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たださみしかっただけ  作者: 朝月
三章 警察
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No.1 一日中CLOSE

 日が登り辺りが明るくなってきた頃、フォミは一人食事処を開けるための準備をしている。

 昨日のお祭り騒ぎの片付けの為いつもより早起きをしたのでついついあくびが出てしまう。

 そして片付けも終わり下準備に取り掛かろうかというところで桃源郷の従業員が朝食を食べに食事処に降りてくる。

 出勤時間まではまだ時間があるので起きてくる時間はまばら。

 誰に相談する訳でもなく皆の朝食を作り始め、出来上がった頃には全員が起きてきていた。

 食事を済ませてせかせかと準備をしている内に、もう開店時間まで数十分となった。

 今日の仕事の説明をするために新人のエンとレイを呼び出し二階へ上がる。


「レイくんはなんだか疲れてるみたいだけど二人とも昨日はよく眠れたかしら?」


 隈こそできてはいないが半目で虚なレイを気にかける。

 もしかしたら現世の空気は悪魔型には合わないのかもしれない。

 しかし開店まで時間がないため心配しながらも説明を続ける。


「開店前に昨日できなかった建物の案内をしておくわね。さっきいた所が食事処よ。そして隣がソルくんが院長をしている診療所。患者さんもそこそこ入っているしレイくんは調子が悪そうだから後で診てもらったらいいわ。そしてここは事務所で、何でも屋の依頼主を対応するわ。もちろん大事なお客さんがきた時もここで対応するわ。この階には大浴場もあるからね。あと三階から五階は貸し部屋だけど、貸し部屋以外にも三階に資料室、四階に物置部屋、五階に多目的室があるわ、後は地下ね」


 地下室へ向かおうと階段へ向かおうとするその腕をレイが掴み、首を激しく横に振っている。

 今日は昨日より様子がおかしい。

 訝しげにレイを見ているとエンが、もう知ってる、と言う。


「あらそうだったの? 地下室は絶対壊れないから訓練したり手合わせとかに使えるから便利よ。腕が鈍らないようにちゃんと鍛錬してね」


 地下室に行く手間が省けたのはよかった。

 壁際に並んでいる本棚からファイルを取り出し、目当ての書類を探しながら説明を続ける。


「食事処で寝てなかったって事は部屋はもう決めたのよね? 後でプレートを渡すからドアの所に名前を書いてぶら下げておいてね。じゃあ最後に二人にはここに就職したっていう書類を書いてもらうわ。国に提出するからちゃんと書いてね」


 ファイルから書類を出しそれぞれに渡す。

 やはりレイの挙動が気になるが、どちらにしろ慣れるまでは食事処だけに専念もらう。

 風邪の症状ならフォミでも気づけるが、そうではないようなのであまり問い詰めなかった。






 書類を書き終わったようなので時計を見ると、開店時間が迫ってきた。

 少し急いで食事処へ戻ると簡単な仕事だけを二人に頼んでカウンターを離れる。

やはり店長はやる事が多い。


「あいつ昨日のこと覚えてないんだな」


「忘れてくれた方がいいよ……」


「何か言った?」


「いや何も」


 何やら話し声が聞こえたので振り返るが気のせいだったらしい。

 まだ話は続いているように見えるが自分が入らない方がいい事もあるだろう、と思い仕事に専念する。

 すると扉を力強くノックする音が響いた。

 まだ開店時間を迎えていないはずだ。

 掛け時計を確認するとやはり開店にはまだ早い。

 しかし相手をしないわけにはいかないので扉を少し開ける。


「すみません。まだ営業時間外なので、もう少しお待ち下さい」


「城から来た。店長を出してくれ」


 扉の外にいたのは深緑の制服を着て制帽を被った男。

 少し視線を落とせば帯刀している事に気づく。

 そしてよそ見をしているフォミの顔の前に一枚の紙きれを突きつける。

――捜査令状だ。

 内容を確認し、本物だということを確信する。


「……私が店長よ。何の用かしら」


「外では話せない。聞かれて困るのはそっちだろ」


 つまり中に入れろと言うことか。

 内容も聞かずに懐に入られるのは得策ではない。

 しかし内容によっては他人に聞かれると困る事があるのは確かだ。


「……二階に事務所があるわ。そこでお話を聞かせてもらうのならいいでしょう?」


 営業スマイルで微笑み、食事処の横にある二階への階段へ目を向ける。

 三階より上は開店までの間自室で休んでいる子がいるので上がらせたくない。


「……二人とも他の皆を呼んできてくれる? 食事処で待機って伝えてね。その後レイくんとエンくんは事務所に来てくれるかしら」


「わかった」


 まだ落ち込んでいるレイを見てエンが背中を叩く。


「いたッ! あ、りょーかい!」


「そういうことけど二階でよかったかしら?」


「それでいい――」


「ちょっとシャークさん、何モタモタしてるんですか。早くしてくださいよ」


「おい押すな、今纏まったから待て」


 制帽の男が揺れだす。

 扉を少ししか開けていなかったので気が付かなかったが連れがいるようだ。

 揺れている男の隙間から外を見ると全部で三人。

 前にも警察が押しかけてきたことはあったが今日の警察は何やら様子が違う。


「ヒガン、暴れんとってな」


「はーい」


「騒いですまんな」


 三人目は不思議な話し方をする鉢巻の男だった。

 鶴の一声で騒いでいた男がやめるということは地位は高いのだろう。


「いいえ大丈夫よ。そこの階段を上がってくれたらいいわ」


 どうやら今日は店を開けることはできそうにない。

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