mission3-水島容疑者を追跡・観察せよ
さて、現在犯罪捜査本部は学園にトラブルを生み出してくれちゃった不届きものを追跡中である。
ターゲットは県立朝山高等学校二年、水島浩太。夕日ヶ丘の一年生に学園の体育館裏で暴行を働いたという情報が入ったのは、つい先日の事だ。
俺達の任務は、彼を追跡・観察して本当に犯人なのかを確かめ、それが終わり次第、彼に鉄拳を喰らわせること。あ、ちなみに、パラパラ漫画ではなく、マジの方の鉄拳。今は第一段階である追跡・観察をしているという訳だ。
「あっ、いたいた!香本さんっ」
ボリュームを落とした声に振り向けば、先程の無線でこちらに来ると言っていた一年生二名である。
「ああ、宮木と長月か。長月、幹部からの連絡は」
「まだありません」
それにしても、と長月の横にいる宮木が口を開いた。
「水島はうちの学園を何だと思ってるんですかね?学園の敷地に勝手に入って、許されると思ったら大間違いですよ」
「そうですよ、香本さん。宮木の言う通りです。第一、敷地内に無断で侵入して、ああしてくつろいでる時点でもうアウトじゃないですか。本当に許される事じゃありませんよ、ってわけで、とりあえず殴ってきたらどうですか。ちなみに俺は嫌です」
事実、水島は体育館裏であぐらをかきながら漫画を読んでいる。
「二人共落ち着けよ。あと長月ふざけんなあとで屋上から吊り上げるぞ。……確かにそれは俺もすげぇ思ったけど、今はそれよりも任務が先だろ。幹部怒ると怖いし。今連絡入れるからちょっと待ってろ」
一年に釘をさしたあと、俺は幹部に無線を繋いだ。
「応答願います、応答願います。こちら二年香本。体育館裏で一年二名と合流しました」
「幹部より香本へ。了解。ターゲットの様子はどうだ?」
「香本より幹部へ。ターゲットに動きはありません。アプローチしてみますか?」
「幹部より香本。アプローチしていいぞ。その代わり、状況を確認してからアプローチに移ること。いいな」
「香本から幹部へ。分かりました、十分注意します。ありがとうございました。これで無線を切ります」
無線を切って、俺は一年の方に振り向いた。
「どうでしたか?」
「ああ、アプローチしてもいいそうだ。ただ、状況把握をしっかりと、ということだった」
「アプローチはどういう方法で?」
その宮木の言葉に、俺は首を捻った。そして、その回答は――――