれらを理解していく。

 取り乱すことなく、自身が生き物でない事を熟知していった。


 それらの情報が簡略化され、いつでも手軽に確認できるような状態として。

 自身のスペックを脳裏(ディスプレイ)上の一つのタブに表記する。


--------------------------------------------------


識別名称:ヒトガタ=ニガタ

固有名称:果古戸(はてごと)なごと


機能状態:正常(オールグリーン)


成長段階:1


魔力残量:100

攻撃性能:100

防御性能:100

速度性能:100

許容残量:99


情報機能(データスキル):【疑似成長(ステップアップ)】【対象参照(リファレンス)


部品機能(パーツスキル):【亜空間(スペース)】【内部工場(ファクトリー)


--------------------------------------------------


 成長段階とはゲームでいう所のレベルの様な指針であり、段階が進めば進むほどにこの数字が大きい数字へと変化する。

 この身体の基礎的なスペックが上昇していく値。


 魔力残量は端的にこの身体を動かす為のエネルギーの総量。

 魔力と言う存在も、今は特に抵抗を感じることも無く、すとんと簡単に受け入れられた。


 攻撃、防御、速度の性能。

 それらが100%中どれだけ十全に発揮出来るかを表す。

 また、100の数字を基準(じぶん)として、他を推し量る指標となり、この値は比較の要素として見て取れる。

 自分の攻撃性能から、相手の防御性能。

 防御性能からは相手の攻撃性能とを対比する。

 速度はそのまま比べてどちらの方が速いかを読み取れる。


 それから今現在自分が使用可能である所の、特筆すべき機能。


 最初に情報機能(データスキル)

 今現在導入(インストール)されている機能(アプリケーション)は【疑似成長(ステップアップ)】と【対象参照(リファレンス)】の2つである。


 【疑似成長(ステップアップ)】はレベルの存在に関係し、どうやらこの身体を生身の生物と同じように成長させる機能だった。

 見た目も、それこそ人の身体との違いを、見てくれだけは誤魔化し、そしてその差を希薄にする。

 今後人と生活するような事があった時、何時までも幼女の姿のままと言うのも問題だろうので、これは僥倖な機能だろう。


 【対象参照(リファレンス)】は現在自分に対して行使している、この情報の提供元(ソース)

 指定した対象の情報を解析し、ある程度まで予測する機能。


 これで敵対する相手を参照すれば、先程の能力値の100と対比して、数値が100で対等。

 100以下であれば格下であり、100以上の物が格上と判断することが出来る。


 次に部品機能(パーツスキル)

 文字通り機能の為に用意された、機構を用いる、質量を持った機能の括り。

 これには【亜空間(スペース)】と【内部工場(ファクトリー)】の計2つの機能が分類される。


 【亜空間(スペース)】はその名の通り、身体内部に存在する、別空間を保有する機能のこと。

 人体のサイズでは到底入りきらない、膨大なまでの機構をこの別次元に内蔵する事が可能で、副次的に物品を収納する事が出来る。


 ステータスにある許容残量は、そのまま現在身体に内蔵できる、この【亜空間(スペース)】の容量を示す。


 2つ目の【内部工場(ファクトリー)】は、【亜空間(スペース)】内に簡易的な加工などを行うことのできる工場を内包している機関のことで、ここで取り込んだ素材をある程度加工する事が出来る。

 今は材料となる物が黄金位しか無いので、金のインゴットなら作れないことも無いけれど、どう考えてもそんなことをすれば価値が下がる。


 究極的には材料と時間さえあれば、理論上自分と同じ人形が作成出来ると思う。

 けれど、工場の設備も持っている魔力も、何もかもが不足している為に、現在では不可能なレベルである。


 そういう理由で、どちらにせよ今は特に使う必要事はない。


 気になることと言えば、私がヒトガタ=ニガタと言うことから、1号的な存在が居るのかも知れないということだとか、ここがどういう場所なのだろうとか、幾つかあるけれど、目下知ることが出来る情報は把握できたと思われる。


 一通りの理解を済ませ、手っ取り早く飛び込む形で、ある程度の金貨を【亜空間(スペース)】に流し込む。

 金貨1枚1枚が身体に触れると、身体に溶ける様にして収集されていき、別空間に送られていった。


 別に根こそぎ持っていく必要も無いので、適当な量の金貨を取り込み、さらに幾つかの武装を拝借させて貰う。

 表示的に言えば許容残量は2%ほど減少し、残りの容量は97%に変化した。


 1つ選んでおいた小型のナイフを左手で握り、試しにと軽く振って使い心地を確かめる。

 そこそこの重量がある材質で作られているらしいこのナイフは、何の違和感も無く使い熟せた。

 ナイフの扱い方も問題ない事を確認して、それを金糸で編まれた鞘に納める。


 外へ出る準備が出来た所で、ひたひたと足音を立てながら歩き回って探索。

 壁伝いに、この場所以外に通じる道が無いかを調べる。

 そして特に時間も掛けずに、四方の内1カ所の壁に、金貨に埋もれた扉がある事を確認できた。

 

 壁と同化した大きな扉だが、これも床と同じく金属製で、青く光る線が走っている。

 それを【対象参照(リファレンス)】を使い解析すると、これは魔力の回路であるらしい。


 仕組を片手間に観測しつつ、手のひらで扉自体に軽く触れてみる。

 すると扉は自動的にスライドするようにして、音も立てずに左右に開いた。


 扉の先に忽然と現れた通路が、視界の先に続いている。

誤字などあったら教えて下さい。


2/27 攻撃性能、防御性能、速度性能の対比についての説明を増やしました。

7/12 宝物庫の金貨などを持っていく量を控えめに変更しました。

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