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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.14 まるで夢のような

 きょとんとした愛らしい顔にはてなを浮かべている。

 これで平常心でいられる男はいるのだろうか。

 これが膝の上じゃなかったら平常心を装って微笑み返すくらいは出来ただろうに。


「いや、何で急に? 酔ってるの?」


 目を瞑り、片手で言葉通り頭を抱える。

 キルと出会って十何年?

 そういえばセンが言ってた13年だ。

 13年間こんな事一回もなかった。

 何これ、夢、夢なのかな。

 どこから? ずっと?

 まだ僕は起きてないのかもしれない。


 夢ではないのはソル自身もわかっているが、どうにも目の前に広がる光景が眩しすぎて。


「酔ってねえよ! 何だその反応は……結局俺が言いたいのはな、たとえ何があろうと、ずっと連れ添ってくれてる親友にそんな事思うわけない、って事だ。誰が何と言おうとな。わかったか?」


 きょとんとしていた顔が今度は真面目な顔になりガッツポーズをする。

 すごく嬉しい事を言ってくれているのはわかってるが状態が状態だ。

 ころころ変わる表情が可愛くて……違うそうじゃない。

 今はそうじゃない、落ち着け。

 頭を抱えていた手を顔に持っていき、今度は両手で顔を覆う。


「待って、待って。頭の整理をさせて」


「俺たち親友じゃないのか……?」


「いや親友だよ。けど待って違うんだって」


「じゃあなんだよ。まだ何かあるのか? ちゃんと聞くから全部話してくれ」


 一瞬悲しそうにしたと思ったらまた眉間に皺を寄せ真剣そうにしているキル。

 それが可愛んだって、無理だってわかってほしい。

 それに自分が今どこにいるのかわかってほしい。


 そんなソルの望みは叶う事なくキルは話を聞こうと前のめりになり、ソルの足に手をつく。

 もうこれ以上はやめてほしい。

 こんな状態で何の話するっていうのだろうか。

 そしてこの子は何をするつもりなのだろうか。

 顔を覆っている指の間からキルを見る。

 キルは隠しているつもりでもソルから見れば愛しい女の子。

 濃い紫色の髪が揺れ、掛け布団越しにも伝わってくる体温。

――オレンジ色の瞳も少し潤んで……これは幻覚。

 どんどん思考が囚われていくのを感じる。

 これ以上おかしな方向に考えが向かないように早く会話を終わらせようとする。


「いやないよ。何でもない、何でもないよ」


「なんだよそれ」


「いいでしょ。本当に何でもないから。それより何で急に? 降りなよ」


「そうだった。これには訳があってな。この前ミルと一緒にテレビを見てたんだが、その時抱きしめられる事によってストレスが緩和されるって言ってたんだよ。その時ミルにしたら誰にでもしない方がいいって言われたがお前ならいいだろ?」


 心の中でミルに礼を言う。

 ミルのおかげでキルに変な噂がつくのを防げた。

 自信満々に語るキルの顔を見ればわかる。

 誰かが止めなければ無差別テロを起こしていただろう。


「だからな、辛い話をしてくれたソルはストレスが溜まってると思って……実行しようとしてたんだが……その、これ思ったより恥ずかしいな」


 段々小声になっていき、視線も逸らされていく。

 差し詰め、思いつきでベッドに上がったはいいもののやめとけばよかったと思い直したがもう後には引けなくなってるんだろう。

 そうなってしまったら解決策は一つ。

 目的がわかったなら達成してもらえばいい、つまりソルが黙って叶えさせてあげればいい。

 このままの状態が続く方が何かとマズいので、最後の方は聞こえなかったフリをして、話を進める。

 キルが言い出した事だから、大丈夫心配ない。


「テレビでそんな事言ってたんだ。確かにそういう説もあるのは聞いたことあるよ。そういう事ならお願い」


 ソルは軽く手を広げるが自分から行く気はなく、微動だにしない。

 今度はキルが戸惑う番だ。

 後ろのめりになり、ベッドについていた手を引っ込める。


「う、急に乗り気じゃねぇか。乗り気になられると余計に……やっぱりやめるか!」


「なんで、キルよく言ってるじゃない。男に二言はないって」


「……都合がいい時だけ男扱いしやがって」


 ベッドから降りようとするキルを静止する。

 手で止めた訳ではないので下りようと思えばいつでも下りられるのだが、相手はあのキル。

 待ってと言えば待ってくれる。


「ねぇキルどうする――」


 強制させたい訳ではないが、何より照れているキルは珍しくて少し意地悪をしてしまいたくなってしまった。

 それにここまで言ってしまったらこちらももう引けない。

 そうこうしている内に部屋のドアが開く音が響き、2人の動きが止まる。


「キルー、ソル起きた? ちょっと連絡あるからひとまず下りてきてって……ごめん」


 ドアを開けたのは連絡事項を伝えにきたであろうミルだった。

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