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mission6-本部人員を紹介せよ

「ダメだよ宮木ぃ、じっとしてろよぉ」

「いたた、ちょ、離してください、消毒なんて、幼稚園児じゃないんだからっ」

 ぎゃあぎゃあと騒いでいるのは、宮木と捜査本部長の宙影先輩である。騒動が終わって捜査本部室に戻ったら、救急箱片手に真っ先に駆け寄ってきたのだ。ちなみに長月はというと、悠長に漫画を薄高く積み上げて読みふけっている。表紙から察するに、五巻目。いくらなんでも早すぎる。秀才のなせる業、といったところだろうか。いや、こんなに漫画を読んでいても学年一位に輝いていることを評価するべきだろうか。どちらにしろ、見せられてイラッとする光景であることに変わりはない。

「黙れ」

 騒々しい二人の後方から一単語であたりを静まり返らせたのは、宙影先輩と同じく三年、そして副捜査本部長の霧島きりしま恭一郎きょういちろう先輩。彼もまた、柔道一筋で丸二年以上捜査本部に貢献してきた武闘派メンバーである。乱闘になった時などは、冷静な判断と大胆な行動で俺も何度か助けられている。どちらかというと、こちらの方がへらへらしている宙影先輩よりもリーダーっぽく見えるくらいだ。

 お母さんに切りそろえてもらったみたいな髪型にとろんとした瞳のTHE・変人少年な風貌の宙影先輩と、強面で取っ付きにくそうな、実際も取っ付きにくい霧島先輩。この二人が、犯罪捜査本部を取り仕切る「本部」と呼ばれるポジションに立っている。ちなみに、先程した本部の説明の「怒ると怖い」は、霧島先輩にのみ適用される言葉だったりする。

 さて、ここまで説明されたら薄々感づいたりもするだろうが、この時点で、もう一人の二年――俺のパートナーが不在なのである。いつもあっちゃこっちゃフラフラとしている奴ではあるのだけれど、どうかしたのだろうか。

「あの、本部長」

「ん~、なぁに?」

 宮木の手当てを続行しながら、くるりと振り返る宙影先輩。すごそうな名前なのに、本体は全然すごそうじゃない。名前負けの最たるものであろう。ってか、どうでもいいけど、ちゃんと手元を見てください。

「今日、瀬良はどうしたんですか」

「ああ~、セラぁ? う~ん、今日は見てないよぉ~……うおっと」

 話に気を取られて、消毒液の瓶を思い切り取り落とす宙影先輩。……ああ、やっぱり。宮木はといえば、消毒液をダイレクトに顔面で受けてしまったようで、「うああー! 目がぁ、目がぁーーー!」と、名作アニメ映画の台詞を吐き散らしながら、一人悶え苦しんでいる。

……犯罪捜査本部一年宮木恵一(けいいち)、本部にて呆気なく散る。俺は心の中で小さく合掌した。あ、長月は本当に合掌していた。……笑いながら。

「あぁぁ、ごめんねぇ、ごめんねぇ。はやく洗っといで(※作者注:実際はその後で速やかに病院へ向かってください)。うん、うん。いや、だから、ごめんってばぁ。……で、セラだけど、次の依頼の下調べとかじゃないかなぁ。多分PC室にいると思うよぉ。こーくんが探してたって伝えとこうか?」

「……いいです」

どうせ三十分後には跡形もなく忘れている。ってか、どうでもいいけど、この人のニックネームのセンスは、その人物像と同じく、どこかズレている。「こーくん」は「香本」からだし、瀬良に至ってはアクセントを「ラ」から「セ」に変えただけだ。宮木や長月などは、ニックネームをつけることすら忘れ去られて早二ヶ月である。まあ、何が言いたいのかと言うと、色々雑なのだ、この人は。

俺は消毒液を洗い終えて帰ってきた宮木に多少の同情を示しつつ、長月が読んでいる漫画の第一巻を横から奪い取って読み始めた。うん、なかなか面白そうだ。


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