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No.4 嫌悪に満たされ

 パンドラの説明を聞き終わって、エンを探そうと辺りを見回す。

 しかしどれも同じに見えてどこにエンがいるのかわからない。


「ねえねえフィーちゃん」


 手の甲を突かれ、振り返ると小首を傾げているレイがいた。


「昔エンと何かあったの?」


 ナンパしてるだけかと思ったが耳だけはこっちを向いていたのだろう。

 話を聞いて気になったのか少し困り眉でそわそわしている。


「なにも……あ、そういえば昔は側から見ればいじめられているように見えていたみたいよ。私は否定してるのにしつこい人もいたのよ」


 昔はよく周りの人にいじめに遭ってるんじゃないかと心配されていた。

 しかしフィー自身はそんな事一ミリも思っておらず、むしろその質問こそ不快に思っていた。


「あーそっか……確かにあの見た目だったら疑われてもしょうがないかぁ」


「それが原因なのかわからないけど、今は真面目になろうとしてるみたいなの。私は前のエンも格好良かったと思うのに……何も知らない人の言う事なんて気にしなくていいのにね」


「あはは、エン苦労しそう……ん? あれ、でもエンもフィーちゃんに何かしたみたいな事言ってなかった? それに白い女の子に叩かれそうに――」


「気のせいよ」


 そう言って微笑むフィーにレイは遮られた言葉を続ける事なく「フィーちゃんがそう言うなら」と言ってはにかむ。






 適当な倉庫にフラフラと入っていく。

 倉庫の中はコンテナや木箱等で埋め尽くされている。

 それらの隙間にある作業用通路に入って行き、ちょうど真ん中の方まで来たところで肩をコンテナにぶつけ、そのまま座り込む。


「……」


 ふと前を見ると大きな鉄板のようなものが立てかけられており、少し反射して今の自分の姿が映る。

 鋭い眼光にもこの服装にも全てに嫌気が刺す。


「……クソ」


 徐に頭を掻きむしり、ため息を吐く。

 ふと正面を見てしまいまた自分と目が合う。


「……見てんじゃねぇよッ!!」


 自分でもヒステリックだとわかっているが、我慢ならず鉤爪を出し、鉄板を斬りつける。


「……昔と何にも変わってないじゃないか」


 思い返せば昔は善悪の区別がついているのにも関わらず敢えて悪どい事をしていた。

 何故そんな事をしていたのかと聞かれれば答えなんてなく、捻くれた言い方をすれば善良な人間でいる理由が無かった。

 そんな理由のない悪行があの子を苦しめた。

 幼い時のフィーの顔が思い浮かぶ。

――あれだけ酷いことをしたっていうのに。

 それなのにフィーは幼馴染という言葉で片付け、何事もなかったかのように接してくれる。

 それが酷く辛い。


「……なんでッ! 何で嫌ってくれないんだよ……ッ」


 会うたびに罵詈雑言を浴びせられ、殺意に満ちた目で見られた方がよっぽど気が楽だった。

 それでこの自己満足な嫌悪感は満たされる。

 過酷な環境にいたトートをフィーと重ねて何十人も保護した。

 でもそれも自己満足、フィーには何も関係ない。

 だからフィーがレイに狙われていると聞いた時は少しでも力になれるチャンスだと思って飛んでいった。

 助けた後は適当にどこかに隠居して、もしまた何かあったら助けに行くつもりだった。

 しかしレイは空振りでそのまま一緒の建物で暮らしているなんて我ながらいいご身分だな、と嘲笑する。

 極めつけに図々しくもフィーに惚れたまま。

 どのツラ下げてそんな事思ってるんだか。

 支離滅裂、これ以上似合う言葉はない。

 それはエン自身も十分理解している。

 力一杯握った拳をもたれかかっていたコンテナに叩きつける。


「エンさんそろそろ……大丈夫ですか?」


 音を聞きつけたのかコクが倉庫に入ってくる。

 今きっと酷い顔をしている。


「あ? ああ、大丈夫だ。すぐ行く」


「はい……」


 すぐに立ち上がり、コクとすれ違うようにして倉庫をあとにする。


「来ました、パンドラです。予定通りにお願いします」


 外に出るとトーリが部下やフィー達に伝達しているのが聞こえる。

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