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「きききっ!あいつが欲しけりゃ、おいらを倒すんだな!」
魔物はそう言って笑うと、呪文を唱え火の玉を沢山投げつけてきた。
幾つかが服を掠め、裾を焦がす。
「きききききっ!」
魔物は笑いながら、今度は魔法で尖った氷を投げつけてくる。
かわし損ねて、肩を掠め、腹に突き刺さった。
「アリョーシャ!」
「ぐっ・・・」
ジノヴィが咄嗟に回復魔法を唱えて傷を修復した。
思い切り矢を放つ。それは魔物の真横を飛んでいった。
「あ」
しっかり見据えようとしても。相手の輪郭がはっきりしない。・・・というか、視界自体が霧がかかったようにはっきりしていない。
「アリョーシャ、どうした?」
どうしたのか自分でも分からない。
できる限り狙いを定め、矢を射るが、当たった気配がしない。何故だ?
「・・・ん?」
カルルが疑問の声を上げた。見えないからよく分からないが、剣が空振りする音が聞こえる。
まさか、カルルも僕と同じように?
「ジノヴィ、この霧は何だ?」
やはり、カルルもそうなっていたようだ。
「霧?そんなのかかってないよ?」
・・・かかってない?
「きききっ!」
魔物の笑い声が聞こえる。火の玉が直撃した。
「うあっ!」
「アリョーシャ!」
「ちょっと、二人ともどうしたの!?さっきからおかしいよ!」
ジノヴィの声がする。
「ま、魔物が、どこにいるか分からない!」
「え?」
「見えないんだ!」
「視界がぼやけちまって魔物が見えねぇ!」
「・・・幻、術?」
魔物の高笑いが聞こえた。
魔物の幻術により、アリョーシャとカルルの視界が霧に包まれた。
アリョーシャの傷を癒しながら、ジノヴィは考える。二人の力なしで、兼つ、あの幻術にやられずあの魔物を倒すには、どうすればいいか。
「お前も惑わしてやるっ!」
魔物の幻術を何とかかわす。
ハッと、ジノヴィの頭にある考えが浮かんだ。
ジノヴィは魔法で鎖を操り、魔物を捕らえる。
「ききっ!?」
そのまま距離をつめ、魔物の懐に入った。鎌の刃を魔物の首にあてがう。
「これで、終わりだよ。」
彼は鎌を持つ手に力を入れた。
「・・・まさか、本当にエルフの涙を持ってくるとは思いませんでした。」
魔物を倒し、無事目当ての物を手に入れた僕達は、宿街に戻って来た。
主人に通され、魔道士が眠る部屋に来る。エルフの涙を振りかけると、魔道士は目を開け、起き上がった。
「・・・」
「!」
カルルが突然少し後ずさった。どうしたんだろう。何かいたのかな?
目が覚め、パッチリ目が開いたらしい魔道士を見る。
「可愛い女の子だなぁ・・・」
口をついて出たのはそんな言葉だった。魔道士の彼女は、少し照れて微笑む。すると、ジノヴィが言った。
「・・・僕の方が可愛いよ。」
彼女は少しムッとした。・・・まぁ、あんなことを言われたら仕方ないかもしれない。
「えっと」
彼女が口を開く。女の子らしい声だ。
「助けてくれた・・・と言っていいんですよね。有難うございます。」
「いやいや・・・」
カルルは今だに後ずさったままだ。一体どうしたんだろう?
「私、ソフィアっていうの。あとは何も覚えてないけど。」
それを聞いて僕達は驚く。記憶がない、ということか?
「あ。でもね、魔法が使えることは確かみたい。それで・・・」
女の子はううんと唸りながら、体を前後に揺らす。ピタ、と止まると、僕達をじっと見てきた。
「あなた達、旅をしてるのよね。」
「うん、まぁね。」
「・・・ねぇ、私も、あなた達の旅に連れてって!」
「え」
「私、自分が何だったのかとか、色々思い出したいの!そのためには、色々な場所へ行った方がいいと思う。・・・でも私の力だけじゃダメなの。あなた達、旅をしてるってことは、強いのよね?お願い、私も出来る限りの事をするから、私を旅に連れてって!」
「そ、そこまで言うなら・・・ね?」
二人に同意を求める。カルルは渋々という感じで頷いた。
「別にいいけど。やたらと煩くしなければね。」
ジノヴィも素っ気なくだか、肯定した。
「うん、一緒に行こう、ソフィア!」
女の子-ソフィア-は、パッと明るい表情になって、笑った。
「有難う!皆、よろしくね!」
ーこうして、魔道士ソフィアが仲間に加わった。




