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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.19 その天然すら懐かしい

 気づけばもう日は落ちていた。

 出発したのは午前中だというのになぜこんなに時間がかかるのか。

 なぜこんなことになってしまったのかは本人が1番よくわかっていた。

 車を飛ばしすぎて衝突事故を起こした――詰まるところ急ぎすぎた。

 昼間の出来事を思い出し、走りながらため息をつく。

 衝突した相手も悪かった。

 巷で有名なチンピラグループの頭とその部下達だった。

 そして予想外だったの私人逮捕の処理に時間がかかると言う事。

 適当にノして放っておけばよかった、と幾度も後悔するが後の祭り。

 これで間に合わなかったらあのチンピラ共ぶっ殺してやる。

 そう心に決め全速力で走っていく。

 そして目当ての建物にたどり着く。

 息を整える時間も惜しいのでその勢いのまま扉を勢いよく開ける。


 幾ら猫型で夜目が効くといってもずっと暗い道を走っていた目にとっては店内の明かりが眩しい。

 一瞬目が眩むがすぐに店内の人数を把握する。

――5人。

 その内の1人が口を開く。

 バンダナをしているが尻尾から見て犬型だろう。


「どちら様? もう閉店時間なのでまた別の日にご利用をお願いします」


 丁寧な言葉使いで帰る事を勧められたが、もちろん目的を果たすまでは引くわけにはいかない。

――今の犬型、こちら側の人間か?

 眼鏡越しにこちらを見つめる視線はその話ぶりからは想像もつかないような鋭く冷めた目で一瞬気を取られるが、視線を少しずらせば見慣れない漆黒の翼と尻尾を持った男。

 その姿を捉えて強く舌打ちをする。


「遅かったか」


 足に思い切り力を入れて踏み切り、その漆黒の獣人目掛けて飛びつく。

 呆然と立っているその背を蹴り飛ばし、地面に倒す。

 間抜けな声を出しながら倒れる様子を見たところ大した奴ではないだろう。

 地面に突っ伏した拍子に衝撃を抑える為に条件反射で顔の横にきている手を力強く両足で踏みつけ、ちょうど翼が生えている場所、肩甲骨あたりにも体重をかけて座る。

 これで抵抗はできない筈だ。

 その手慣れた動作にその場にいた全員が目を丸くする。


「ちょ、ちょっと何?!」


 固有武器の鉤爪を出し、自分の下にいる男の頸に突きつける。

 その拍子にフードが取れ、首から上が露わになる。

 獣耳と尻尾は黒色にも関わらずクリーム色の髪、トートでも珍しいツートーン、右耳は途中で千切れている

 そして殺意を放つ鋭い三白眼。


「黙れ、お前がここを狙ってたトートだろ。抵抗するな調べはついてる。色々あって遅くなったがフィーに手ぇ出したら殺すからな。わかった……か……」


 この場にいる連中の様子を見ようと思い、顔は動かさず目だけで見回した。

 その時1人の人物に目が止まり、改めて顔ごとその人の方向を向く。


「……ふぃ、フィー? いつからそこに?」


 視線の先の人物は少し首を傾げたが、すぐにハッとした様な顔をし、口を開く。


「……もしかしてエン? 格好が違うからすぐにわからなかったわ。久しぶり、私は最初からここにいたわよ。それよりどうしたの?」


 格好よりこの髪色の方が特徴的だろうに。

 少し抜けてる所は昔から変わっていない。

 微笑ましく思っていたが、ハッとして顔を横に振る。

 今はそれどころではない、フィーに会うつもりはなかった。

 やっぱり昼間のチンピラ殺しとくか、と薄っぺらい殺意を放つ。


「ここが狙われてるって聞いて……」


「それならレイ――あ、今エンが踏んでる人なんだけど。レイの事は昼過ぎに解決したわ」


「そうか……いや、ちょっと獣人以外を狙うって聞いたからな。もしかして獣耳隠してるフィーが狙われてるんじゃないかって飛び出してきただけなんだ。間に合わなかったみたいだけど」


「悪魔型は私みたいに欠損してる獣人も対象外らしいの。だから大丈夫よ」


 きょとんとした愛らしい顔を再び傾げる。

 悪魔型というのはよくわからないが済んだ事をぐちぐち言ってもしょうがない。

 そんな事よりよかった、無事だった。

 安堵の息を漏らし胸を撫で下ろす。


「大変なお仕事なのに飛び出してきて大丈夫なの? 変装してるみたいだけどすぐにバレるんじゃない?」


「それは今朝辞めてきた。それよりも格好以外にも何処か変わってないか?! 結構頑張って更生したつもりなんだけど?!」


「そうね……言われてみればちょっと違うかも」


「ちょっとだけ?!」


 さっきから尻の下から声がする。

 下を見ると金髪の男の横顔。

 拘束してたのを忘れていた。

 固有武器を消し、悪魔型の上から謝りもせずに立ち上がる。

 レイがここを襲ったのはフィーの口ぶりから事実のようなので下手に出る必要は一切ない。


「なにこいつ……」


 レイも立ち上がり、不満そうな顔をしながら踏まれていた両手首を撫でた。

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