No.5 おそらく百人以上
パンドラとの戦いが始まり一時間が経過した。
やはり人数で押してくる作戦だったようで、部隊を組んで固まって動いているようだ。
しかし予想していたより少ない人数に焦りが出る。
ここにいないと言う事は――
「チッ……他の場所に人数流れていってるな。シロ戦況は」
「探知距離を半径五キロメートルに広げます」
片耳につけている無線機でシロに指示を出す。
シロのケイルは『索』、自分を中心に周りの人間の位置を完全に把握でき、知っている人間なら誰がどこにいるのかがわかるというもの。
消費忌力を増やせば距離を広げられる。
シロの仕事は後方で索敵してそれを前衛に伝えることだ。
「ミルさんのいるA班は終始こちらが優位です。私達のいるB班は五分五分でしたがもうすぐ優位に立てます」
「ケイル持ちが五人いるって話だったよな? そいつらがどこにいるかわかるか」
「……はい」
一瞬間を置いて話す態度に違和感を覚える。
シロの所にはトーリもいる、つまりは情報戦で負ける事はない。
それなのに歯切れが悪い言い方をするというのは何故だ。
「……先程C班連絡係から連絡がありました。ケイル持ちは全員C班の持ち場にいます。そしてその内の一人は異名保持者だと判明しました。なので劣勢とまではいきませんが――押されています」
「ッ! フィーとレイがいる所じゃねぇか!」
心臓が脈打つ音がする。
――もしフィーが死ぬなんて事があったら。
人が死ぬ所はたくさん見てきた。
最悪の情景が頭をよぎり、振り払うように頭を振る。
武器を持って襲って来る敵を薙ぎ倒しながら、目視できる限りの戦況を見渡す。
とてもじゃないが抜けれる場面ではない。
「ミルはすぐに向かえないのか! 優位に立ってるなら抜けても大丈夫だろッ」
「A班連絡係と連絡が付きません。おそらく機器を破壊されたかと」
舌打ちを鳴らし「ミルに通信」と呟く。
眼前に長方形の立体映像が現れるが、一向にミルを映す素振りはない。
傍受されるから普通の通信機を使うなと指示を出していたことが仇となった。
「――俺がケイル持ちの所に向かう。いいな」
仕事に私情を挟んで馬鹿な事を言っているのはわかっている。
「それは愚策です」
少し離れた所で戦っていたコクが早足で近寄ってきて背中合わせになる。
「今エンさんに抜けられてはこの地点が不利になります。この地点はシロ達のいる情報部隊の最終防衛ラインです。ここを通過されれば必ず死人が出ます」
続くように耳の通信機からシロの声がする。
「A班に伝言係を向かわせました。着き次第ミルさんがC班に向かうようにしています。なのでどうか!」
反論しようと口を開くが言葉が出てこない。
――当たり前だ、二人が正しい。俺が間違っている。
行き場のない感情を飛びかかって来る敵にぶつける。
「……クソッ! ここを制圧次第向かう、それでいいな!」
「はい!」
「はい!」
背後のコクと通信機のシロの声が重なる。
再び戦況を見渡すがやはり今すぐどうにかなるような数ではない。
今ケイルを使って無理やり制圧するのは悪手。
異名保持者がいるなら忌力は温存しておかなければならない。
したがって両手に持っている固有武器だけで戦う、それしかない。
――頼むから無事でいてくれ。




