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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.6 一対三

 リルとヒガンが立ち去ったことで食事処に一時の静寂が訪れる。

 先にミルを探しに行ったあの子達が心配だがフォミまでここを立ち去ればシャークと戦うのがエンとフィーだけになってしまう。

 ならやるべき事は一つ、シャークを倒してヒガンを探す。


「一対三になっちゃうけどいいのかしら?」


「構わない」


 シャークのその言葉を皮切りにフォミ達は固有武器を構える。


「絶対ミルを返してもらうから」


 最初に飛び出したのはフィー。

 それにエンが続く。

 シャークも腰刀を抜き、斬りかかってきたフィーを弾き飛ばす。

 その影に隠れていたエンがすかさず追い討ちをかける。

 固有武器で攻撃しても壊れない武器は珍しい。

 やはり特殊な加工をしているのだろう。

 それなら遠距離攻撃のできる銃じゃなくて刀なのも納得できる。

 銃弾を大量生産する技術がないか、材料がないか。

 どちらにしろこちらには好都合。


「『アングラの凶猫(モノクローム)』、そういう顔の方がお似合いだ。戦闘狂」


「誰が戦闘狂だ。こちらともう裏社会の人間じゃないんでね」


 エンの目つきはさっきと違い瞳孔も開いている。

 それに伴って弧を描いている口元を見れば誰だって戦闘狂だと思うだろう。

 仮にそうだったとしても今は時間が惜しい。

――戦うのは我慢してもらうわよ。

 エンと武器を交えたまま硬直状態のシャークの元へ走り出す。


「悪いけど早めに決着をつけさせてもらうわね」


 フォミがケイルを発動させようとシャークに向かって手を伸ばすが、その手は空を切った。

 代わりに自身の腹に鈍痛を食らう。

 エンの舌打ちが聞こえる。


「お前の、いやお前達のケイルは知っている」


「あら、知ってたのね」


 初めてシャークの顔に焦りが見えた。

 一瞬でも意識を失ってもらえばエンくんが対処してくれると思っていたけど、思い出したくない事があるなら好都合ね。

 その部分、何回も何回も見せてあげる。


「元から知っていたなら対処法でもあるのかしら?」


「ある」


 シャークが懐に手を入れ、何かを取り出す。

 出てきたのは真っ直ぐで平べったい何か。

 それが何なのかを探る前にシャークがフォミ目掛けてそれを投げた。

 咄嗟に武器で弾くが、投げられたのは一つではなく二つだったようで、もう一つはフォミの腕に巻き付いてしまった。

 その瞬間固有武器が手から消える。


「これは幻力石……かしら?」


 明らかに幻力石の作用だった。

 しかしケイルや固有武器が使えないだけで体は怠くない。

 剥がそうと試みるが中々上手くいかない。


「巻きつけるための柔軟性と粘着力重視で石自体は少量しか使用してない特注品だ。身体にはさほど影響は無いだろうがケイルと固有武器を使えなくさせるには十分だ」


「こんなもの開発してたなんて……レーベンは暇なの?」


「暇じゃない、お前らみたいなトートを躾けるのに大忙しだ」


 巻きつく幻力石を剥がそうと指で皮膚を引っ掻き続ける。

 フィーが先程と同じように攻撃を仕掛けるが、今度は刀で受けるだけではなくフォミにくっついている物と同じ物を投げつける。

 無力化を狙っているのだろうが、幻力石はフィーにたどり着く前にバラバラになり地面に落ちる。


「斬っちまったら意味ないだろ?」


 先程とは比較にならないほど素早く幻力石を斬りつけた。

 見ると、エンの右目が赤くなり『感』の字が浮かび上がっていた。


「確かお前のケイルは感情に左右されるケイルだったな。モチベーションが上がらないと意味がない」


「俺のケイルは感情によって戦闘力が変わる。今までは戦闘の高揚感で上げてたが今は何もなくてもモチベーション上がるんでね」


 その言い方だと戦闘狂以外の一体何だというのだろうか。

 本人は気づいていないみたいだから黙っておくけど。

 フィーの方を見て得意げになっているエンに気づかれないように苦笑いをする。

 しかしフィーがいるだけで強くなれるならいい話だ。


「フィー、やれるな?」


「――ええ、もちろん」


 フィーは何かに気づいたのか一拍開けて返事をする。

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