表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
46/143

No.10 愛らしいキティ

 警察はレーベンしか就職することのできない職業。

 その警察の制服から長い縞々の尻尾が伸びている。

 目はカラコンでも入れているのだろうか。

 先程の口ぶりから少なくとも指揮官の礫は知っていると見ていい。

 トートを捕まえる為にトートを駒にするというのはどうなのだろうか。


「あなたもトート……? でもトートの匂いはしないわ。いい匂い消しを使ってるのね」


 濃い血の匂いを撒き散らすフォミが匂うような仕草をする。

 獣人はその名の通り獣に近しい能力が多く、鼻が効く型が多い。

 もちろん猫型のエンも鼻が効くのでレーベンなのかトートなのかはこの距離でだって確実に嗅ぎ分けられる、普通だったら。

 ましてや犬型のミルが気づかない訳がなく、気づいていたなら何型かまで嗅ぎ分けられただろう。

 しかしそんな素振りはなかった。

 匂い消しは獣人に嗅ぎつけられると困る人達が匂いを紛らわせる為に使うものだが微かに残った匂いで気づかれる事が多く、使う者もそんなにいない。

 桃源郷にも使っている人はいるが、こんな上物が存在したなんて……


「それで何故(そちら)側にいるの?」


「俺はただトートを殺したいだけだ。その為には国についた方が大義名分ができる」


 そう言ってシャークは刀を構え直す。

 まさか自ら望んでトートと対立しているとは思わなかった。


「訳ありなのね。私達の仲間になってくれていたらとても心強かったのに、もったいない事をしたわ」


「待て!」


 フォミが特攻した。

 地面には足跡の様に血が垂れる。


 なんて馬鹿な事を。

 相手は新種でさらにはケイル持ちだ。

 どんな事をしてくるのかわかったものじゃない。

 フォミを止めようと足を踏み出した時、フォミの迷いのない眼がこちらを見て微笑んだ。

 それを見て足を止める。


――完全な囮。


「愚行だな」


 予想通りシャークはケイルを浮かび上がらせた。

 文字は『獣』。

 片手で武器を大振りするフォミの体に傷をつける。

 大きな傷じゃない、腕の出血に比べたらかすり傷だ。

 フォミも少し眉間に皺を寄せながらもう一度武器を振おうとする。

 しかし、それは叶わず大鎌は大きな音を立てて地面に落ち、そして消える。


「これは……ッ!」


 傷つけられた箇所からフォミの髪の色と同じ色の被毛が生えていく。

 被毛が体を侵食していくと共にフォミの体は縮んでいく。


「フォミ!!」


 立ち尽くしているフォミにフィーが駆け寄ろうとするのを腕を掴んで静止する。

 今シャークに近づいてはフォミが囮を買って出た意味がなくなってしまう。

 フォミの体がさらに縮んで服に隠れてしまった。

 そして――


 にゃー


 フォミの服から薄紫色の猫が出てきた。

 目もフォミと同じオッドアイ。

 腕の怪我まで同じで、怪我部分を舐めている。

 つまりあの猫はフォミ本人だという事。


 これだからケイル持ちと戦うのは面倒なんだ。

 何が起こるかわからない。


「何を惚けている。来ないならこっちから行く」


 シャークの声が目の前でする。

 その光景に気を取られてしまった。

 シャークの動きはさっきまでとは比にならない速さで、反射的に自分の身を守るので精一杯だった。――新しい血の匂い。

 フィーの方を見ると腕から少量の出血。

 心臓の音が鼓膜に響く。

 フィーは微笑んでいる。

 何でこんな状態で笑えるんだ、元に戻れる保証もないのに。

 フィーの体は縮み、服から水色の愛らしい小さな猫が出てくる。

 まだ成猫になってない尾の無い小さな猫は、小首を傾げてこちらを見ている。


「フィー」


 名前を呼ぶが小首を傾げるだけで返事はしない。

 記憶も無くなってしまっているようだった。

――その瞬間激痛がエンの身体を駆け巡り、口の中に血の味が広がり思わず咽せる。

 吐血した。

 エンのケイル『感』は精神ダメージが身体ダメージに変換される。

 内臓がイッたか、骨がイッたか。

 血のついた口元を服の袖で雑に拭う。


「俺のケイル『獣』は主に獣人に効果を発揮しその型の動物に変化させる。完全に獣にしたり今の俺みたいに半獣にもできる、そうすると獣の能力が変化したぶんだけ上がる」


 そう言われて横目でシャークの方を見ると手や顔の一部は被毛で覆われており、瞳は獣そのもの。

 指先からは鋭い爪が生え、指や手のひらには肉球のような物も見える。


「通常型にも効果はあるが消費する忌力が多くなる、お前ら全員獣人で助かった」


 リルをみすみす見逃したのはそれが理由か。

 今となってはどうでもいいが。

 シャークの方へ体を向け、固有武器を再び両手に構える。

 体に力を入れると奥歯が音を立てる。


「これで一対一だな『アングラの狂猫(モノクローム)』」


「お前を殺したらフィーは元に戻るのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ