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蓮の花は後宮で輝く  作者: 速見 沙弥
9/46

〜9〜


その日から2人は度々時間を共にした。ご飯とお菓子を持ち寄り分け合う。次の日にちを書いた紙をいつもの木の根元の裏に隠して置かれている。

いつからか蓮花は次の時が来ることが待ち遠しくなった。雲嵐が教えてくれる話は小さな世界を生きている蓮花にとって新鮮なことばかり。

遠征に行った先での変わった料理。虎州の港が盛んなところでは海の近くに市場があり、食堂のご飯が美味しいこと。渓州には人と同じくらい大きな鳥がいること。蘇州では年に一度男女が好きな相手に耳飾りを贈る風習があること。


「じゃあ雲嵐様は沢山の女人から耳飾りをもらうでしょうね」

「なぜだ?」

「だって雲嵐様はとてもお優しいですし、お綺麗ですから。きっと雲嵐様の瞳と同じ翡翠の耳飾りが似合うと思います」


そう言いながら雲嵐の瞳をみつめる。陽の光が入ってキラキラと輝くこの瞳が蓮花は好きだった。宝石のようで自分が独り占めするには勿体ないくらい綺麗だ。


はっと我に返った蓮花は咄嗟に目を背け話題を変えようと口を開くがなかなかいい言葉が思いつかない。


「俺は……」

「え?」

「不特定多数の女人にもらうよりも、大切なただ1人から貰えればそれでいい」


キッパリ言い放った雲嵐を見ると真っ直ぐ蓮花をみつめる翡翠とぶつかる。まるで初めて会った時の去り際に背中に感じた視線のような熱さがそこにはあった。


「えと、雲嵐様は誠実でいらっしゃるんですね!」

「誠実、か……。蓮花」

「はい?」

「そなたに言わなければならないことが」


神妙な面持ちで話し始めた雲嵐が途中で止まる。雲嵐の目線の先を辿るとにこやかに一礼する青年がいた。


「すまない、この話はまた今度必ずする。今日は時間が来たようだ」

「わ、わかりました」


心なしか悔しそうな顔をして雲嵐は青年と共に去って行った。


「なんの話をしようとしていたんだろう……」


雲嵐の背中を見送る蓮花の頭にさっきの彼の顔がこびりついていた。




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