第22話;戦国ナイト2
大きな拍手に応えるようにお客さんに向かって深々とあたまを下げるカンゴーズの二人。
佳澄がお客さんに向かって喋り始める。
「たくさんの拍手ありがとうございます。今日がカンゴーズの本格的なデビューとなりました。今までは老人ホームなどで漫才をしてましたので若い方々にウケるかどうか心配で‥。でもこんなに皆さんに笑っていただき、本当に幸せでした。」
続いて恵も挨拶する。
「これからも看護師の仕事も、お笑いもどちらもがんばりますので応援よろしくお願いします。またライブが決まりましたら、インスタやこのお店で発表させてもらいます。ありがとうございました!」
再び、大きな拍手が起きる。
コレクションルームの楽屋では、ノブさんとヒデさんが笑顔でカンゴーズの二人を見ている。
「ヒデちゃん、いよいよやな」
「はい、ノブさん。準備は完璧です。いつでもいけます」
カンゴーズの恵が、鳴り止まない拍手を手で制止。
拍手がゆっくりと止まり、佳澄が次の出演者を紹介する。
「それでは、本日のトリをご紹介します。このバーの店長、みなさんご存知のノブさんが、自らお笑いの戦場に出陣!! 戦国漫才でお笑いの天下を目指す!ノブヒデ参上!!」
店内にノブヒデの出囃子である出陣の法螺貝の音が鳴り響く。
ハリセンを持ったヒデさん、続いてノブさんがステージに登場。
大きな拍手が起こり、客の中からはノブさんコールも湧き上がっていく。
しばらく客に向かって愛想を振りまく二人。拍手が鳴り止み漫才が始まる。
「ノブで~す」
「 ヒデで~す」
「(二人で)二人合わせて、戦国漫才ノブヒデで~す」
ヒデさんは体の前で刀のようにハリセンを持ちポーズを決める。
「ところでヒデちゃん!」
「何ですかノブさん」
「最近はどんどん医療が発達して平均寿命が伸びてきてるらしいな」
「わしも250歳ぐらいまで生きたいですわ」
「そりゃ無理やろ。なんぼなんでも細胞がもたへんわ」
「し~つれいしました。腹をめしまする」
ヒデさんステージに座り、ハリセンを刀にみたてて、切腹する動きへ。
「ちょっと待ったヒデちゃん。ちょっと、そのハリセンを拝借」
「はい」
ノブさんにハリセンを渡すヒデさん。
「そんなことでいちいち切腹してたら身がもたんわ!」
そう言って、ノブさんはヒデさんの頭をハリセンでしばく。
その音の大きさと衝撃で、ブルブル震えるオーバーなリアクションでステージに転げるヒデさん。
お客さんは、ヒデさんのリアクションを見て大笑いする。
「よし!最初のつかみOK!]
ノブさんは心の中でそう叫び、テンションがますます上がっていく。
そしてヒデさんの手を取って立たせ、再び漫才を続ける。
「でもな織田信長やったら、きっとこう言うてると思うで」
「どんな風に?」
突然、能の敦盛の一節を本格的に渋く舞いながら唄うノブさん。ヒデさんも真剣な表情でノブさんの舞を見守る。
「人間五十年~。令和の世と比べれば~〜〜〜 (突然、かわいい感じになり)短かすぎるやん!」
「なに可愛い子ぶっとんねん~」
ヒデさんは、先ほどのお返しとばかりにハリセンでノブさんの後頭部をしばく。
ノブさんはその衝撃で、ピクピク震えている。お客さんは、またもや大爆笑!
「(心の中で)よっしゃ!! 予想通りや!ウケてる〜」
ノブさんは、お客さんから見えないように右手をしっかりと握りしめる。
「もう!何すんねん。頭割れるやろ!」
「割れませんって、これぐらいで」
「でも、いいそうやろ?信長やったら」
「そんなかわい子ぶりっ子ではないと思いますが」
「ええねん。信長は感情の起伏もすごかったっていうし」
オーナーの高井の横で漫才を見ている中川の目は、ますます輝いている。
「これは、両ツッコミですな〜。それに独特な間があっておもしろい!」
「そうでしょ」
「高井はんのいうとおりですな。こんな不思議な漫才、見たことないですわ」
中川の感想を聞いて、得意げな表情を見せる高井オーナー。
「ごほん、ごほん‥」
ノブさん、突然胸を抑え咳き込むようなアクションへ。
心配するようにヒデさんが、ノブさんに話しかける。
「どうしました、ノブさん。ひょっとして、私のハリセンのせい?」
「いや、そうでは‥ ごほん、ごほん、むほん、むほん。 そや謀叛の話やけどな」
「なんですか、その話題の変え方は?」
ノブさんの無茶振りに、お客さんの軽い笑いが起きる。
「実は令和の若い子も、よう謀反しとるらしいで。」
「謀反といえば本能寺の変!!」
「なんか変かも♡~」
「あっ、また可愛いパターンでた!」
再びヒデさんのハリセンが、ノブさんの後頭部に炸裂。
しかしノブさんは、ハリセン攻撃に全くたじろがず漫才を進めていく。
「ちゃうねん。 今でいうたら会社への謀叛、つまりリベンジ退職が若い子の間で流行ってるっていう話やねん」
「そんなんあるんですね。働けて給料がもらえるだけでも幸せちゃいますの、こんな物価高で大変な時代に」




