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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.23 薬剤師

 ヒガンとシャークが階段を降りて行って一気に静かになる。

 ヒガンが座っていた場所には血溜まりがあり、あの悲痛な光景は現実だったんだと思い知らされる。

 シャークが言っていた事を思い出す。

――ケイル使っただろ。

 その言葉から、ヒガンが大量に出血した理由はケイルを使ったからだろうと推測できる。

 つまりは俺のせい。


「……キル。今のはどういう事」


「俺のせいなんだ。俺が戦おうなんて言ったからあいつもケイルを使った。だからあんな事に……」


 血溜まりから目を逸らし、ソルの方を見る――どうやらキルの返事はソルが聞きたかった事じゃないらしい。

 今度はレイと初めて会った日と同じような怒り方をしている。


「その事じゃない。それは話聞いてたからわかってる」


「何怒ってんだよ?!」


 ハクも顔目掛けて強めに頭を押し付けてくる。


「キルちゃんは罪作りな子だよね」


 レイの言葉に頭の中に大量のハテナを浮かべ首を傾げていると、ソルがため息をつく。


「はぁ……ここにいない間に何があったのかは後でたっぷり聞くから。今はキルの傷を治すのを優先させるよ」


 そう言うと目を赤くしケイルを浮かび上がらせる。

 大した傷は無いがソルはかすり傷だとしても気になるようだ。

 不完全燃焼な様子が少し気になるが今は怒ってないようなので一安心する。

 どうせ今はあまり動けないのだからされるがままな事は変わらない。


「いつも悪いな」


「昔からキルを治すのは僕の役目でしょ、このケイルもキルの目を治すために発現したんだから」


「……そうだったな」


 元々抵抗するつもりも無いがその言葉を聞いてソルに完全に体を預ける。

 ソルのケイルが発現したのは母親が絶命してパニックになっていた時。

 いつもの時間に来ないから心配して家の近くまで来ていたら叫び声が聞こえて部屋に入ってきたらしい。

 意識は朦朧としていたがソルの右目から血涙が出て紋章が浮かび上がった所は何となく覚えている。

 その後は右目に暖かいものを感じてそのまま気絶してしまった。

 それの時発現したのが『治』。

 先天性ケイルの能力は完全にランダムだが、後天性ケイルは本人の精神が大きく動いた時に発現する。

 そしてその能力はその時本人が一番欲している物になるらしい。

 それを知ってからはちょっと小っ恥ずかしかった。


「いつもありがとな」


 治療も終わりソルが小さく頷いた。

 傷は癒えたが体は相変わらず怠い。


「キルちゃん大丈夫? 忌力補給剤とか作れるけど飲む? 補完は出来ないけど気休め程度にはなるはずだよ」


 今度はレイのケイルが浮かび上がった。

 そして錠剤を手渡される。

 忌力補給剤なんて聞いた事がないが、レイが作った物だから大丈夫だろうとありがたく受け取る。


「そんな物まで作れるのかすごいな。ありがたく飲ませてもらうよ」


「錠剤じゃなくて注入した方がよかったら言ってねー」


「そんな薬聞いた事ないけど」


 あ、やっぱり無いんだ。


「オレのケイルは既製品じゃない薬も作れるの。そりゃ知識もいるけど大体はイメージでいけるよ! その代わり珍しい薬なほど忌力の消費が多いけどねー」


 当たり前のように話しているがそれは結構すごい事ではないのか。

 キルに薬の知識は無い為、それがどれくらい大変な事なのかはわからない。

 たが恐らくそれはソルの何でも治せるケイルと同じくらいすごいのだろう。


「……変な成分とか入ってないよね? ――あ」


 神妙な面持ちのソルが質問を投げかけたのと同時に薬を口に放り込んでしまった。

 もしかしてまだ飲んだらダメだったのだろうか。

 取り敢えず苦笑いで誤魔化す。


「この状況でそんな事する訳ないじゃん! ちゃんと自分で治験してるから大丈夫だって」


 少し頬を膨らませ信用されていない事に不満を漏らす。

 そして何かを閃いたかのように急に目を見開き、ニヤニヤと意地悪な顔をする。


「てか逆にそんな事思いつくソルの方が変態――いだぁーっ!! 何でハクが噛むの?! 本当飼い主そっくり!」


「おいハク!」


 何の前触れも無くハクがレイの腕に噛みつく。

 血は出てない、甘噛みだろう。

 フーッと息巻いている様子からソルが揶揄われたのが気に入らなかったのだろう。

 レイは、離してーっと涙を浮かべている。

 その様子をソルと控えめに笑っていたらいつの間にか身体の怠さは立ち上がれる程には楽になっていた。

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