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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.20 すき。好き。

 ぴゃあ


 ハクの悲しそうな鳴き声が最上階に響く。

 一鳴きして周りを見回し何の変化もない事を確認するとトボトボと歩き出す。

 目的地では愛しの主人と騒がしい同僚が話している。


「ダメ、どこ探してもキルちゃん居ないよ。そっちは?」


「消えた所からまた出てくるかと思ってずっと目の届く範囲にいるけど全然出てこない……このまま見つからなかったら」


 滅多に見ることのない主人の動揺した姿を見ていられずハクはソルの足に擦りつく。


――突然、ソルが見張っていた二箇所からキルを連れ去った棺桶が現れる。

 床から生えてきたそれは、閉じ込めた時の動作を逆再生しているかのようにバタバタと規則正しく倒れていく。


「ッキル!」


 中から大好きな友達が出てきてその場に倒れ込む。

 ソルが駆け寄り、ハクもそれに続く。






 まさか帰りもこの棺桶に入る事になるとは……

 あの五感を全て奪われたような感覚はやはり永遠に馴れそうにない。

 固有武器を出した事もあって一瞬気を失っていたようだが、馴染みのある声で意識が覚醒し目を開く。

 抱き起こされているのがわかり、自力で起き上がろうとするがやはり起き上がれない。


「……ソル、心配かけたな。俺は大丈夫だ、ってまだここにいるって事はミルの事探してないだろ。まったく……」


 わざとらしくため息をついてみるが、ソルは気にも留めずキルの右横に視線をやっている。


「それ、固有武器出したんだね」


 普段からあまり抑揚のある話し方ではないが、さらに一段回抑揚がなくなる。

……怒ってる。


「あー……ちょっと久しぶりに本気で戦いたかったんだ。許してくれよ、しばらく動けないけど」


 そう言い終わると同時にハンマーは発光して消える。

 ここに戻ってくる前に消しておけばよかったと後悔するが、隠した方が怒られそうだと思い直す。

 第一動けなくなってる時点でバレてしまう。

 消してなくて本当によかった。


「一つしか出してないみたいだから厳重注意だけで許してあげるけど、本当は極力出して欲しくないよ……今回は戦うためだけど……それ以外の目的では絶対に出さないでよ、絶対に」


 二回も念を押されて少し肩をすくめる。

 声は元に戻ったが目が笑ってない。

 昔の自分の行いを振り返ってみれば無理もない話なのだが。


「わかってる、お前がいるからもうしないよ」


――実は戻ってきてからずっと心臓の辺りがムズムズする感覚に襲われている。

 昔の話をするとより一層心臓のむず痒さは酷くなり掻きむしりたくなる。

 この感覚はよく知っている。

 キルは時折この感覚に襲われるのでもう慣れたものだった。

 しかし不思議なのはいつも決まってソルが近くにいると言う事。


「……なぁ、ソル」


「なに?」


「まだ俺の事すきでいてくれるか?」


 無意識に少し緊張しているのか体が強張る。


「当たり前でしょ。今でも好きだよ」


「そうか、俺もソルがすきだ!」


 その答えに満足したかのように、へらっと柔らかく笑う。

 どうしようもない多幸感に包まれる。


「……うん」


 少し間を空けてソルも返事をしてくれる。

 時折気まずそうな顔をするのは何故だろう。

――知らない。

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