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ノブヒデ 令和・笑いの乱  作者: ハッシャン
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第16話:謀反ネタ

 朝のタコさん滑り台がある公園。滑り台の横では幼稚園に子供を送って行ったと思われるママチャリの主婦3人が、井戸端会議をしている。


 ベンチでは、ノブさんがネタ帳らしきノートを手にヒデさんと打ち合わせ中。


「ヒデちゃんさ、わしな、ネタの中に謀反の話いれようと思ってんねんけどな」

「謀反ですか?」


 ヒデさんの脳裏に、また一瞬、本能寺の変の時の自分が焦っていた気持ちが蘇る。


「謀反はちょっと抵抗があるというか…」

「でもなノブとヒデで戦国漫才やってたら、謀反のネタは避けられへんと思うねん」

「まぁ、そうですね」

「わしはこの前も言うたけど、もうなんとも思ってへん。ただヒデちゃんの気持ちは、まだそこまで割り切られへんのも分かるけどな」

「はい」


 力なく答えるヒデさん。しかし、このままでは何も前に進まないと気持ちを切り替える。


「いや、私も、ずっとあの時の気持ちでウジウジしてるつもりはないので」

「そこで考えてん、まず本能寺の変のことがメインではなくて、もう少し他の謀反を取り上げてはとな」

「他の謀反というと、荒木村重とか?」

「そう!!それとか松永久秀とかな。いろいろおったやんワシを困らせたり嫌がらせするような謀反が」

「そういえば、いましたね、そんな輩が」


 自分の謀反ネタではいことで、少し人ごとのように気が楽になり、笑みを浮かべるヒデさん。


「そもそも、わしの古参の家臣、柴田勝家も最初は謀反人やってんで。知ってたか?」

「はい、話だけは」

「まぁ、戦国の世はどんな大名でも謀反を経験してるわな」

「大変な時代でしたな」


 しみじみ話すヒデさん。タコさん滑り台の横では、ママ友たちが、楽しそうに笑っている。その姿を見て、ヒデさんは、令和の世がつくづく平和であることを実感する。


「でもな、久秀に至っては2回も謀反しよってん。知ってるやろ」

「そうでしたな。不思議な男でした」

「そやからこの不思議な男、少し笑える男、久秀を大きく取り上げて笑いにするって言うのはどうやろ」

「それは面白くなりそうですね」

「この久秀の謀反に準えて話題にするのがこれや!」


 そう言ってノブさんは、勢いよくネタ帳に大きく文字を書く。


「リベンジ退職!!」

「何ですか?それ」

「最近、わざと会社が困るような辞め方をするやつが増えてるらしいねん」

「そうなんですか。私は、この令和の世に来たばっかりなんで知りませんでしたわ」

「そりゃそやな」


 タコさん滑り台の公園に、疲れ果てたサラリーマンがとぼとぼと歩いてくる。ノブさんは、その姿を目で追っていく。


「この令和の世の中では勤め人も相当なプレッシャーを受け取るんねん。

ブラックな会社では、社員をこき使ったり、上司が部下に嫌がらせをすることもある」

「きつい会社があるんですな」

「そういう仕打ちを受けた勤め人がな、会社に復讐するために、わざと会社が困るような辞め方をしよんねん。それをリベンジ退職というんや」

「そうなんですね。では松永殿の謀反も、ノブさんの仕打ちに耐えかねてということですね」

「それは違うわ。わしは松永にきつく当たったことないで。ただ松永が損得勘定だけで謀反しただけ」

「それやったら同じとは言えませんな」

「そこでやな、わしが一人ボケつっこみで言うんや。(漫才風に)『信長やったらこういうてると思うわ。松永なんか2回もわしを困らせるために謀反しよってな〜。 令和で言うたらリベンジ退職ですわ。そうなんです織田軍団と言えば戦国の大ブラック軍団ですから〜。誰が大黒マキやねん』 どう?ヒデちゃん?」


 大黒マキのこともわからずに、固まって聞いているヒデさん。ちょっとついていけないと思いながらノブさんに質問する。


「大黒なんとかって何ですか?」

「令和の人やったら、みんな知ってるロック歌手や。真っ黒と大黒をかけたんや」


 そうノブさんが答えても、何かピンときていないヒデさん。


「悪かった悪かった。ちょっとヒデさんには難しすぎたな。あとでもう少し詳しく教えるから、このノリで練習や」

「わかりました。ノブさんを信じて、ついていきます!」

「ほな、ネタ合わせ、はじめよか。途中、謀反の話にきたら、ちゃんと確認しながら進めるし。心配いらへんで」

「わかりました」


 ノブさんとヒデさん、ベンチから立ち上がりネタ合わせを始める


「よし。いくで〜」

「はい」


「ノブで〜す」

「ヒデで〜す」

「戦国漫才!」

「(二人で)ノブヒデで〜す」


 ノブヒデの二人が漫才のネタ合わせを始める。




 ちょうどその頃、大阪城の南に位置するカトリック城南教会では朝のスケジュールが終わろうとしていた。朝のミサ、黙祷を終え、大聖堂から出てくる神父やシスターたち。まだ22歳の新米シスター岩崎とその2年先輩のシスター中澤が、聖堂内でミサなどの後片付けをしている。


「シスター岩崎。もう慣れましたか、修道院の生活は」

「はい、シスター中澤。もうつらさというものは消えました」

「それは何よりですね」

「今はいかにして神の御心に近づけるかということだけを毎日の目標にして励んでおります」

「私もそうよ。これからも共に励みましょう」

「はい、シスター中澤」

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