番外編 好奇心が嵐を呼ぶ 〜エルミージュとフルフル〜
※この番外編は「第二話 静かな庭の嵐〜邂逅〜」のアランディルとエルミージュの出会いの裏側です。
目が慣れていない者には、光が眩しい空間。——精霊界。
風の精霊王に保護された後、心身回復のため眠り続けていたエルミージュは、最近目覚めた。
あの日から、五年の歳月が流れていた。
最初は自分の置かれた状況を理解するのに時間がかかったが、理解してからは回復も更に増していった。
保護されてからのエルミージュのお世話係には、口だけは立派な怖がりの精霊セリュスがついていた。
セリュスは小さな男の子だが、擬態した姿は、超絶愛らしいドロップイヤーのウサギになる。
まだまだ成長途中の精霊だった。
その見た目だけで心を鷲掴みにされる存在だが、ドジで好奇心旺盛だった。
その好奇心から、トラブルの嵐を巻き起こす彼がお世話係である。
他の精霊たちは、
「なぜ、彼をお世話係にしたの?」
「風の精霊王の息子だからなれたのかな?」
「トラブルの予感しかしない……」
と、先行きの不安を感じていたが、見守り、助けようと心に決めていた。
今日も、セリュスがエルミージュの診察をしていた時、彼女は少し沈みがちに話し始めた。
「ねえ、フルフル。あの王子、どうにかできないかしら?」
「何度も言うけど、僕の名前はセリュスだよ」
フルフルとは、怖がりのセリュスが、プルプル震えながら立ち向かう姿を、エルミージュに見られた時から勝手に呼ばれ始めた。
セリュスにとっては、不名誉な愛称なのだ。
「うん……フルフル。せっかくセリーヌの心を回復させてる途中なのに、戻ってしまわないか心配なのよ。私はまだ家族のもとに居られないし……」
「フルフルは君が勝手につけた呼び名だよ。僕の名前はセリュスだよ」
セリュスは、繰り返し間違いを指摘しながら答えた。
「人の子の世界に関わるのは禁じられている。僕たちは干渉できない」
セリュスは穏やかに大人びた物言いをした。
「あなた精霊よね? ちょいちょいって何とかならない?」
セリュスの言葉を、まったく気にしないエルミージュが、ろくでもないことを考えていそうだった。
セリュスは若干焦りながらも、話を終わらせに入った。
「できませんよ! それより、あなた自身が早く人の子の世界に戻れるよう、心身を整えなさい」
◇ ◇ ◇ ◇
ある日、エルミージュが慌ててセリュスを呼んだ。
「ねえ! 王子が来てるわ! セリーヌを婚約者候補から除外するように、なんとかならないかしら?」
「ん? 来てるのか? 冷酷非道な王子とは、見ものだな。見てみよう」
セリュスは好奇心に負けた。
王子の居場所を特定すると、エルミージュと一緒に見物に赴いた。
「えー待ってよ。物影から見ないと駄目よ。……まぁ、私達の姿は視えないから大丈夫だろうけど……」
エルミージュは、堂々と見に行こうとするセリュスを止めた。
でも、自分達の姿が視える者は、今のエルデリア王国には数少ない。
ま、いいかと、セリュスを追いかけた。
「待って~! フルフル~!」
ガゼボ近くの繁みから飛び出し、フルフルもといセリュスに追いついた。
セリュスは、王子の真正面に止まり、じっと王子を見つめていた。
「……ウサギ?」
王子が呟いた声に、エルミージュは戦慄した。
「え! なんで視えるの? どういうこと?」
自分達の姿が視えた事に驚いたが、その場を収拾すべく冷静に立ち回った。
セリュスを抱き上げ小声で伝えた。
「フルフル、大人しくしててね」
まさか視える者だったとは……視えた事は意外だったが、挨拶を交わし疑われることなくその場を乗り切った。
その後も、王子をルクレ家から遠ざけたくて何かと王子の前に現れてみた。
一向にルクレ家から遠ざかってはくれなかった。
そして、まさかの結婚の申し入れをされてしまった。
なにやってんの、あなた達は……
最後までお読みいただきありがとうございました!
本作【第一部】はこれにて完結です。
第二部では、第一部で描けなかったエルミージュ事件が明らかになります。
執筆には少し時間をいただきますが、どうぞ楽しみにお待ちください!




