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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.11 もう、なにも

 トートとレーベンの混血……?

 学のない俺でも知っている。

 しかし嘘をついている様にも見えない。

 第一、今この状況でそんな嘘を吐く理由がない。

 さすがのソルも困惑を隠せないでいる。


「何言って……そんな事あり得ないはずだよ」


「だからレーベン用の薬が中途半端にしか効かなかったって事?」


 動揺しているキル達を見てヒガンはため息を吐く。


「それができちゃったんですよね。世界中探しても片手で数えられるくらいしかないでしょうけど。まあそれはどうでもいいです。それでは時間がないので少しだけキルさんお借りしますね」


 そう言うヒガンの右目は『拘』の字が浮かび上がっている。

――紋章がない。

 トートだったら紋章がないのにケイルを使える事なんて絶対にあり得ない。

 だとしたらヒガンは本当に混血――


「キル! 逃げて!」


「無駄ですよ」


「しま……ッ!」


 考えながら動くのは性に合わない。

 余計なことを考えていた所為で避けるのが一瞬遅れてしまった。

 ソルの声がした時には床から白い鎖が生えてきていてキルの体に巻きつく。

 抜けようにも完全に拘束されており身動きが取れなくなった。

 それを見て駆けつけようとした二人の足元にも白い鎖が現れる。

 レイは飛んで距離を取ろうとしていたが天井と壁のせいで思うように逃げられず、さらに鎖はどこまでも追尾してきて捕まってしまった。

 ソルもアンカーで鎖を切断しようとしたがそれは叶わず、三人ともが鎖に拘束されてしまった。


「僕のケイル『拘』は拘束に特化したものです、これで早々動けないはず――ゲホッ」


 最後まで言い終わる前に自分の咳で話が途切れる。

 先程より息も上がっているが、何とか整え直してこちらに向かって歩いてくる。


「今すぐこれを外して、キルに何かしたら殺すだけじゃすまさないから」


 その声を合図にか、隠れていたハクが全速力でヒガンに向かって突進していった。

 そのフラフラの体は小さい中型犬くらいのハクの突進で簡単に倒れてしまうだろう。

 しかしそれも叶わず、ハクも追尾してくる鎖に捕まってしまう。

 ハクを捕まえた途端ヒガンは胸を押さえて背中を丸める。

 肩で息をしていて咳も酷い。

 おそらくそれは薬のせいだけじゃない、混血はケイルを使うと体に何かしらの異常が起こるのだろう。


「別に取って食やしませんよ、少し話がしたいだけです。ここでは邪魔が入るので場所は変えさせてもらいますけど」


 ヒガンは再び息を整え直すと指をパチンと鳴らす。

 すると自身の周りとキルの周りを囲むように床に白い板が現れた。

 何が起こるのか。

 いくら体を捻ろうと身動きは取れない。

 四方向に現れた板は一枚、また一枚と自発的に起き上がり連結していく。

この形はまるで棺桶だ。


 ピャーッ!


「キルちゃん!」


 ハクとレイが焦ったようにキルの名前を呼ぶ。

――レイがそんな風に焦るのは初めて見たな。

 いつもニコニコしてるレイの真面目な顔に少し驚く。


「心配するな、俺は自分でどうにかする。この隙にミルの事見つけておけよ!」


 最後の正面の板が閉まる前に強気な事を言うが、正直戻ってこれる保証は無い。

 だからこそ笑う。

――俺が不安そうな素振りを見せたら心配させるだけだろ、しっかりしろ。


「キル……」


 ほらソルが悲しそうな顔をしてる。

 お前のその顔は何回見ても慣れない。

 いつもみたいに余裕そうな顔しててくれよ。


「じゃあまた後でな!」


 白い板に全方位を囲まれた。

 もう何も見えない、聞こえない。

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