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No.8 そういう人

 レイが倒れてしまった。

 助けなきゃ、助けなきゃ。

 そう思うばかりで体は動かない。

 どうしてこんな事に。

 何でこんな所で会うんだろうか。

 ギニアのケイルは知っている。

 何度も伝えようとしたが、口さえも思うように動いてくれない。

 レイがギニアの術中にはまっているのを見ている事しかできなかった自分が情けなくてしょうがない。

 ギニアが眠っているレイに近づいていく。


――やめてレイに近づかないで。


「おーい聞こえてるかー? お前俺のケイル探ってただろ? 俺のケイルは『写』、俺の体液飲んで配下になった奴の内一人の状態を標的一人に写す、つまりはコピーするんだよ。三分間ずっと標的を視界に入れ続けておかないといけねぇんだが知らない奴はホイホイ引っかかる」


 レイから反応はない。

 固有武器も倒れた時に消えてしまった。

 当たり前だ、レイの作った強力な薬の効力をそのまま写されてしまったのだから。


「つまりルークが寝てから三分間お前は俺の視界にいた。あいつの状態をお前にコピーするには十分な時間だったってだけだぜ」


 ギニアがレイに向かって足を振りかぶるのが見えた。


「ゃめッ……!」


 そんな声は誰にも聞こえるはずもなく、ギニアは何の躊躇もなく怪我をしている横腹を蹴り飛ばす。

 そしてまた近づいていく。


「はぁー……なあ聞いてくれよ。ルークは賢そうな見てくれの癖に中身は馬鹿だ。だから視てないと意味のないケイルなのに訳わからないタイミングで振り返ってお前に足元を掬われた。一度見たことある動作を相手がもう一度する時どう行動をするかわかるっていう未来予知もどきのケイル持ってんのに中身が馬鹿なせいで台無しだぜ。リョウはお前の指摘通り敵を舐めすぎ。ルークとリョウが上手く連携取れれば強いんだがなー。あっちの二人は連携バッチリなのにやる気ゼロ。全く嫌になるぜ」


 意識の無い相手に向かって遠回しに部下にダメ出しをするのは恒例行事なのだろうか。

 起きている二人はギニアの方を見ることなくそっぽを向いているが動揺はない。


「それに比べればお前の方がよっぽど優秀だぜ? この戦いが終わったら配下に欲しいくらいにな。そのケイルで適当に他の配下を眠らせるなりなんなりしたら後は俺が標的にコピーするだけ、仕事が格段に楽になる――平和的に配下になれるといいな」


 レイの頬を踏みつけたと思ったら軽く蹴る。

 この人は最後に会った時と何も変わっていない。

 全てを自分の思い通りに支配しようとする様は何度見ても恐ろしい。


「さてフィー」


 突然ギニアが振り返る。

 不意のことだったので思いっきり目が合ってしまった。

 すぐに顔を伏せるがすでに手遅れで、過呼吸になりそうな肺を押さえる。

――今発狂したらダメだ、またレイが酷い目に遭うかもしれない。

 足音がする。

 近づいてきている。

 優しさのかけらも無い動作で力強く頭に手を置かれる。


「心配したんだぜぇー? お前の母親と一緒に警察に捕まった後、異名保持者の俺だけ先に釈放されて家に帰ったらいないんだもんな?」


「孤児院、に、いれ、られて」


 お願いだから震えないでよ。

 ちゃんと抵抗しないと。


「そうかそうか、まあそんな事はどうでもいいや。で、お前は今からどうするんだ? 現状三対一、守ってくれる仲間はもういないぞ?」


 頭を掴んでいた手は下へ降りて行き、頬まできたと思ったら両頬を挟むように掴まれて強制的に目を合わされる。


「あっ……う、ぁあ...い、や」


 頭が真っ白になる。

 あるのは暗闇のような真っ黒な恐怖だけ。


「まあ抵抗できないだろうな。おいお前ら、この二人を捕虜にする。そこのおかしな羽の生えた男を捕縛して少し待っとけ」


「了解しました」


「フィーは俺と来い。また昔みたいに可愛がってやる」


「ぁ、いや、いや、やめ、ておじ、さ、ん」


 襟首を掴まれそのまま引きずられていく。

 拘束されている訳でもないのに手足は縮こまるばかりで抵抗することさえもできない。






「了解しましたって言ってたけど、この蝙蝠男どうするの」


 シューがその辺で拾った木の枝でアクセサリーなのか何なのかわからない黄色い輪っかを突いている。

 本当に蝙蝠型なのか?


「まあ妥当に本拠地……はちょっと遠いから中間地点のテントにでも連れて行こう。シューが抱えて飛んでって」


 するとシューは真顔でいつも噛んでいる風船ガムをプーッと膨らませる。

 本人は気づいていないようだが、機嫌が悪かったり嫌な事があるとガムを膨らませる癖がある。


「重そうだから嫌だ。他の人呼ぼうよ……ねぇレジ知ってたん? この抗争の敵陣に隊長の子供がいるって事。俺子供がいることも知らなかったんだけど、親子ってあんな感じなんだね」


 いや世界中の親子が皆あんな感じだったら人類が滅ぶ――と教えてやりたいがおそらくキョトンとした顔でハテナを飛ばされるだけなのでまた今度ちゃんと説明しよう。


「抗争に参加してるのは誰も知らなかったと思う。でも義理の娘がいた事は何かの時に聞いた、確か再婚相手の連れ子だったかな」


「ぎりのむすめ……」


 シューは難しい顔をして眉間に皺を寄せる。

 偏った知識しか持ち合わせていない子なので義理という言葉と娘という言葉がくっついているのが何でなのかわからないのだろう。


「まあ難しいから娘でいいよ。母親は窃盗、隊長は複数の強姦罪で同じ日に捕まってから娘は行方不明だったみたい」


「あーそれならわかる」


「あの様子じゃあの子も隊長の被害者の内の一人だね」


「そっか」


 もう興味を失ってしまったのが丸わかりな返事をした後、シューは通信機を取り出し蝙蝠もどきを迎えにくるように連絡している。

 少し話して人差し指と親指で丸を作ったオッケーサインをこちらに向けてくるので誰か来てくれるのだろう。

 迎えがくるまでは寝ている同僚二人と捕虜一人のお守りをする事になる。

 正直戦うより面倒くさい。

 大きなため息を吐くとシューに「どうしたん?」と聞かれたので「何でもないよ」と返す。

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