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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.25 一番楽しめたのは誰か

 飲み比べが始まってしばらくが経った。


「お前中々いける口だな」


 何杯目かわからないジョッキを飲み干したエンが口を拭う。


「魔界ではよく飲んでたからねっ!」


 それに続きレイも飲み干す。

 二人とも潰れる気配は全くなく空になったジョッキでテーブルが埋め尽くされそうになっていた。

 エンは横に座っているフィーを起こそうと肩を掴み揺さぶる。

 するとフィーはあくびして目を擦りながら仕方なく上体を起き上がらせる。


「フィー起きろ、酒を注げ」


「ふぁ……いやよ、これ以上起きてたらもっと飲まされるじゃない。明日仕事なのに……」


「いいじゃないか別に」


「エンだけずるい! オレにも注いで!」


「私が注いであげましょうか?」


 突然頭の上から声が降ってきて体がビクつく。

 振り返ると笑顔でフォミが立っていた。

 顔が紅く染まっているので少なからず酔っているのだろう。


「え! フォミちゃんが注いでくれるなんて嬉し――」


「ただし注ぐのは苦汁よ。さあ立って外に出ましょう? 地下の施設でもいいわ」


 妙に色っぽい話し方と表情で腕を取られ、必然的に立ち上がる。

 地下とは何か、リルの説明にはなかった。

 それに外で何をするんだろうか。

 ナニだろうか。

 苦渋と言っていた事は気になったがフォミから誘われた事への嬉しさが勝り、気にとめなかった。


「えっとフォミちゃん? お誘いは嬉しいけど外でっていうのはちょっとハードル高いんじゃない? オレこの辺の土地勘ないし」


「――ん、ミルいつから寝てた? エンと飲み比べしててそれで……フォミ?」


 ミルが目を覚まし、フォミを呼び止めた。

 すると足をぴたりと止め、ミルの方を見る。

 笑顔だが目が座っている。


「もしかしてお酒飲んだ?」


「嗜む程度にね」


 そして再び歩き出す。

 ミルとレイを品定めするように交互に見ていたような気がしたのはひとまず気にしないでおこう。


「レイ頑張ってね」


「え、どういう事? フォミちゃんって実は夜は積極的って事? もしかして干からびる?」


「酒飲んでたらまずいのか?」


 レイの戯言は気に留めずエンが苦笑いのミルに問いかける。


「えっと、簡単に言うと戦いたがりになるんだよ。普段ケイルで弱らせて拷問することが多いから、酔ったら肉弾戦でストレス解消したくなるみたい。地下に行くんでしょ? あそこは絶対壊れないようになってるからそこは安心してね」


 レイが期待していたことと現実は違うということに気づきため息をつく。

 でも戦って火照った体を慰めるなんて場面もあるかもしれない。

 希望は絶対に捨てないと誓う。


「まあミルも何回も付き合ったけど……負けそうになったらケイルでトラウマ抉ってくるから気をつけてね。じゃあミルはそろそろ部屋に戻って寝るから! おやすみ!」


「待って」


 待って待って待って。

 聞き捨てならない事があった。

 肉弾戦は別にいい、そういう人はいたから。

 でもフォミのケイルは現時点でのレイの一番の天敵。

 どうやらミルにとってもそれは同じなようでそそくさと先に扉に向かって歩き出す。

 巻き込まれる前に寝てしまおう作戦だ。

 酔いが覚め、冷や汗をかく。


「フィーお前も眠いだろ? ていうかもう寝てるだろ? ミル、フィーの部屋教えてくれ。連れて行く」


 ミルのただならぬ雰囲気を感じてか、まだまだ飲み足りない様子だったエンも立ち上がり、フィーを捲し立てる。

 そして「いいよ」と扉の外からミルの声がする。

――いつのまに外に。


「という事だ。じゃあ」


 いつの間にかまた寝てしまい、一向に起きないフィーを背中におぶさる。


「待って! ねえ待ってってば!」


 レイの助けを求める声は虚しく店内に響き渡るがそれに応えるものはなく、引きずるようにして外に連れ出される。


「さあ行きましょう」


 色っぽい声色はもはや快楽主義の狂った処刑人の声にしか聞こえない。


「やだやだ! 一日目から殉職したくない!」






 数時間後、完全防音の地下室でレイの断末魔が響いたのは言うまでもない。

 その様子を想像できたのは一人食事処に残って晩酌を始めようとしていたリルだけだった。


「フォミ君の方が楽しそうじゃないか」


 呆れたような声で呟く。

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