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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.5 体のいい取引

 礫が扉の前でシャークに何かを呼びかけた。

 その様子をヒガンが横目で見ている。

 二言返事で話が終わったので礫はミルを担ぎ、扉から外に出て行ってしまった。

 扉の前ではシャークがこちらを睨んでいる。

 追いかけないように見張っているよう言われたのだろうか。


「あなた、本当に『アングラの狂猫(モノクローム)』ですか? 異名保持者の資料写真ではもっとグレてる感じだと思いましたけど……」


「更正したんだよ! 突っ込むな!」


 ここに来る前、どんな格好をしていたのかは知らないがエンがヒガンを引きつけている間にフォミは扉に向かって走り出そうと足を踏み出した、と同時にシャークがこちらに向かって歩いてくる。

 唯一の出入り口である扉から離れるという事は、見張りの為に残っていたのではないようだ。


「やはりタダでは連行させてくれないか」


「シャークさん気付いてたんですか?」


 ヒガンの横についたシャークはフォミを鋭い眼光で睨みつける。


「お前も知ってるだろ、ここはなにかと曰く付きの場所だからな」


 曰く付きの場所、それは桃源郷がただの飲食店ではないと知っている、という暗示だろう。

 尚のことこのまま返す訳にはいかなくなった。


「へぇ、じゃあわかってて乗ったんだね。わかってたならミル君の事気づかなかった振りして後日適当に誘拐でもすればよかったのに」


「ちょっと、何で僕たちがわざわざ二回もこんな所に来ないといけないんですか。せっかく来たんですから一回で済ませたいのは当然でしょう」


「待てヒガン……お前達に伝言だ。今礫さんは『死にたがりの死神(コーニーアム)』を連れて身を隠している。先に城に連行してくれれば手っ取り早いんだが……全くあの人は……」


 ため息をつきながら頭を軽く掻き、眉間に少し皺を寄せる。

 何を聞かされるのかはわからないが、この人達はこういう事には慣れているのだろう。

 その伝言がミルにとって有益な事だと願う。


「礫さんがお前達に興味を持った。俺とヒガンを倒せたらあいつがここにいる事を口外しない上に指名手配も取り消し釈放する。礫さんの立場が危ぶまれる行為だ、ありがたく思え」


 それは考えていたよりずっといい取引だった。

 まず相手はレーベンであり、普通ならトートのフォミ達にはまず敵わないだろう。

 警察のトップ三なのだから弱くはないだろうが、こちらは七人。

 数でも勝っている。

 何故自陣が不利な状況下での戦闘を提案しているのかが気になるが、ミルの釈放は絶対に成し遂げなければならない。

――つまり乗るしかない。


「それに……違法な商売をしている事も見過ごしてやるそうだ」


「そんな噂もあるね。でも僕達はそんな事してないよ? やってるっていう証拠はあるの?」


「俺達が勝ったら証拠品を出してもらう」


「私達にとってのメリットが多いわ。何か裏があるんじゃないの?」


 何でも屋を潰す事が目的……?

 仮にそうだとしてもそれだけが目的だとはどうも思えない。

 乗るしかないと分かっていても本当の目的がわからなければどこで足を掬われるか分かったものではない。

 リルの方を見るがこちらを見てくれる様子は一向にないが、口は弧を描いている。

――勝てば問題ないって事ね。


「俺が聞かされてるのはここまでだ」


「……ところで何か人数減ってません?」


 ヒガンが辺りを見渡す。

 今頃気づいたのだろうか。

 七人いた従業員はほぼ半分の四人になっていた。


「あら、やっと気が付いたの? 貴方達が先に動いたのよ、私達がただ黙って立ってると思ったのかしら? 他の子達はもうミルちゃんを探しに行ったわ」


 この店の唯一の出入り口が自分達の後ろにあるから油断していたのだろう、気づかないのも無理はない。

 フォミの事は常に警戒していたようだが、フォミが指示を出したのではない。

 礫とシャークが話している時、ヒガンの気が二人の方に向いたその時、ソルの独断でキルとレイを魔術で自分共々移動させたのだから。

 それを知らないこの人達に目の前から人が消えた原理を解明する術ない。


「ヒガン、こいつらは俺が相手する、お前は行け」


「言われなくても」


 そう言うとヒガンは食事処の扉から走って出て行った。

 それに続くようにリルも歩き始める。


「僕もミル君探しの方に回るよ」


「ええ」


 リルはシャークの隣を普通に通過したがシャークがそれを咎める事はなかった。

 妨害しようと思えばできた筈だ。

 この取引といい、リルをみすみす外に出した事といい、一体何を考えているのだろうか……

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