始まり
1
僕の名前はアリョーシャ。森の中の小さな村で、穏やかな生活を送っている。
「あら、アリョーシャ君早いわね。」
「おはようございます、おばさん。」
このおばさんは道具屋を営んでいる。僕はそこでアルバイトをしているんだ。
「そうそう。アリョーシャ君も聞いたかもしれないけど、この後村長さんが皆に話したい事があるんだってねぇ。全く、少し前まではこんなに色々言うような人じゃなかったのに・・・」
最近、僕たちの村を治めている村長がおかしいという話がある。
妙な威圧感を放っていたり、やたらと僕たち村人に色々なことを言ったり命じたり・・・正直、僕もおかしいなと思う。
「まぁとにかく、時間になったら行きましょうか。」
「・・・そうね。さぁ、それまでしっかり働くのよ!」
「はいっ!」
いつも通りの時間が始まった。
今日はカウンターで接客の仕事だ。お客が来るのをぼんやりして待つ。暫くすると、ドアが開かれた。
「いらっしゃい!」
「こんにちは。」
「あ・・・」
やって来た客は、僕の恋人であるディーナだった。彼女はカウンターに近づいて、アル、と僕を愛称で呼び微笑んだ。
「今日はこっちでお仕事なんだ。」
「うん、初めてだからちょっと緊張してるけどね。」
「アルなら大丈夫よ、頑張って。あ、それで今日はね・・・」
「分かった、いつものやつでしょ?ちょっと待っててね。」
「うん、お願い。」
ディーナはここの常連で、よく薬草を買いに来る。なぜそこまで必要なのかは気になるが、彼女はあまり自分の事情を話したがらないので、聞こうに聞けない。
「はいどうぞ・・・そうだディーナ、この後村長が皆に話があるって。行こう。」
「うん。」
時間になり、僕とディーナは広場に向かう。
既に他の村人たちは集まっていたようだ。
「皆の者よく聞け!これから私が話すことは、皆にも関係することだ!」
村長の一声で、一気にその場の空気が張り詰める。しかし、次の言葉で村人は一気に騒ついた。
「この村に恐るべき殺人鬼がいる!」
・・・殺人鬼?
「その者は異様な青色の髪で、狼の如く恐ろしい金色の目をしている!」
青い髪に、金色の目・・・
横目でディーナを見る。空の中に溶け込みそうな青い色の髪、宝石みたいな金色の目。
まさか、彼女のことなのか?
「あ、あそこにいるぞ!」
村人の一人がこちらに気づいた。
「殺人鬼を討ち取れ!」
「捕まえろ!!」
「殺せ!!!」
村人がどっと押し寄せてくる。
僕はディーナの手を取り、逃げ出した。
「アル・・・ごめんね。」
「気にしないで、それよりも、今は逃げなくちゃ!」
「うん・・・」
村人たちは未だ追ってくる・・・早く逃げないと、ディーナが危ない。
「あ・・・あの小屋に隠れよう!」
彼女の手を引いて、小屋の中の、押入れに飛び込んだ。
・・・バタバタ、と足音がする。村人の中の数人が、この小屋の中を探しているようだ。
このままじゃ、見つかるのも時間の問題。
ふと、ディーナが押入れの戸に手をかけていることに気づいた。
「ディーナ?今出たら見つか・・・」
「しっ」
「・・・」
「アル。あのね、この後何があっても、声を出さないって約束してくれる?」
「え?」
「お願い。」
黙って頷く。するとディーナは素早く押入れから飛び出していった!
「・・・!」
「お前たちが探している殺人鬼はここだ!」
何を言っているんだ!そんなことをしたら・・・
「抵抗はしない!殺したければ殺せ!」
ディーナが声を張り上げた後、一発の銃声。それから彼女は、ゆっくり崩れ落ちる。
「・・・は、はは。これで殺人鬼はいなくなったぞ!」
「この村は救われたんだな!」
声を震わせながら喜び合う、信頼していた村人たち。・・・今はもう、怒りしか抱いていないが。
押入れを出て、奴らを殴り飛ばそうと構えた時、小屋の・・・天井から、だろうか。そこから誰かが降りてくる音がした。気を落ち着かせ、引き続き戸の隙間から様子を伺う。
現れたのは・・・
「!?」
「うるせぇな・・・人ん家で何してくれてんだよ。」
「な!?」
村人たちも驚いているようだ。
「その口、閉じてもらう・・・永遠にな。」
降りてきた人は、村人が悲鳴をあげる前に全員を剣で斬り裂いた。それから、こちらに向かい戸を開ける。
「お前は、あいつらとは違うみたいだな。」
僕はその人をじっと見た。
「・・・ディー、ナ?」




