虚ろなる食餌
最終エピソード掲載日:2026/01/03
滅びゆく貴族社会を舞台に、帳簿を粉飾して日々をやり過ごしてきた下級官人が、「少しおかしい」と感じていた天候不順と社会のきしみが、ある年を境に一気に形を持ちはじめるさまを静かに見つめる物語です。炎に吞まれる都、じわじわと痩せ細っていく民の暮らし、その裏側で数字だけは「平穏」を装い続ける帳簿──主人公は、その矛盾のただ中で、自分の小さな不正と、この国全体の歪みがどこでつながっているのかに向き合わされていきます。雅やかな宴、路地裏の気配、床下に隠されたささやかな「食べ物」。目の前の一口を守るためのさもしい算段と、それでも拭えない後ろめたさが、静かな筆致で積み重ねられていきます。歴史物としても災厄譚としても読めますが、本質は「自分だけが助かろうとするとき、人はどこまで目をつぶれるのか」という問いにじわじわと追い詰められていく、陰影の濃い人間ドラマです。