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ドアの向こう側

作者: ぱちぽ
掲載日:2011/10/27

 毎朝、通学時の楽しみは朝の電車である。毎朝決まった時間に通学する俺は

神戸、JR三宮駅で下りの電車に乗っている。そして、上りの電車には、

いつも彼女が乗っているのだ。

 彼女は、いつも小説を読んでいた。カバーが掛っていて、何を読んでいるか

は、分からなかったけども、読みながら、ちらちらと目が合ったりしたりもした。

電車のドア越しに、いつも彼女がこちらを見てる。俺も彼女を見てる。

彼女の名前、もちろん知らない。長い髪に、猫のようにやや釣りあがった瞳。

肌は白く、神戸にある有名ミッションスクールの白い制服をいつも着ている。


 ミッションスクール、そうだ、うちの高校もミッションスクールだった。

そして、有名高校でもあった、ただし悪評しかなかったのだけども。

とても可憐な彼女に比べて俺は、髪はリーゼント、制服はというと、

中ラン、おまけにダボダボのボンタンときている。どこから見ても、

ヤンキーだ。それにペチャンコの鞄。

誰かが言ったっけ、鞄の薄さが知能の薄さだって・・・

まぁ、とにかく彼女とは何から何まで正反対ってやつだ。


 彼女を初めて見たのは、高校1年の時だ、この世にこんなに綺麗な子がいるのかと、

初めて思った。まさに高嶺の花ってやつだ。

そして、笑える話だけども、今俺は高校3年になっている。

俺は決して内気ではない。付き合った女の子も3年で5人程いる。ただ続かない。

いつもドアの向こうの彼女が気にかかっていたからだ。

何度も、向こう側に行こう、行って声をかけようと思ったことか・・・。

だけども、この3年間、毎朝、彼女の顔を見るのが楽しみだっただけだ。


 いつも通りの退屈な授業中、俺は彼女の清楚な制服姿を思い描いていた。

その時、ふと国語の担任のハゲの言葉が耳をついた

「えーーー、○○女子学院とは姉妹高なんや。」シマイコウ?俺。

シマイコウ?シマイコ?俺は隣の奴に聞いた。

「シマイコってなんや?」そして、隣の奴がでかい声で

「知るか、おんどれっ!」と返してきた。

そして俺は。「ありがとな、ダボっ!」と返した。

これが日常のごくありふれた会話だから俺自身、嫌になる・・・。

担任のハゲが苦笑しながら、姉妹校について説明した。

説明されて兄弟みたいなもんかと思っただけだ。

「まぁ、同じカソリック系で統合の話もないこともないんやけどな」

と担任、「せやけど、偏差値が違いすぎるしやな」「女子高と男子高が一緒に

なるわけやし、うちの高校が悪過ぎて、統合はないわな」と担任は言った。

「なんや、おもんないのぉ」とクラスメイト達が、どっと笑った。

そして、俺はまた彼女の事を考えていた。

最後に担任が言ったのは、「同じなんは、卒業式の日取りくらいやのぉ」と・・。

そう俺は、この○○学院を、もうすぐ卒業するのだ。



 帰宅の電車の中、考えていたのは、卒業の事だ。卒業がどうこうでは無い。

卒業すると、もう彼女の顔が見れへんなぁと思っていたのだ。

考えてると胸が締め付けられる気がしてきた。恋ってやつか・・・。

卒業式かぁ・・・。あと一カ月もあらへん・・・。

それから、俺はため息を一つついて、考えないようにした。

だが、考えないようになんて出来ず、俺は彼女に告白することを決意した。

もちろん卒業式の日だ。



 冬の寒さが、和らいできた頃、とうとう卒業式の日がきた。最後のチャンスだ。

この朝しか、もう彼女と会えないと何故かそういう予感がしていた。

そう、勇気を振り絞って彼女に告白するんだ、ただ一言、「好きだ」と。

あとは野となれ山となれだ。

 俺は三宮駅を降り、上りの電車のホームへ息を弾ませながら走っていった。

日頃の運動不足のせいか、肩で息をする始末だ。だが今は、そうも言ってられない。

そして、俺は階段を3段開けで走り上り、ホームの廊下を走り、そしてそして、

彼女のいる電車に走っていった。ラストチャンス!


 ドアが開いている。俺は走り寄った。そして下りの見える電車のドアにいる彼女を

探した・・・。いなかった・・・。

俺は、いつも俺が乗っている電車のほうを見た。見た。見た。

ドアの向こう側、下りの電車のドア。俺がいつも乗っている所。

そこに彼女はいた。彼女がいたのだ!

彼女は俺を見て、やや俯き加減にして、切なそうに俺を見ていた。

 たぶん、俺も同じ顔をしているだろうと思った・・・。

だが、彼女は顔をおもむろに上げ、弾けるように声もなく笑った。まるで声がこちらに聞こえる

かのような笑顔だった。俺も釣られて笑った。なんだか悲しいような楽しいような

とても不思議な感じだった。ふと思い、俺は彼女の手元を見た。

彼女は今日も小説を手に持っていた。だが今日はカバーが

なかった。俺は、何を読んでるのだろう?とその小説のタイトルを見た。



 タイトルは、「パラレルワールド」だった・・・。

そう、まるで俺と彼女との関係のようだ。そして俺は、でっかい声で、

向こう側に聞こえるように、

「名前なに?---っと」声をかけたのだった!「香織っ」と

彼女の・・・・。香織の大きな声が聞こえた。

そして、香織も大きな声で聞いてきた。俺は「健吾!」と答えた。

この後、どうなったかは、また別の物語・・・・・・・・。




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― 新着の感想 ―
[一言] あっさりしていてとてもさわやかでした。 思わず笑顔になりました。 素敵なお話ですね。
2011/10/28 12:25 退会済み
管理
[良い点] 青春の一コマの中にある身の程知らずの恋に注目した点が新鮮です。 [気になる点] 叶うはずがないと思う恋心を少し丁寧に扱ってみると最後に彼女が思いであったということが感動的になったように思い…
[良い点] 続きが気になる~!!主人公のヤンキー君の恋は実ったのか、それともだめだったのか。。。 「こんなことがあってね~」レベルの話ではないと思うのだ。次回に期待!! [気になる点] 文法的に読点の…
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