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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.17 足が痺れた

 正座をしているのは敵意がない事を示すため。

 いつでも武器を出現させることのできるトートにとって敵意が無い事を証明することは難しい。

 どうすればわかってもらえるのか……頭を捻って捻って考えついたのが正座をすることだった。


「という訳で、行くところ無いんだけど、ここに入れてくれないかなーって」


 目の前にはミルとフィーしかいないがそんなに大きくない店内、少し大きな声で話せばドア付近にいるフォミとリルにも声は届く。

 レイが桃源郷を再び訪れた時、帰ってきたリルにフォミが事の顛末を説明している所だったためスムーズに店内に入れてもらえた。


「魔界から追い出されたって……いつまで?」


「わかんない!」


 ウインクで返すがミルは苦笑いしてフィーと顔を見合わせている。

 ウインクした側からしてみればもう少し反応して欲しかった。


「他に行くところないの?」


「それが全く無いんだよねー。現世(うつしよ)での悪魔型の認知度の低さって半端ないでしょ? どこ行っても頭のおかしいコスプレ野郎呼ばわりだよ。それにここ以外でどこかに入れてもらえたとしても多分すぐクビになると思うんだよね、魔界でも何でか分かんないけどすぐクビになるから」


「なるほどね」


「傷つくー」


 フィーの納得したような顔におちゃらけて返事する。

 その可愛いお口、結構辛辣である。


「――待って。認知度低いって、悪魔型とかの事知ったら殺されるんでしょ? 戦った時言ってなかったっけ?」


「あ、それは嘘!」


「多分、そういう所だと思うわよ……」


「嘘! やだー」


 今度は2人から同時に憐れみの目を向けられているので、泣くふりをしてみたり。

――先程から大袈裟過ぎるほどに無害アピールをしているのだが態度は全く変わらない。

 このままだと露頭に迷うことになってしまう。

 ひっそりと冷や汗をかく。

 ドアで何やらヒソヒソ話をしている2人の会話も気になる。

 最終判断はフォミだろうから耳を大きくして聞こうとしているのだが聞こえず、自分の心臓の音だけが聞こえる。

 右も左も分からない、知人もいない、そんな現世(うつしよ)で露頭に迷うなんてまっぴらごめんだ。

 ドアの方を横目で見ていると2人の会話は終わったようでフォミがこちらに向かって歩いてくる。


「レイくん」


「何? フォミちゃん入れてくれるの?」


 焦っているのを悟られないように軽く返事をしてみる。


「ええ、桃源郷は基本的に『去る者は追わず来る者は拒まず』なの。でも面接は受けて貰うわ。緊張しなくても簡単な事だから大丈夫よ。合格不合格関係無く就職できるしね」


「わあ! よくわかんないけどありがとう!」


 合格とか関係ないんじゃ面接の意味あるの? と思ったが敢えて口には出さず従う姿勢でフォミの後をついていく。


「じゃあいってらっしゃい」


 先程初めて会ったリルに手を振られる。

 リルに気を取られていると、フォミがレイを手を引きドアに向かおうとする。

 手を引っ張られながら進むのも格好がつかないので、フォミの横につく。

 フォミに手を握ってもらえるなんてもしかしてラッキーなのでは?


「行くわよ」


「ん? わかった!」


 少し不敵な笑みを浮かべているがそんな顔も可愛い。

 見惚れながら歩いていると背後からフィーとミルの声が聞こえる。


「レイって馬鹿なの? それとも何も考えてないの?」


「んー……」


 天然ちゃんだなぁ。

 オレだっていろいろ考えてるもん!

 バカなのは認めるけど。

 なんて考えているとフォミが歩みを止め、手を離す。

 まだ食事処の中だ。


「終わったわ」


「え?」


「合格なんだね。おめでとう、今日から君も桃源郷の従業員だよレイ君」

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