表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜  作者: 碧風瑠華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/16

 番外編 傲慢の代償 〜アランディル〜



 荘厳な玉座の間。

 天井には天を、床には地上を現す絵画が施されている。


 誰一人私語を交わさない、張り詰めた静寂の中。


 国王エドリックの、低く冷ややかで無機質な声が響いた。


「アランディル・エル・クロワ。お前はもう王族ではない」



 第三王子、庶子の身でありながら魔導具開発院・第二開発部長官の座に就いた。

 多くの者の心を虐げ、蔑ろにし、己の欲求と自尊心を満たすためだけに行動してきた男。



 騎士たちに両腕を押さえられ、床に膝をついたアランディルの顔からは、血の気が失せていた。



「魔導具第二開発部長官としての立場も、王族としての地位も、すべて剥奪とする。王族としての記録からも完全に抹消される。そなたの身柄は、生家のヴァルモ家が引き取りを申し出てきた。今日この時より、アランディル・ヴァルモに戻る」



「なっ!?」



 アランディルは眼を大きく見開き、真っ赤な顔をして口を歪めた。

 立ち上がろうとしたため、さらに力強く抑え込まれる。



「俺が、俺の何が悪い!? 俺は何もしていない!」



 国王は視線を逸らすことなく、静かに告げた。



「そうだな……何もしていないな。“何もしなかった“事が最大の罪だ」



「は?」



「わからぬか? お前が己の手柄としていた事柄は、すべて他人の成果だ。部下の不始末も、すべて他人に尻拭いをさせた。王族としての責任も覚悟もなく。成果は他者から奪うことが当然と思っている」



 アランディルは、きょとんとした。



「それの何が悪いのですか? 俺のために動くのが彼らの役目でしょう」



「言葉の暴力ということを、知っているか? お前は我が国の大切な技術者たちにどんな態度を取っていた? 彼らは皆、お前のために存在するわけではないぞ」



 国王は、大きく溜息をつき、わずかに眼差しを伏せ、静かに続けた。



「周囲に迷惑をかけ続けたが、改心してくれることを、人の上に立つ者として、考えを改めてくれることを願って、黙して見ていたのだ。一度も叱責されなかったのは、許されていたわけではないのだよ」



「なら、まだ見守っていてくれればいいだろう! 俺は……」



 アランディルが、まだ言い募ろうとしていた。



「まだ甘えるか!!」



 国王の一喝が、玉座の間をビリビリと震わせた。


 平素、温厚な顔しか見せない国王を、アランディルは舐めきっていた。愚か者である。

 一国を統べる者は、温厚なだけでも、強権だけでも務まるはずがないのに。



「もうこれ以上、機会を与えることはできない。お前ひとりのために、どれだけ貴重で優秀な臣下を失ったと思う? それがどれだけの損失かわかるか? お前はそれが理解できないから、いま、この場にいるのだ」



 アランディルは周囲を見回した。



 どの廷臣も感情のない眼で自分を見ている。

 だが、ほとんどの者は見てすらいない。

 その場にいても、いない者として扱われている。



 そのことに気づいたとき、いままで自負してきたものが、すべて崩れ去った。

 アランディルはその場に力なくへたりこんだ。



「アランディル・ヴァルモ。エルデリア王国より永久追放を命ずる。残念だよ……」



 その言葉に、近衛騎士たちが無言でアランディルを引き立てた。

 


 「なんで俺が……エルミージュが手に入らなかったからか?」



 と、ブツブツと繰り返していたが、彼は抵抗することなく、引きずられるように玉座の間をあとにした。



 国民への周知は、第三王子は急な病によりお隠れになったとされた。

 表向きは、優しく美形の第三王子様として通っていたため、国民はお可哀想にと悼んだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ