Xデーまで残り一週間
Xデー。
それは、ベビーホーガンが外界初デビューし、初陣を飾る予定日である。
ベビーホーガンは、【十月十日】という古の習慣を元に、280日で完成するという計画をしている。
この期間の前後で完成させると、人件費・材料費・検査費用等が総合的に一番負担が少なく開発が出来て、メリットも多いのだそうだ。
よって、この数え方が今の所最適であることから、開発研究所でも活用されているとのこと。
Xデーまで残り一週間前ということもあり、操縦士はコックピットで今かとデビューを待ち侘びていた。
開発研究所の収集データによると、50%以上の確率でこの一週間に初デビューを飾るのだという。
この期間に初デビューさせるのが目標だが、その期待とは裏腹に、週一で行われる前回の検査から大きな変化はまだ起きていない。
変化があったのは、至急発射GATEが2m開口しているということ。
10m開くと、ベビーホーガンが完成という合図が出て、至急発射される。
開発研究所にあったマニュアル本によると、
ベビーホーガンが完成する兆候を見極めるポイントは3つある。
〈ベビーホーガンの破水〉
ベビーホーガンを包む卵カプセルが破れる事
〈母船の振動探知機の始まり〉
1.母船の振動探知機が規則的に10分間隔で続く事
2.一定の振動の強さである事
〈母船のお印〉
ベビーホーガンの部屋が一時的にピンクか赤色に染まる事
この内一つでも条件が合うと、三日以内に母船からデビュー前の祝福の雄叫びが発動しやすいという。
この中の条件が当て嵌まったら、開発研究所に連絡することになっている。
本日、一つ目の条件の1.だけ当てはまったので、操縦士は現状を伝え、今後の対応のため開発研究所に相談することにした。
「母船番号6060。キーはスピカ。場所はマーズ。
相談願います。
母船の振動探知機が定期的になってきました。
20分から10分感覚になっております。
1時間に10分間隔もありました。
振動の強さは一定です。」
開発研究所所員が返答する。
「場所はマーズですか。ここから近いですね。5分間隔になってきたらまた連絡して来てください。」
電話を切り、再度、振動探知機の記録を見て待つ。
3時間以上経過しても5分間隔にはならず。
母船の振動感知機では反応していても、この範囲内に収まってないならば、まだその時では無いということだろう。
この日は見送った。