第3話。朝日の国と、明日の足音
このお話は、私が幼い頃疑問に思った
『朝日はのぼる。夕日は沈む…じゃあ、その朝日どこへ行ったの?夕日は、どこから登るの?』とお母さんに聞いていた幼い頃疑問に思ったことをテーマに、Aiに文章を作ってもらった共同制作の作品です。
私自身がゴビの調整や行間の演出など、こころを込めて編集しています。
幼い疑問への物語
読者の私と一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです
第3話。朝日の国と、明日の足音
「私たちの存在そのものが、消えかけている……!!」
未来の私の悲痛な叫びが、耳の奥に突き刺さる。
気がつくと、ノイズのように点滅していた34歳の私は完全に掻き消え、あとには嵐のような轟音だけが残されていた。
私は透き通り始めた自分の両手を強く握りしめた。爪の先が光の粒となって、ハラハラと虚空へ消えていく。
(お母さんを助けたのに、どうして……。私の未来はどうなっちゃったの!?)
確かめるしかなかった。
私は体の震えを抑え、
どす黒い紫色に変色してしまった右側の世界――崩壊しかけている
【朝日の国】
へと、狂ったように走り出した。
光のトンネルを抜けた先。
そこは、本来なら眩しい黄金色に包まれているはずの「未来の国」だった。
しかし、目に飛び込んできたのは、まるで世界の終わりを告げるような荒涼とした景色だった。
空はひび割れ、地面からは不気味な紫色の光が吹き出している。
過去の事故を防いだはずの、24歳から先の私の未来が、そこには断片的な映像となって宙に浮かんでいた。
私は息をのんで、その映像を凝視した。
事故に遭わなかったお母さんは、確かに24歳の今も生きていた。
車椅子生活になることもなく、元気な姿のままだった。
けれど、事故を防いだあの日を境に、お母さんの運命は狂ってしまっていた。
私をかばって事故に遭わなかったお母さんは、その数日後、偶然立ち寄った別の場所で、さらに大規模な連続車両衝突事故に巻き込まれていたのだ。
命は助かったものの、今度は意識不明の重体のまま、何年も眠り続ける日々。
元気だったはずのお母さんは、言葉を交わすことも、笑うこともできず、ただ機械に繋がれて生きている。
そして画面に映る私は、そんなお母さんの莫大な医療費を稼ぐため、いくつも仕事を掛け持ちし、心を病み、前の時よりもずっと深い絶望の淵に沈んでいた。
「そんな……嘘でしょ……」
へなへなと、その場に膝をつく。
あの大事故を防げば、お母さんは幸せになれると信じていた。
私の未来も、明るく輝くはずだと信じていた。けれど、無理に他人の運命を変えようとした結果、もっと残酷な未来が私とお母さんを待ち受けていたのだ。
『時間を無理に歪めてはならない。それは世界の調和を壊すことだ』
どこからか、地を這うような低い警告の声が響いた。
【ひかりの交差点】
の門番の声のようだった。
『他人の過去を書き換えた代償として、お前の存在は間もなくこの世界から消滅する』
「待って……待ってください! 私はただ、お母さんに生きていて欲しかっただけなのに!」
叫ぶ私の体から、さらに多くの光の粒子が剥がれ落ちていく。
足の感覚が薄くなり、立っていることさえ難しくなっていく。
(このまま私は消えちゃうの? お母さんを救うこともできず、自分もいなくなって……私の人生って、一体何だったの……?)
涙が溢れて、視界が滲む。
その時、暗転しかけた私の視界の隅で、ひとつの小さな映像が、か細く、けれど優しくまたたいた。
それは、変えてしまう前の、本来の歴史の映像だった。お母さんが病気で亡くなる間際、病室で私の手を握りながら、最期に遺してくれた言葉。
『アサヒ、私、あなたのお母さんになれて、本当に幸せだったよ』
マスク越しのはずのお母さんの声が、なぜだか今の私の胸の奥に、はっきりと直接響いてきた気がした。
(お母さんは……あの運命を、不幸だって思っていなかったの?)
その瞬間、ポケットの中の懐中時計が、ドクン、と心臓のように大きく一度だけ脈打った。
眩しい紫色の光が再び私を包み込む。
「まだ、間に合うかもしれない」私は消えかける体に最後の力を込め、崩壊する朝日の国を飛び出した。
私が向かうべき場所は、未来ではない。もう一度、すべてが始まったあの場所へ。
もう一度、お母さんに会うために、私は必死に
【ひかりの交差点】
へと引き返した。(第3話・おわり)
この作品は、『時をかける交差点~…、』(シリーズ?)へ…、繋がります
それから、『ルミナス令嬢の失われた記憶』へ繋がります。もしよかったら読んでみてください。




