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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.2 写真に写るは

 事務所に入り、警察の内一人が椅子に座る。

 シャークと呼ばれていた制帽を被った人だ。

 フォミも反対側の椅子に座り話を始める。


「それで、要件は何かしら? 前に従業員を採用した当日に書類を出さなかったって事で押しかけられた事があったから言われる前に言っておくけど、ここにいる新しい従業員二人ならさっき届けを書いてもらったから今日中に出すわよ。その件じゃないなら二人には退室してもらうけど」


 ヒガンと呼ばれていた警察がフォミの両脇に立っている二人を見る。

 嫌味ったらしく言ってみたがどんな文句を言われるのだろうかと身構えていたが、口を開いたのはのはシャークだった。


「その件ではない。その件は担当者の判断による行動だ。俺たちには関係ない」


 やはり謝罪の言葉はない。

 あの時は家宅捜索もされて大変だったというのに。

 無意識に眉間に皺が寄る。


「ならいいのよ。二人ともありがとう。下で皆と一緒に待機しててね、すぐ終わるから」


「わかった、行くぞレイ」


 二人が退出し、部屋に静寂が訪れるがヒガンがそれを破る。


「……悪魔型を就職させるなんて前代未聞ですよ。普通に接してますけど悪魔型がどんな獣人かご存知ですか?」


 さっきレイを凝視してたのはそのせいか。


「もちろん皆知ってるわよ。むしろあなた達が知ってる方が意外だったわ。でも悪魔型とかそんな事はうちには関係ないの。もしかしてその事かしら?」


「それも違う、気になっただけだ。今から本題に入る、今回は――」


「ちょっと待って。やっぱりわいが話すわ」


「礫さん……わかりました」


 鉢巻の男――礫がシャークの肩を掴む。

 シャークが敬語で話したのはこれが初めて。

 やはりこの男が三人の中で一番位が高いのだろう。

 そんな男が直々に話したい事とは一体何だろうか。

 何でも屋の事だったらまずい。


「今回令状が出たのは指名手配犯について、って言うても公にされてへん案件やからまずはこの写真を見てくれへん?」


 礫は懐から一枚の古そうな写真を取り出しテーブルの上に置く。

 覗き込むと、暗い場所で撮られた写真なのか写りが悪く、しかもブレている。

 ただ被写体の目の部分だけは鮮明に写っており、それがこの写真で唯一わかる情報だ。


「ちゃんと写っているのは目だけね。それでこの指名手配犯がどうしたのかしら」


「しらばっくれんでもええ。ここで働いてるやろ? 『死にたがりの死神(コーニーアム)』が」


「えっと……その指名手配犯は異名保持者ってことかしら? 何をしでかしたのかは知らないけど異名保持者は法律を多少破っても許されるんでしょ? だったら指名手配をする必要は無いんじゃないかしら」


「確かにそやけど、この子は法律とか関係なくお偉いさんが探しとんねん。行方を眩ましてもう九年になるんよ」


「あら、貴方達も誰かの私情に振り回されて大変ね」


 フォミは口元に手を置いて意地の悪そうに笑う。


「これも仕事やからね。ほんで見覚えあるやろ? しらばっくれるなら従業員全員わいらの前に並べてもらう事になるけど」


「そう。ならそうする事にするわ。でもここじゃ狭いから下に降りてもらってもいいかしら?」


 礫は頷き、後ろで立っている二人にも目配せをする。

 フォミが立ち上がると礫も立ち上がり、フォミを先頭に一階へと続く階段を降りる。

 食事処の扉を開くとそこには従業員全員が勢揃いしており、こちらを見ている。


「ここにいるので全員よ」


「意外と少ないんですね」


「昨日までは私を含めても六人しかいなかったわ。何故か辞めていく人が多くて困ってるの……」


 困り顔でヒガンと話しているとシャークが一歩前に出る。

 思い思いの態度で待機しているリル達の顔を丁寧に確認しているようだった。

 一通り見終わったのか振り返り礫を呼ぶ。


「礫さん」


「間違いあらへんね」


「ちょっと!」


 礫もフォミの後ろから皆の人相を確認していたようで歩きだす。

 静止も聞かずに真っ直ぐ歩いていき一人の人物の目の前に立ち塞がる。


「あんたを城に連れて行く、『死にたがりの死神(コーニーアム)』、須栗 未瑠」


「へ?」

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