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【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜  作者: 碧風瑠華


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 番外編 ある日の翡翠の間 〜リオネルとエルミージュ〜 


※この番外編は「第三話 風に乗る声〜家族風景〜」の裏になります。アランディルが聞き取れなかった会話の部分です。 





 ルクレ家の客間の一室「翡翠の間」。


 窓辺に差す光が翡翠のように煌めき、緑を基調に整えられた空間。

 森林浴を彷彿とする静かな癒やしの客間に、騒がしい声が響いていた。


 五年前の出来事のあと、ルクレ家の長女エルミージュは精霊界でしばらく眠りにつき、心身の回復が行われた。

 今もまだ精霊界にいるが、最近やっと、会話できるまでになった。


 ある日、リオネルが、家族の肖像画を悲しい瞳で見つめていた時、


「ここどこですの? 真っ白の光しか見えないですわ」


 と、突然エルミージュの声が降ってきたときは、腰が抜けそうになったリオネルだった。


 それからは、呼びかければエルミージュは、応えてくれるようになった。

 再び会えたときは、リオネルの涙腺は崩壊していた。


「姉上、色仕掛けで誘惑なさろうと、お考えですか? 姉上には向いていません。やめて下さい」


「大丈夫よ。わたくしだって、やればできると思うのよ」


 怒られた当人、エルミージュは飄々と言い放ち、胸の前で握った拳に力を込めた。


「大丈夫なわけないでしょう! あなた自分が天然って周囲に言われてるの、わかってます? いいかげん認めなさいよ」


「天然ではないわ。計算よ。みんな、わたくしに騙されているのよ」


 心外だと言わんばかりに、頬をふくらませてリオネルを見返す。


「とにかく、何もしないでください。僕たちを守ろうとして頑張らないでください…… なんで、姿を視られてるんですか?」


 小さな声でポソッとエルミージュが言った。


「守るに決まってるでしょ。 悪意ある者は蹴散らしてやるわよ」


「なにか?」


「あれは…… アクシデントよ! そんなつもりじゃなかったのよ!」


 リオネルが聞き返すと、かなり慌てて肩を落とし、俯いたり顔を上げたりしながら言い訳を始めた。


「幽霊みたいに『セリーヌに近づくな』『ルクレ家に近づくな』って耳元で囁いて、ちょっと脅そうと思ってたのよ。そしたらね…… そうよ、わたくしのせいではないわよ! フルフルよ!」


 なにかを思い出したのか、ぱっと花が開くように笑顔が輝いた。


 フルフル——あのお付きの精霊か、とリオネルは思った。

 見た目は超絶愛らしいドロップイヤーのウサギ。

 初めて姿を見た時、きゅるんとした瞳とモフモフボディにリオネルは心を掴まれた。


 が、中身がとんでもなくドジなのだ……

 エルミージュと組み合わせると、何が起こるかわからない。


「フルフルがね『冷酷非道な王子を影から見るんだ!』って言い出して、なぜか堂々と出てしまったのよ。それを、止めようと追いかけたら…… あら、視えちゃった…… ってことなのよ。驚きでしょ! 凄いわよね」


 翡翠の間に光がやわらかく差し込む中、リオネルはこめかみを押さえた。ますます頭が痛い。

 ひとつ大きな溜息を、これ見よがしにつくと。


「エルミー!」


 一喝されたエルミージュは、びくっと身をすくめ、すまなそうにリオネルをみつめる。が、口を尖らせて、口の形だけで『私は姉よー』と主張した。


「ともかく、今の貴方は生者でも死者でもない。曖昧な状態なんです。大人しくしててください。そして…… 生者として、さっさとこの世に戻ってきてください。僕らは」


 そこまで言ったところで、リオネルはドアの向こうに妙な気配を感じ、言葉を止めた。

 姉への説教に夢中になりすぎて、気配に気付くのが遅れたことに歯噛みする。


 ドアが開き、にやついた顔のアランディルが入ってきた。


 しかし、すぐにきょとんとして部屋を見回している。


「君、いま誰かと話してなかったか?」


(もう手遅れか? 厄介なことになりそうだな)


 アランディルが期待していた内容の察しがついたリオネルは、心の中で呟き頭を抱えた。


「いえ、独り言です。セリーヌを呼んでまいります」


 そう言い残して、その場を退散した。


 リオネルの頭痛の種は、しばらく後に公開プロポーズとして現実となるのだった。

 頑張れ、リオネル。






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