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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.16 騒がしい仲間

 先に降りたキルを追いかけるように少し急足で階段を降りる。

 階段を降りて食事処のドアを見ると、キルがちょうど開けた所だったようで追いついた。

 ドアを開けたキルはすぐに入らずに動きを止め、驚きの声を漏らす。


「どうしたの?」


 気を取り直してキルに声をかける。

 キルの視線の先に目を移したソルもキルと同様の反応をし、体を硬直させる。


「来ちゃった!」


 視界に飛び込んできたのは、黒い尻尾と翼、そして天使の輪っか。

 昼間の忌まわしきナンパ野郎――レイが食事処内の椅子に座っていた。

 想像もしていなかった事態に戸惑ってしまったが、すぐにキルの前に出る。


「帰って、今すぐに」


「やーだ! てかもう――」


「セン呼ぶよ」


「ここに就職したから」


 言葉の割り込み合いが続くと思われたが、レイの一言でまたしても動きが止まる。

 それはキルも同じだったようで目を丸くしている。


「今セン兄呼んだら今度は忌力枯渇症で倒れちゃうよー……あれ何か元気そうだしそうでもない? まあいいや。これからよろしくねー」


 手をヒラヒラさせてにこやかに笑う。

 まるで昼間この場所を襲撃した事なんて無かったことかのように振る舞う態度は別にどうでもいいが、キルにちょっかいかけたのは許せない。

 こちらの様子を見てレイは立ち上がり近寄ってくる。

 少し身構えるが、出してきた手には何も持っておらず、これは……握手を求めているのだろうか?


「改めて、悪魔型のレイだよ。特にキルちゃんとは仲良くしたいな、いろんな意味で」


「ふざけてるの? 嘘ついてないで早く出て行ってくれる?」


「まあそう言うなよソル。また襲撃しにきたなら皆も黙ってないはずだろ? さっきミルも呼びにきたしな。えっと、レイ、今日のことは水に流そう。心配しなくても仲間なら仲良くするのは当然だ」


 キルが片手を差し出すと、レイの方から両手で握手をする。


「ほんとに?! じゃあ今からでも仲良くしよ――」


「ハク、あいつに噛み付いて」


「やめてやめて! 痛いじゃん!」


 レイの手に噛み付いて離さないハク。

 血は出てない、ハクなりの考慮で本気噛みではないのだろう。

 しかし、ソルの次にキルに懐いているハクにとってもレイの事は気に入らないようでレイが腕を振り回しても中々離さない。

 そんなハクの脇腹に誰かが手を入れる。


「ハクくん、そんな事したら駄目よ」


 カウンターからフォミが出てきてハクを止めたようだ。

 フォミに抱き抱えられたハクはしょうがなく口を開き、大人しく抱かれている。


「レイくんはもう桃源郷の従業員なんだから意地悪したら駄目よ。ソルくんも、もう面接もしたし明日から一緒に働くんだから仲良くしてね」


「絶対嫌だから。キルにも近寄らないで……待ってフォミ、面接って合格したの?」


 噛まれたところを触っているレイに睨みをきかせていたソルの言葉は一瞬止まり、フォミの方を見る。


「ええ、合格したわ。レイくんも私達と同じよ。十分仲間になれるわ。わかったわね?」


 否定を許さないフォミのその毅然とした態度を見てそれでも否定できる人はこの店にいるのだろうか。

 ソルが浅く頷く。


「……キルにちょっかい出さないなら」


「それは無理かな〜」


「ッ! 本当にこの悪魔は……ッ」


 ハクがフォミの腕から抜け出しソルの肩に飛び移り「シャー」と言っている。

 しかしもう噛まないし、ソルも口では怒ってても本気で攻撃したりしない。

 本当の意味でレイの就職が決まった。

 いつの間にかキルはそんな男達から少し視線を外し、食事処の席に座っている見覚えのない男に目をやっている。

 ソルも釣られてキルの視線の先を見ればその男は猫型でフィーの隣に座っている。


「フォミ、レイの事はわかったがあいつは……誰だ? 客って訳では無いよな?」


「その事も2人に伝えないといけなかったの。あの人は――」




――思い返すこと数時間前。

 レイは食事処の床に正座していた。

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