No.13 償えない
事故の傷が回復してからフィーへの態度を改め直した。
――理由はわからないが、暴力じゃあいつは泣かない。
初めて聞いた大声が自分をいじめているエン達を案ずる声とは一体どういう事なのだろうか。
今まで全て暴力で解決してきたエンにとっては前代未聞でシロ達と相談しながら色々試したがやはりフィーは動じなかった。
「チッ何しても全然動じねえ、次はどうするか……」
大きく舌打ちをし、頭を掻く。
負けた気がして癪だが父親の部下に相談してみる事にした。
しかし皆単細胞で、暴力、暴力、暴力、俺も同じだったとはいえため息が出る。
その中で一人だけ違う事を言う奴がいた。
それはした事がなかった為実践する事にした。
今は誰も済んでない小屋、そこで決行する事にした。
小屋に着くと、フィーを小屋の中めがけて蹴り飛ばし内側から鍵を閉める。
起きあがろうとした所を、腹の上に座り阻止する。
やはり抵抗はしない。
「なあ、こうすれば女は皆泣くんだろ?」
「……」
――また無反応かよ、まあ直に耐えられなくなるだろう。
部下に聞いたのは強姦。
行為自体は知識として知っていたがまさか子供を作る以外の目的でもする事があるとは思っていなかった。
服を剥ぎ取ろうと手をかける。
――あれ、あったかい。それもそうか生きてるんだから。
そういえば意識的に人肌に触れるの初めてな気がする。
「ぅ……ッ」
フィーのうめき声で我に返り、邪念を捨てる。
きたきた、想定より早いが――
「……め……さい……ん」
次第にフィーの呼吸が早くなり、身体も小刻みに震え出しブツブツと何かを呟いている。
早い所か、想定以上の事態に硬直する。
「ごめんなさい、おじさん、ゆるして、やめて」
「は?」
望んでいた瞬間は呆気ないものだった。
フィーは手で頭を隠し震えている。
そして目からは次々と涙が出てきて止まることを知らない。
しかしフィーの瞳はエンを見ていない。
驚いて思わずフィーから離れてしまったが、フィーの様子に変わりはない。
普段からは想像もできないような怯えぶりに気が動転する。
――これが見たかったはずなのに。
「おい、フィー、何言ってんだよ」
誰のことを言ってるんだ?
お前を泣かせたのは俺だぞ。
「……ああ! もう!!」
「ひッ」
咄嗟に身体が動いた。
先程より少しだけ冷たくなったフィーを腕の中に収める。
ただ頑なに泣かなかったこの女が、その瞳が自分を映していない事に酷くムカついた。
さらに震えが酷くなったフィーが涙にまみれた顔で硬直している。
「……なに勝手によくわかんねえ事でそんなになってんだ。俺が何しても泣かなかったくせに」
――待て、待て待て待て。今俺はなにしてる。落ち着けこんな事するのは柄じゃないだろ。
何でこんな事をしたのかと言われたらわからない。
今はただ自分の心臓の音がうるさくて。
ムカついていたはずのあいつの泣き顔が想像してたより可愛くて。
顔が熱くなる。
「……えん?」
「……なんだよ」
――やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ。
「えん、えん、うぅあ……あぁああ」
先程とは違いエンの服に縋り付き、声を上げてなくフィー。
結果的に泣かせたというより慰めてしまった事に気づくが、今更この子を泣かせようとは思えない。
「何なんだよ一体……」
その後フィーは気絶してしまったので学校まで連れ帰って放置して行った。
「エン……」
「ッ!」
次の日会っても前日の出来事を思い出して避けてしまった。
――あいつあんなに可愛かったか?
学校から帰ると速攻自室に篭り、頭を抱えて悩む。
何度思い直してももういじめる気にはなれず、あの日の事を何回も思い返してしまう。
そして何故かあの時から右目に違和感があり、思い出す度に痛みが出ることがある。
いやいや今はそんな事より――マズイ、惚れた。
しばらく学校には行かなかった。
フィーとどう接したらいいかわからなかったし、今更惚れたなんて虫がいい話なのはわかってる。
「エンさん、フィーの親逮捕されて孤児院に引き取られたみたいですよ」
「えっ?!」
自身の罪に気づいた時、すでにフィーはエンの前から姿を消していた。




