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ツキミソウ  作者: まお
2/5

記憶

5月30日。月曜日はめんどくさい。

朝から学校に行ったって誰も褒めてくれないし、どーせ今日も教室になんて行けないまま帰ってくる。


そーいや今日はテストだった気がするけど、まぁいいか。途中までやってあとはサボろう。

どーせ後日やらされる。


希望なんて持たずに。期待なんて背負わずに。

ただ体を学校に運んで、数時間居座ってまた家に体を運ぶだけ。大丈夫。嫌なことなんてない。


今日は足をとめずに、しゃがまずに登校できた。

犬の散歩をしてるおじいさんにも挨拶できた。

上出来だ。私すごい。


家に帰ってから、イラストを描いて音楽を聞いて。特に何事もなく20時を過ぎようとしていた頃、一通の通知がきた。


「こんばんは。突然ですが、僕はユウキではありません。」

何だこの怪しい文章は。可笑しい。

でも、間違いなく彼からの連絡だった。ユウキではない彼…多重人格にでもなったのだろうか。

「こんばんは。申し訳ないですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」

あくまで冷静に、丁寧に返す。どう来るだろう?

「名前は特にありません。」

…ここから話をどう繋げろと…?そんな疑問を抱えていたら続きが来た。

「記憶がないんです。」

あぁ…全部忘れたのか、彼は。もう居ないのか…性格はどこまで変わっているだろうか…また仲良くできるだろうか…。君を、愛していてもいいだろうか。

そんなことを考えつつ話を進めると、また悲しい話をされた。


「余命があるそうです。」

それは皆あるのでは…?

「生きられないんです。3ヶ月もしないうちに。」

だいぶ特徴的な言葉の並びではあったが、おそらく余命宣告をされ、長く持って3ヶ月なのだろう。

彼は新しく記憶を作る期間はない。

頑張っても生きられないのか。なるほど。

…きっついなぁw

不思議と笑った。嬉しくない。なのに笑った。

なんだ私の表情筋、おかしいぞ。


脳内でふざけるしか、できなかった。

彼のためにできることがわからなかった。だから、願い事を言ってみた。内容は

「私と一緒にいて欲しい。お母さんになにか物を残して欲しい。大切なものを作らないで欲しい。」

最後に関しては、性格が悪いと思う。

でもそれくらいしかないのだ。


ユウキは人一倍優しく、寂しがり屋でかまちょで、怖がりだった…。

今の彼がどうかは分からないけど、前と変わらないなら大切を知らなければいい。

死ぬとどうなるか分からないことを知れば怖がり、私や他の人を愛せば苦しむだろう。

すぐに離れ離れになるのだから。

それに、誰かの大切になれば相手が苦しむ。それはユウキが1番望まないこと。1番苦しむこと。

それだけは避けないと。


なんで私が頑張ってるんだろう、なんで私ばかり大切を奪われるんだろう。そばにいたいと願っただけでこの仕打ちなのだから、きっと私は極悪人だ。

さすが私。さすがクズ女。さすが…。


久々に流した涙が頬の水分を奪っていく。

すぐに涙は乾いて、頬が濡れることはなかった。

薄情者。


あぁ、もうこんな時間。寝ないとね。

寝ないとユウキが怒っちゃう。もういないけど。

鏡の私が今日の最高の笑顔を見せてきた。

おやすみなさい。

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