誘発
沢山変化したが、
至急発射GATEは9割で止まってしまい、全開とは至らなかった。
様子を見ている開発研究所所員Dが話す。
「あと一息なんですけどね。
この母船、頑張ってくれているけど、このままだと予定以上にさらに時間がかかりそうね。」
操縦士に向けて質問する。
「操縦士さん、お食事取れそう?ご飯を少し食べるだけでも、違うのだけど。」
待機部屋の入り口にいつの間にかお粥セットが用意されていた。
操縦士は首を振る。
余裕が無さそうだ。
代わりに操縦士補佐官に譲った。
その数十分後、開発研究所所員Cがいつの間にか部屋から居なくなり、別の開発研究所所員Dが現れた。
「失礼致します。ここから先は開発研究所所員Cに代わり開発研究所所員Dが担当させていただきます。」
ご丁寧に、部屋に入るなり一礼をして挨拶をする。
開発研究所所員Dは、続けて話す。
「一階に開発研究委員長がいるの。
船モードになりましょう。
今から15分の間だけしか受けられないのだけれど、許可を得たので、直接検査して頂きましょう。」
「分かりました。」
操縦士はジェスチャーで頭を上下に頷いた後、操縦士補佐官が応答して頷く。
「バイク型解除ヨシ!船の変形ヨシ!電装ヨシ!
エンジンヨシ!舵ヨシ!帆ヨシ!煙突ヨシ!
圧力状態ヨシ!
船モード異常なし!」
設備スタッフの声を聞いた後、控え室を出て一階に向かう。
開発研究所所員Dの案内で、開発研究委員長が居る部屋に入る。
「どうぞ、右奥の部屋に入ってください。」
少々薄暗い部屋。だが、検診の時に何度もこの部屋に入った。
開発研究委員長が母船内の見学室に入り、専用の機器を使って検査する。
その機器は、ベビーホーガン部屋専用内部カメラと、そのカメラに内蔵されている細い手のように伸びる機能があった。
開発研究委員長が、検査した結果を伝える。
「母船、ベビー共に命の問題無しだ。
だが、ベビーホーガンが仰向けになっている。
母船の加圧による回転途中だと思うが、この向きで止まっていては、予定より時間がかかりそうだ。
誘発を許可する。
このまま自然に行うか、誘発か、どちらが良いか。」
操縦士は口頭で答えようとするが、
古傷に加え、母船の圧力がコックピット内で起きて
〈ヴーーーー〉
としか返答できない。
ジェスチャーで首を傾げて、悩んでいると、なんとか伝える。
開発研究委員長は、話を続ける。
「誘発の投与はできるが、効果は個人差がある。
確実に誘発できるとは限らない。
それを理解した上で、投与するかを決めて欲しい。
他に問題はなさそうだ。」
母船の圧力が一瞬途切れ、その瞬間に操縦士はコックピットから質問する。
「栄養剤の効果が効きやすい機体は、...効きやすいか。」
ベビーホーガンは、機体の素材によって栄養剤を投与して直ぐに効果が出やすい機体と、出にくい機体が存在すると聞いたことがある。
「その可能性は高いね。」
そう、開発研究委員長は答えた。
一旦、控え室に戻ることにした。
また、母船の雄叫びが鳴る。
開発研究所所員Dは、
「開発研究委員長が誘発剤の投与可能だと話してましたが、どうしますか。」
操縦士はまた喋れなくなり、必死で上下に首を振ったり、腕で丸を描いたりと、必死に投与すると訴えた。
開発研究所所員Dは、奥から紙を取り出す。
操縦士補佐官がサインする。
そのサインは、もう1人必要であった。
「操縦士さん、サイン書けそう?」
操縦士は首を振る。
「リアクションで投与すると同意を得てるので、投与しますね。余裕があるときにサインしましょうね。」
理解があって助かる。
こうして母船は人型になり、右腕に誘発剤を投与した。
母船の雄叫びが一段階上がる。
〈アー------------------〉
音階としては"ラ"の音。
腹部の圧力も2倍になった。
その数十分後、
「至急発射GATEが最大のMAXに開きました!」
設備スタッフからの知らせが来た。
誘発剤の効果バツグンだ。