完成
至急発射GATEがMAXに開いたので、
いよいよ砲座室へ向かう。
開発研究所所員Dに連れられ、母船が砲座室へ入る。
開発研究副委員長が居た。
「せーの、よいしょ。」
開発研究所所員達が用意した大砲を、人型モードのままで腹部に装着する。
開発研究所所員Dが、窓を開けて大砲を外界に向きを調整する。
両足をタイヤ三輪式に変更して、床に固定した。
コックピット内の操縦桿も変更する。
圧力をかける方法を、上下プレス方式から左右のレバーと両足のペダルへ込める方式に変更した。
「圧力の掛け方を変えますね。今までとは違いますからね。私に合わせてくださいね。」
操縦士は、圧力を掛け始める。
「・・・今!ゆっくりレバーを押してー、思いっきり引くー。」
操縦桿の左右のレバーを息を吐きながら押して、全力で踏ん張りながら引く。
〈スゥ・・・スゥ・・・ァアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
圧力で出した音が鳴り響く。
母船の出だしの吸う息の仕方が先程と異なっていた。
指示通りに行おうと、開発研究副委員長に目線を向ける。
「左足のペダルが力が入りにくくなっているわ。
力を入れやすいように、左足をもう少し左にずらしましょう。」
操縦士は、言われた通りに動かす。
(ガコンッ)
金の台座にベビーホーガンが嵌る。
そのまま圧力を掛け続けると、その台座がベビーホーガンのサイズに合わせて、徐々に広がる。
ベビーホーガンは、卵形に体を丸めた状態を維持している。
ベビーホーガンの白いベルトが台座まで下がると、台座がベルトに吸収された。
するとなんと、突然眩しい光が出てくるではないか。
ベルトが金色になった。
ベルトには、龍のマークが入った装飾が描かれている。
そう、台座に描かれていた龍のマークがベルトに反映されたのだ。
15分後、2回目の圧力をかける。
「・・・今!ゆっくりレバーを押してー、思いっきり引くー。」
操縦桿の左右のレバーを息を吐きながら押して、全力で踏ん張りながら引く。
両足のペダルは全力で押す。
〈スゥ・・・スゥ・・・ァアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
ベビーホーガンの目と口が黄色く光る。
眩しく輝く。
15分後、3回目の圧力をかける。
「・・・今!ゆっくりレバーを押してー、思いっきり引くー。」
操縦桿の左右のレバーを息を吐きながら押して、全力で踏ん張りながら引く。
〈スゥ・・・スゥ・・・ァアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
ベビーホーガンの足からジェットエンジンが出る。
大砲の奥内から特別高圧電流と火花が散り始める。
放電が発生している。
ベビーホーガンが覚醒し、全身が白に近い黄色のオーラを纏う。
電気の塊だ。
一般の人が無防備に近づいたら、きっとすぐに死んでしまうだろう。
今回の参加者は、全員服が特殊な防電服、防電手袋、防電ブーツを事前に身につけている。
操縦士と副操縦士は、防電ヘルメット(サングラス機能付き)も。
開発研究者一同は、研究所で作った防電サングラスをかけ、眩しさを軽減する。
設備スタッフ達は、各々が作った特殊メガネをかけて、眩しさを軽減した。
放電対策は、万全である。
設備スタッフが叫ぶ。
「大砲に亀裂が入ったで!」
コックピットの
大砲の一部に亀裂が入ったが、開発研究所側は亀裂の話題に触れない。
破損しようとも、大砲は、ガッチリと固定されている。
「頭が見えそうですよ!まだまだ力んで。」
「・・・今!ゆっくりレバーを押してー、思いっきり引くー。」
操縦桿の左右のレバーを息を吐きながら押して、全力で踏ん張りながら引く。
〈スゥ・・・スゥ・・・ァアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
操縦士は言われるがままに圧力を掛け続ける。
この開発プログラムの完成まで終えることが出来るのは、厳選された強運を持ち、さまざまな条件をクリアした『選ばれし操縦士』だけである。
まず、開発研究所主催で不定期で行われるベビーホーガンの応募に、約1億~4億人からの当選。
これに当たるだけでも奇跡と言えよう。
当選後、『選ばれし操縦士』として役所に登録。
開発研究所からの全面協力の元、操縦士が所持する母船に、卵カプセルの生成と特殊な液体から精製される母船の経験値を受け継ぐ物質の開発から始まる。
素材は、約64兆の部品と、母船の一部、
もう一台の相性の良いホーガンの一部。
この素材を使用して、錬金を行う。
素材の組み合わせにより、ベビーホーガンが生成できるか否かが決まる。
後半になるにつれて個体差が現れる箇所があるので、それに合わせた母船とベビーホーガンの微調整もある。
少しの異変でも、知恵と技術を兼ね備えた開発研究所に聞かなければ対応出来ない事象も多い。
その微調整でも油断しすぎると、ベビーホーガンが機能停止になる恐れがあるからだ。
この繊細な開発作業は、完了するまで油断できない。
とある巷の噂では、ホーガンが18年以下の物や35年以上の物だと、強いベビーホーガンが生成されにくいのだそうだ。
完成すると、役所に『ベビーホーガンの命名証』
が登録でき、国宝級の名誉が与えられる。
母船に圧力を掛ける時間が延びるほど、操縦士の体力と精神力が削られてゆく。
ベビーホーガンは体を鉄球並みに綺麗な丸みを維持している。
圧力を掛け続け、
「後もうちょっとで出てきますよ。良いですよ。頭の先端が見えてきましたよ。その調子です。」
「圧力を掛ける長さが長ければ長いほど、出てきますよ。」
「おー、見える見える。後もうちょっと。」
開発研究副委員長に促されながら、母船は遂に、
外界に向けて砲丸を撃った。