Xデーまで残りあと一ヶ月
ピピッ...ピピッ...
ピピッ...ピピッ...
二万年と某日、とある宇宙船の管内で静かに機械音の鼓動が鳴っていた。
「頭ヨシ!足ヨシ!腹部ヨシ!
身長は5m。
体重は約28.0tから30.0t。
配管圧力の最高が1.20Mpa、最低が0.60Mpa。
規定内で問題なし。
心臓部位のエンジン調整完了。
位置も正常位であることを確認。」
どこかで何かの検査が行われているようだ。
「至急発射GATEも異常なし。
まだ上の方にいるようだが、いつでも発射できる状態だ。
後はこの子次第、すぐ出てくるよ。」
宇宙船に搭乗している設備スタッフ達と、
開発研究委員長の髪が青色のアフロの男性が、目の前にある装置の白色のガンダムの様な機体を眺めながら話す。
その機体の名は、ホーガン。
ホーガンは、特殊な卵形のカプセルに入っていた。
身長5mを一回りに覆う巨大な薄い卵の透明なガラス。
約1㎝の厚さで覆われている。
触れ方次第で直ぐに割れてしまうのではないかと思えるほど繊細そうなガラスだ。
よく見ると、ガラスの表面がザラザラしており、目の前のホーガンが若干モザイクがかかっているかのように見えてしまう。
卵カプセルの中にはさらに液体が入っていた。
液体の色は無色透明。
そんな繊細なカプセルに黒色の配管が、ホーガンの腹部にある白色のベルトから部屋の天井まで一直線に繋がっていた。
天井を見渡すと、とても高い。
部屋の天井から床まで一回り大きい卵型になっているので、高さは10mあるのではないか。
黒色の太い管は、天井からドーム型に沿った灰色の複数の配管に行き渡っており、その管の先には様々な機材に繋がっていた。
底にある卵形のカプセルの下には、タライのような骨組みの台座が備え付けられている。
複雑そうな骨組みには、豪華絢爛な金色で装飾されており、その骨の一つ一つに紋様が描かれていた。
その紋様を見ると、龍を連想させる。芸が細かい。
卵形のカプセルは、宇宙の重力の影響なのか、宙に浮いた状態である。
まだ台座には嵌っていない。
部屋の床一面は至急発射GATEとなっており、宇宙船の外、外界へと繋がっている。
ちなみに宇宙船は、身長15m以上あるホーガンが船に変形した母船である。
その宇宙船内に、白いホーガンがいる部屋がある。
母船の中に包含されている形だ。
母船より身長が低く白いホーガンを、ベビーホーガンと呼んでいる。
開発研究委員長は、視線を同じく搭乗していた母船の操縦士に戻し、
「母船の方は、鉄が不足している。補充をすること。本日の検査は以上だ。」
と言い、その場を離れた。
どうやらこの操縦士は、宇宙船であるこの母船と先程見たベビーホーガンの検査を依頼していたようだ。
操縦士は、微笑み顔でベビーホーガンを傍観できる『見学室』を出て、長い廊下を歩き、母船のコックピット内に戻っていった。