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たださみしかっただけ  作者: 朝月
一章 桃源郷
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No.5 桃源郷と他の仲間

「やっぱり関所は嫌い」


 関所を出た瞬間、ミルは言葉をこぼす。


「そんなに怒らなくてもいいのに」


 少し後に出てきたフォミは少し困った顔でミルに微笑みかける。


「だってあいつフォミの事を――」


「気にする事じゃないわ」


 フォミの方を振り返り、弁明をしようとして言葉を遮られる。

 フォミは何気ない顔で先に進んで行くがミルは全く納得できていない。


 聞こえないふりを5回もされた事は別にいいよ、いつもの事だし。

 でもフォミの事を、『傷だらけで汚いボロ猫』って言われて怒らない訳ないじゃん。

 ミルが怒って掴みかかろうとしてもフォミは止めるだけ。

 フォミが怒っても無理ないのに。


 思い出しては腹を立てるのを繰り返している。

 でもその思考を止めるのもまたフォミで。


「ミルちゃんまだ怒ってるの? もう着いたわよ」


「あ……」


 どれぐらいの間思考していたのだろうか、一度考え出すと止まらなくなるのは悪い癖だと自負している。

 気づいたら着いていた、ミルの家。

 桃源郷に。


 5階建ての小洒落たビルのような建物。

 町外れにあるので周りに他の建物はなく、あるのは木々のみ。

 1階には診療所と食事処と2階へと続く階段がある。

 フォミとミルは食事処のドアを開け、建物に入る。

 ドアにぶら下げてある鈴がチリンと鳴る。


「おかえり、遅かったね」


 カウンターで洗い物をしていた黄緑色の髪色の細目の少年が迎えてくれる。

 服は接客業には向かなそうなジャージ姿で右目に前髪がかかっている。


「ただいま、リルくん」

「ただいま、リル」


 フォミはあいさつを交わし、そのままリルと話始める。

 ミルはその近くのカウンター席に座り、少し休憩を取ろうとする。

 そこへ机の上に水の入ったコップが置かれる。


「おかえり、お疲れ様」


 ミルが声の主を見上げると、ニット帽を被って、肩程まであるかないかの水色の髪をしている女の子、フィーがいた。

 表情が顔に出にくい子だが、少し微笑んでいる。

 お盆を持っていたので接客中だったようだ。


「ありがとう、ごめんね。仕事の邪魔して」


「ううん、今日はお客さん少ないから大丈夫よ」


「ミルちゃん」


 リルと話をしていたはずのフォミに突然呼ばれ、フィーの方を向いていた視線をフォミへと移す。


「今日の夜、ミーティングする事になったわ。ここにいない2人にも伝えてくれる?私は事務所で準備をするから」


 そう言い終わると同時に食事処を出てしまった。

 階段を登っていく音がする。

 もう2階の事務所へ行ったのだろう。

 少しくらい休めばいいのに。


「ソルとキルがどこにいるか知ってる?」


 横で話を聞いていたフィーにここにいない2人、ソルとキルの居場所を聞く。


「多分2人とも診療所にいると思うわ」


「わかった、ありがとう」


 ミルもフォミに続いて食事処を出る。

 気づけばもうお昼を過ぎていた。

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