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たださみしかっただけ  作者: 朝月
五章 キキ
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No.9  崩れていく

 未だに目の前で起こった事が整理できていない。

――ハイネがソル達を傷つける訳ない。

 そう信じてる、信じたい。

 悪魔型って呼び名だからって悪人な訳じゃない。

 契約してるからって悪い事をする訳じゃない。

 だからハイネもただ契約してるだけなんだろ?

 ソル達が何かされたのだとしたらその犯人は別の誰かなんだろ?

 頼むからそう言ってくれ。


「ハイネ――」


「来てキキ」


 キルの言葉を遮りハイネが契約している悪魔型だと思われる名前を呼ぶ。

――やめてくれ、それじゃあ本当にお前が犯人みたいじゃないか。

 ハイネの言葉に反応して、ソルがセンを呼んだ時と同じように黒い穴が現れて何かが飛び出してそのまま翼をはためかせて空中停止する。


「もうバレたのね。ずっと魔術使ってるの疲れたでしょ」


 そう話す悪魔型の言葉に項垂れる。

 もう言い訳できない。

 少し顔を上げてハイネと契約している悪魔型を見る。

 目立つピンクの髪は耳より少し高めのツインテールで少しつり目気味の瞳はこちらを見下ろしていた。

 目を引く黒ビキニの様な格好に薄めのコートを肩落としで羽織っている。

 背中からはレイと同じ翼が左右対称にあり、レザータイトのミニスカートからは三角をさらに尖らせたような形の尻尾が生えていた。


「うん、でも作戦は予定通りだよ」


「ちょっとキキ! 何でオレの職場をドロドロの昼ドラみたいにするの?!」


「え?! レイ?! 何でここにいるの?!」


 レイが羽ばたき、キキの目の前まで飛んで行く。

 すると見るからにあたふたとレイから距離を取るように後退して行く。


「ちょっとハイネ! レイは居合わせないようにするって言ってたじゃない!」


 ハイネの隣に降り立つと両肩を揺らして抗議をしているが、ハイネは苦笑いで適当に流す。


「あー……うんごめんね」


「ちょっと!」


 その間にもフィーやミルがハイネとの距離を詰めていっているのが見えた。

 何かされていたソル達は終始呆然としており何も動かない。

 またキルも自分がどうするべきなのか決めかねていて身動きが取れない。

 ハイネにも皆にも傷ついてほしくない。


「もう埒が開かないからいくよ!」


「後で言い訳聞かせてもらうからね!」


 ミル達の動向を知ってか知らずか矢継ぎ早にキキを振り切ると右目が赤くなり始める。


「なっ!?」


 ハイネはケイルが発現してない、もちろん紋章もない。

 なのにどうして。

 浮かび上がったのは『愛』の文字。

 その瞬間、カウンターの椅子に座っていたはずのソルの方から金属音がして振り返ると固有武器を構えていた。


 誰に対して?

 まさかハイネに――いや、俺だ。


 驚きからか硬直しているハクを抱き、ゆっくりと振り下ろされてくる固有武器を易々と避けながら距離を取る。


「おいソル何してんだよ!」


「あ! 皆ソル達から距離取って!」


 キルの声に呼応するようにレイが切羽詰まった声で他の皆を捲し立てると外に向かって飛んでいく。

 周りを見渡すと、いつの間にかフォミとエンもソルと同じように固有武器を構えて棒立ちしていた。

 表情は無く、まるで操られているようだった。 

 何が何だかわからないが、明らかに正気じゃない三人を置いて食事処を出るとレイが「こっち!」と手招きをしながら二階の事務所に向かって飛んで行っているのが見えたのでついて行く。

 事務所に入るや否やリルがすぐさま内側から鍵を閉める。


「レイ、あれはどう言う事?」


 顔には出ていないが不機嫌そうな雰囲気のフィーがレイの目の前に立つ。

 レイは気まずそうに頬を掻きながら苦笑いをする。


「キキ……ハイネちゃんと契約してる悪魔型のケイルだよ。ハイネちゃんは契約者だからキキのケイルも魔術も使えるからね。ケイル『愛』は恋愛感情で自分の事を一番好きな人間を操れる。それにキキの魔術は『好感度操作』で触れた人間の他人に対する好感度を上げたり下げたりできて、超相性がいい能力なんだよ。ケイルは浮かび上がらせるだけで発動するし、魔術の発動条件は肌に触れる事。まあ実質触れれば勝ち確みたいな所あるね」


「まさかあの時……」


 触れるだけで相手を操れる力。

 確かにハイネは何かにつけて誰かとスキンシップを取ろうとしていた。

 今考えれば元々そんな事をする性格ではなかった。

――全部この為に。いい加減腹を決めろ、ハイネを止める……でも俺にそんな事できるのだろうか。


「じゃあの三人の様子がおかしかったのは魔術の所為で、今こっちに攻撃仕掛けようとしてるのはケイルの所為って事?」


 窓からこっそり外の様子を確認しながら話をまとめるミルをレイが肯定する。


「そういう事! はぁ、全く……キキに契約者ができたのは知ってたけどまさかハイネちゃんだったなんて……」


――ん? 待てよ。

 先程までハイネと親しげに話していたキキを思い出してみると、何故か聞き覚えのある声だった気がする。


「……もしかしてキキって前に俺の事見張ってた奴か?」


 思い出した。

 あの時否応無しに逃してくれたあの声。

 争い事は嫌いそうな口ぶりだった事を思い出し、とてもじゃないが悪い奴には見えなかった。


「そうそう、キルちゃん拉致した時に契約者いるから現世に行けるキキに手伝ってもらって――」


 突然レイの動きが止まり、冷や汗を流し出す。


「……もしかしてそれでハイネちゃんにキルちゃんの居場所がバレた?」


 レイが引き攣った口角で油の切れたロボットのようにカクカク動きながら他の人の反応を見渡すと皆呆れ顔。


「遅かれ早かれハイネは俺を見つけていただろう。レイのせいじゃない、そうだろ?」


「そうだね。それでキル君はハイネ君の目的に何か心当たりは無いのかい?」


「……俺に恨みはあるだろうが俺に何かするなら何度も機会はあった。皆を巻き込む理由って言ったら……俺を、苦しめる為……くらいしか思いつかないんだ。でもハイネが関係ない人に危害を加えようとしてるなんて思いたくない……悪い……」


 ハクを抱く腕に力が入り、ぴゃっと鳴く声で腕の力を抜く。

 キルのそんな様子を見て心苦しいのか腰を低くしたレイが会話に入ってくる。


「……ちなみにキキからは何も聞いてないよ。会ったのはあの時が最後だったし、昨日家に行ったけど入れ違いになっちゃってたみたいだから」


 キキの口ぶりから、レイがこの場にいる事事態が予定外なのだろう。

 もちろんレイは今回の事に何の関係もなく、むしろ一人で抱え込んで証拠まで探してくれている。


「レイは何も悪くないだろ? そんな顔しないでくれ。お前にはむしろ感謝しないといけない」


――昨夜のことも含めてな。

 無理矢理にでも笑顔で話すと、空元気か本心かは分からないがレイの表情はいつもの子供のようなものに戻っていく。


「それでこれからどうするの? 下で暴れる様な音がし始めたんだけど。このままだと建物が崩壊しちゃうかもしれないわ」


「ミルにも聞こえるよ。でもいつもはフォミが方針決めてたからね……リルが決める?」


 獣人の二人にはキル達には聞こえない音が聞こえているようで心配そうに外を眺めているが、ここからでは食事処内の様子は見えない。

 ミルに名指しされたリルは少し唸るような声を出しながら考え込むポーズをして「いや」とミルの言葉を否定する。


「今回はレイ君に作戦指揮を任せるよ。敵の情報を一番持ってる君が先導した方がいいでしょ。じゃあお願いね」


「え?!」


 リルは一方的にそう告げ、レイの肩を叩くと事務所のソファに腰掛ける。

 絵に描いたような丸投げにレイの翼は飛ぶ訳でもないのに広がり、尻尾もピンっと立っている。

 再び笑顔も引き攣って目を見開いている。


「ちょっと待って本気?! オレなんかに指揮やらせて大丈夫だと思ってるの?!」


 今度はレイがソファまで駆け寄って行ってリルの肩を持ち前後に振る。


「大丈夫だよ、全部任せるから。でも時間が無さそうだから早めによろしくね」


 リルが足元の床を指差すと通常型のキルにも聞こえるくらい何かが壊れているような音が聞こえ始めていた。

 確かにこれ以上時間をかけるのはあまり得策では無いだろう。


「えー……じゃあ――」


 自信なさげなレイの口から作戦が告げられる。

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