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ノブヒデ 令和・笑いの乱  作者: ハッシャン
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第17話:時空を超えるガラシャ

 カトリック城南教会の大聖堂内部には、午前のやわらかい陽射しが窓から差し込んでいた。美しいステンドグラスには、高山右近と細川ガラシャの姿が描かれている。


 実はこの教会、戦国から安土桃山時代に活躍した細川忠興の屋敷跡に建てられた教会である。当時畿内では、熱心なキリシタン大名であった高山右近。高山右近とキリシタンの話を夫である細川忠興から聞き、カトリックに改宗したと言われる細川ガラシャ。その二人をこの教会は讃えているのである。


 二人のシスターが、聖堂を出ようとした時、祭壇近くの椅子と椅子の間で輝く大きな光の玉があらわれる。


「シスター中澤!あれを」

「まさか、神がこの世に?」


 聖堂の出口あたりにいた二人は、光の元へ引き返す。シスター岩崎の足が速く、先に光の側に到着する。


「シスター岩崎! それ以上近づいちゃダメ!」


 あまりの光の強さに、手で自らの目を覆う、シスター岩崎。シスター中澤が光の側に到着した時に、光は一気に収束して消える。そこに現れたのは、椅子の上に倒れ込んでいる下げ髪で着物姿の女性。よく見ると手には、十字架を握っている。




 令和のタコさん滑り台のある公園では、ノブヒデが謀反の話を取り入れたネタを練習中。

ノブさんが、必死にボケ部分を一人で熱演している。


「2回も謀反した松永久秀なんか、ワシに茶釜渡すの嫌やから言うて、茶釜と共に爆死やで。どう思うヒデちゃん?」


 ノブさんが、ヒデさんの方を振り向くと、ヒデさんは空を見てじっとしている。足元にハリセンが落ちたまま。どこを見ているか確かめようと、ヒデさんの目の前で手を振るノブさん。


「おーい、ヒデちゃん。大丈夫か〜」


 それでも、全然反応しないヒデさんの姿を見て、やはり謀反のネタが不味かったのかという気持ちが横切る。


「ヒデちゃん、悪かった。やっぱり謀反のネタのせいやろ。なぁ、わしが悪かった。元に戻ってくれヒデちゃん!」


 声をかけながら、両手でヒデさんの肩をはげしく揺さぶるノブさん。すると、やっと意識が戻ってきたのかヒデさんは、急にノブさんの方へ振り向く。


「おう!大丈夫か」

「えっ、何がですか」

「急にヒデちゃんが、何も喋らんようになって、ぼおっーと空見て固まってたから心配してたんや」

「すみません、ヒデさん。ネタが飛びまして」


 ノブさん、落ちているハリセンを拾ってヒデさんに渡す。


「命より大事なハリセン、しっかり持っといてや」

「すみません。実は…」

「何や?」

「急に、頭の中に光みたいなのが走って、真っ白になって」

「わかった。まぁ、ちょっと休憩しよ」

「はい」


 二人は、ベンチに座り、ペットボトルのお茶を飲み一服する。ノブさんには、自分がこの公園でヒデさんを見つけた時の記憶が蘇ってきた。


「そういえば、わしがここで初めてヒデちゃんを見つけた時、あの時も光が走ったわ」

「そうなんですか?」

「ああ、このベンチでウトウトしてたら、頭の中で稲光がピカッとして目が覚めてな」

「そしたら私が、あの滑り台のところで寝ていたということですね」

「そうや。だから今、ヒデちゃんの頭の中で光が走ったということは…」

「私に関係ある誰かが、この世にタイムスリップしたと?」

「その可能性が高いんちゃうか」


 腕を組み、少し考え込むヒデさん。


「ちょっと待ってくださいよ」

「なんか思い出したんか?」

「逆に思い浮かばないんです。ノブさんも私も命が奪われそうになった時タイムスリップしましたよね」

「そうやな」

「私に近いところで、私の知る限りそんな人物が思い当たらないんです」

「ヒデちゃんには悪いけど、わしが学んだ歴史では、山崎の戦いの後ヒデちゃんの一族はすべて自害。そして家臣も皆、秀吉の命で処刑された。そやから誰もタイムスリップして消えたという事実はないんや。ほんま辛いこと言うてすまん」

「それが戦国の世では当たり前のこと。もう気にしていません」

「そうか」

「たぶん、この世に飛ばされた疲れが、今になって出てきただけですわ」


 笑顔になったヒデさんを見て、ノブさんも気持ちを切り替えて元気に振る舞う。


「よしわかった!それやったら、またネタ合わせ始めよか」

「はい!  でもあの松永久秀が爆死せずに、この世に来てたらちょっと嫌ですけどね」

「そやな。でもそれもおもろいかもな。爆発と同時にどこかの時空に飛ばされて、また悪さをはじめるとか」

「なんか、話が広がっておもしろそうですな」

「ほんなら、ネタ合わせの前に、ちょっとネタ修正するからちょっと待ってくれるか」

「わかりました!」


 ノブさんは、ネタ帳を開き、新たなネタを書き加えていく。




 カトリック城南教会の聖堂で、シスター中澤とシスター岩崎は、着物姿の女性を前に呆然と立ちすくんでいた。気を取り直し、シスター中澤が、着物姿の女性の腕を取り、脈を確認する。


「生きてる。気を失っているだけ」

「よかった。でもこの姿、どこかで見たことのあるような」


 シスター中澤が、ゆっくりとステンドグラスの方を見て少し驚いた表情を見せる。


「まさか、あの方」


 シスター岩崎もステンドグラスに描かれた女性の絵を見る。そして目の前の着物姿の女性を凝視する。


「(ちょっと大きめの声で)もしかして、ガラシャさま!?」


 着物の女性は、自分の名前が呼ばれ目を覚ます。慶長五年の夜、家老に槍で胸をひと突きされたはずの細川ガラシャその人であった。

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