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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.18 似たもの同士

 過去の出来事を反芻してゆっくりと目を開ける。

 目の前には苦しそうなヒガン。

 その様子は部屋で蹲っていた時の自分と重なる。

 そんな状態から助けてくれたのは――


「この世、というか自分を呪っていた時助けてくれた奴がいたんだ」


 無意識に柔らかく微笑むとヒガンが少したじろいた。

 まるで近寄ったら突然突き放されたような、そんな寂しそうな顔をしている。


「お前はきっと……誰も助けてくれないと思って全てを拒絶してるんだ。でも助けてくれる奴はいる。暖かい手を差し伸べてくれるお節介な奴がいるんだ」


 本当にお節介だ。

 親殺しの大罪人の癖に正当防衛で無罪になってしまった。

 本当ならあのまま死んで地獄に堕ちた方が母さんも報われただろう。

――でも求めてしまった。

 無意識に、不本意的に。

 それに助けられた。


「この世に救いはある。当事者が言うんだ、間違いない……ちょっと待て訂正する。全員が救われるとは言わない」


「では僕は後者――」


「お前は大丈夫だ。それは俺が保証する」


「な! 何を根拠にそんな事をッ! そもそも僕は貴方の事を聞きたかっただけです。僕の事を聞きたかった訳では……それに貴方が僕の何を知ってるんですか。今日会ったばかりだと言うのに」


 歯を食いしばり、たじろいていた体を前のめりにしてキルを威嚇しているかのようだった。

 昔のキルを見ていた人はこんな気持ちだったのだろうか。

 一緒にミルを連れ去りに来たあの二人とこの子は仕事だけの仲には見えなかった。


「俺とお前の違いは手を差し伸べてくれた人がトートだったかレーベンだったかってだけだと思うがな」


 そういうと今度は思い詰めたような顔になる。

 誰か思い当たる人がいるのだろう。

 それがわかっているなら昔のキルよりちゃんと周りの人と向き合えている。


「……そう思う時もありました。僕を拾ってくれたあの人ならもしかしてって……でも僕が一方的に手を伸ばそうとしているだけで本当に掴んでくれる訳ない、そんな不安が頭に攻め込んで来るんです。確証がないだけでこんなに不安になる自分も嫌なんです……だから僕は本当は、はやく――」


「死んでしまいたいか?」


「……ッ」


 図星だろう。

 この子は感情が良く顔に出る。


「……本当は助けて欲しいんじゃないのか?」


「そんな事……」


「悪い、いじわるだったな。俺は助けを求める事を悪い事だと信じて疑わなかった。だからもしかしたらお前もそうなんじゃないかと思ったんだ。だって今のお前は昔の俺にそっくりだから」


「え?」


 ヒガンがこちらを向く。

 しおらしく困った顔は庇護欲を刺激する。


「死ぬ事を望みつつも心のどこかで誰かが助けてくれる事に微かに期待してたんだ。でも昔の俺はその事を認めたらいけなかったし絶対に認めなかった。本当は気づいてた癖にな。じゃなきゃ死ぬなんて簡単な事とっくの昔にやってるよ」


――死ぬなんて簡単。

 それを明るく、にこやかに話す。

 ヒガンは固唾を飲む。


「本気になれば床や壁だって凶器になるし、極論自分の身体だって凶器になる。それをわかってるのに使わない、だろ?」


 表情と話している内容がズレている事が変に感じたのか、ヒガンは複雑そうな顔をしている。

 しかし何故ヒガンがそんな顔をしているのかキルにわかることはない。

――狂気。

 今のキルにはその言葉が似合うかもしれない。

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